退職のサインとは

「えっ…?本当に辞めるの?」

事前の兆候をなにも感じなかったのにビックリ退職されてしまったり、辞める人が継続的に発生して定着率が悪い。管理者側からすれば、「自分はちゃんとマネジメントしてきたつもりなんだけど…」と、辞める人が続けば不安にもなります。なぜ退職が続くのか、どうすれば防げるのか、原因や防止策をまとめました。

退職を考えている従業員には、いくつか特徴があり、これらの「退職のサイン」を事前にキャッチし、個別に対策することが必要です。

【退職サインの例】

  • 会話
    ・よく会話してたのに話さなくなる
    ・直接不満を言われることが多くなった
    ・同僚伝えで不満を聞くようになった
    ・発言の端切れが悪くなってきた
    ・話かけると塩対応が多くなってきた
    ・相談されなくなってきた
    ・マイナス発言が多くなってきた
  • 身体的
    ・うかない顔をしていることが多くなってきた
    ・身なりがカジュアルからフォーマルに変わってきた
    ・おしゃれさが落ち着いてきた(服装、髪型など)
  • 仕事への姿勢・取り組み
    ・長期的な計画に対して積極的に関わってこなくなった
    ・仕事量をセーブするようになってきた
    ・遅刻することが多くなってきた
  • 帰宅・休暇
    ・突然有給、休みの申請を出すようになる
    ・そそくさと早く帰るようになる
    ・帰宅後の予定を言わなくなる
    ・飲み会に参加しなくなる

一人ひとりの心境の変化や悩みをキャッチし 不安を解消し、安心して働ける 職場を目指しませんか。

離職につながる3つの大きな理由

離職は人材流失のみならず、企業にとって時間的コストや信頼の浪費となってしまいます。退職者にアンケートを行うと、退職・離職原因のほとんどが「人間関係」「給与」「労働環境」のいずれかになるケースが圧倒的に多いです。

これらが社員の期待よりも良くなかったとき、あるいは急激に悪化した場合に不満を感じて離職につながります。

①人間関係

特に多い離職原因として、上司や経営者との上下関係に対する不満が挙げられます。近年は、いわゆる「パワハラ」が社会問題化していますが、上司による部下への過剰な叱責や度を越した要求などにより、社員がプレッシャーを感じて離職してしまうケースが多くあります。

先輩や同僚間の関係性やコミュニケーション不足が離職につながるケースも多く、職場内で孤立して精神を病んでしまう社員も少なくありません。

②給与

毎月の給与への不満だけでなく、年間のボーナス回数や金額および評価基準や昇給に関する疑問や不快感も離職につながります。

ワーキングプアと呼ばれるような、必死に働いているにもかかわらず人並みの給与をもらえず、毎日残業をこなさなければ生活していけないという人が少なくないのが現状です。昇給もわずか数千円程度といった企業も多く、働きを正しく評価してもらえていないという不満から離職につながるケースが多くあります。

③労働条件

労働条件への不満も離職につながる要因の多くを占めています。

いわゆるブラック企業が社会問題化している日本ですが、労働基準法に大きく違反するような残業時間や、福利厚生の拙さが健全に働くことの障害になり、結果として社員が仕事に集中できず、離職につながるケースが多くあります。

離職率改善で意識すべき2つの視点

職務満足に関する理論である「ハーズバーグの2要因理論」の視点を用いて離職率が上がる理由を考えていきます。

ハーズバーグの二要因理論(動機付け・衛生理論)とは、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関する理論。人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではなくて、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるとする考え方。 

ハーズバーグは職務満足と職務不満足が同じ1つの要因によって影響されるのではなく、満足に関わる要因である「 動機づけ要因 」、不満足に関わる要因である「 衛生要因 」に分けて考えています。

この理論で重要なことは、衛生要因を高めて不満足を解消しないと動機づけ要因を高めても満足にはならないということです。逆も然りで、動機づけ要因が不足していても不満足にはなりません。

動機付け要因(働きがい)

俗に「やりがい」「働きがい」と言われる領域です。例えば、理念やミッションについてなんのためにやっているのか、仕事そのものに対する興味や、成長意欲の情勢などがこれに当たります。仕事の満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされると満足感を覚えるが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではない。

動機付け要因は、マズローの欲求段階説でいうと「自己実現欲求」「自尊欲求」さらに「社会的欲求」の一部に該当する欲求を満たすものとなっている。

衛生要因(働きやすさ)

こちらは「働きやすさ」についての考え方です。ここが満たされていないと職務不満足が引き起こされてしまいます。健康的に働けるか、あるいは安心して働くことができるかという、「心理的安全」に関わることがらなどが挙げられます。企業でいう福利厚生・社内制度、オフィス環境などもここに当たります。仕事の不満足に関わるのは「会社の政策と管理方式」「監督」「給与」「対人関係」「作業条件」など。これらが不足すると職務不満足を引き起こす。満たしたからといっても満足感につながるわけではない。単に不満足を予防する意味しか持たないという。

衛生要因は、マズローの欲求段階説でいうと、「生理的欲求」「安全・安定欲求」と「社会的欲求」の一部の欲求を満たすものとなっている。

 

 

*マズローの欲求段階説とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローによって提唱された、人間のモチベーション理論の一つ。人間の持つ内面的欲求は5段階の階層に分かれており、低次の欲求が満たされると順々により高次の欲求を求めるようになる、という仮説を指す。