喀痰吸引は、介護施設や障害者支援施設などで実施できる医療的ケアで、特定の研修を修了して申請登録した介護職員であれば実施ができます。
では、喀痰吸引を実施できる介護職員がいない施設の場合では、施設経営が悪化するのでしょうか。こちらの記事では、喀痰吸引できる介護職員がいない施設のデメリットについてご紹介しています。
喀痰吸引ができる介護職員がいない!施設の経営は?
喀痰吸引等研修というのは、施設内の利用者に対してたんを吸引したり、経管で利用者に栄養を摂取させたりする医療的ケアを実施するための研修です。
そして研修終了後には、「認定特定行為業務従事者」の認定を受け、登録申請をすることで喀痰吸引や経管栄養を実施できるようになります。では、喀痰吸引できる介護職員がいない施設は、経営にどのような影響が及ぶのでしょうか。
利用者の幅が狭くなる
介護施設や障害者支援施設など、施設にはあらゆる種類があります。
しかし、施設によって実施できるケアは限られ、その中には医療的ケアを行えない、または医療的ケアの内容が充実していないところもあるのです。たとえば、医療的ケアがあまり必要ではないという利用者の場合では、医療的ケアを行えない施設でも利用が可能でしょう。
しかし、喀痰吸引のように、専門的な知識と技術を持つ人の手助けが必要な利用者の場合では、認定特定行為業務従事者の認定を受けた介護職員がいない施設の利用は不可となるでしょう。
しかし、高齢や障害によって喀痰吸引や経管栄養が必要な利用者は年々増えているという現状があるのです。
つまり、喀痰吸引できる介護職員がいない施設の場合では利用者が限定され、それによって経営に悪影響が及ぶリスクが生まれやすいということなのです。
施設経営に影響を与える
喀痰吸引ができる介護職員がいるかいないかで施設経営に影響を与
えてしまう恐れがあります。それでは、おもだった施設の種類やサービス内容について見ていきましょう。
特別養護老人ホーム
要介護1~5までの認定を受けた65歳以上の高齢者を対象とする施設で、入浴、食事、排せつといった身の回りのサポートのほか、医療行為も行えます。
特に介護レベルが高い利用者の場合では、喀痰吸引や経管栄養が必要になることがあるため、喀痰吸引ができる介護職員がいない場合では、経営が難しくなる可能性があります。
介護老人保健施設
要介護認定を受けた65歳以上の高齢者を対象とする施設で、医療行為や医療的ケアを行う機会が多く、医療の有資格者が常勤している必要があります。
ケアハウス
収入がない60歳以上の生活困窮者や、60歳以上の自立した生活が難しい人、高齢で独立した生活を送れない人を対象とした施設です。
この施設では、医療的ケアを充実させて病気の利用者への対応も可能としているところがありますが、その一方で医療的ケアを充実させていない施設もあります。
とはいえ、近年では高齢で施設を利用する人が増えているという背景があるため、ほとんどのケアハウスでは医療的ケアを行える介護職員を配置しているところが増えているようです。
障害者支援施設
障害者に対する身体的ケアや心的ケア、生活支援などを行う施設で、医療的ケアもサービス内容に含まれます。
つまり、喀痰吸引や経管栄養を行える介護職員を配置している施設が多いということです。
グループホーム
認知症の人を対象とした施設で、医療的ケアはほとんど行わない施設が多いようです。
つまり、喀痰吸引や経管栄養を実施できる職員がいなくても、経営を行えるということになります。
なお、医療行為や医療的ケアが必要になったら、これらに対応した施設に移らなければならなくなることが多いようです。
介護に対応した施設の多くは医療行為や医療的ケアに対応しているため、今後施設の経営をお考えの方はもちろんのこと、すでに施設を経営している方も、喀痰吸引や経管栄養を行える介護職員の雇用が必須となるでしょう。
つまり、喀痰吸引や経管栄養を実施できない介護職員ばかりの施設をそのまま放置していると、他の施設に利用者が流れて、経営が悪化するリスクが高まるということですね。
喀痰吸引等研修を活用して施設の利益率アップを目指しましょう
喀痰吸引と経管栄養を実施できる介護職員が増えれば、その分幅広い利用者を取り込むことができるため、安定した利益を得られる可能性が広がります。
特に高齢化社会が進む現在では、介護職員にも高度なスキルが求められるシーンが増えています。
そして、その時代の流れに乗れず、昔ながらの経営方針で経営を続けてしまうと、やがて利益が大幅に減少し、倒産も視野に入れなければならなくなるでしょう。
喀痰吸引等研修には費用と時間がかかりますが、今後の利益率アップを狙いたいなら、なるべく早めに介護職員に対して喀痰吸引等研修を受けさせる方向で検討する必要があるでしょう。
また、これから施設の経営に乗り出す予定がある場合でも、医療行為や医療的ケアを行える職員がいるのといないのとでは、取り込める利用者の数に圧倒的な差がつくことを頭に入れておかなくてはなりません。
介護の現場は、これからますます需要が高まると予想できますので、充実したサービスを提供するためにも、雇用する介護職員には喀痰吸引等研修を受けさせる方向で検討する必要があるでしょう。
まとめ
今回は、喀痰吸引できる介護職員がいない施設における、経営上のデメリットについてご紹介してきました。
「うちには介護福祉士」がいると気楽に構えていると、喀痰吸引や経管栄養が必要になったシーンで、他の施設から一歩遅れをとることになります。
また、登録は必要ですが、一般的な介護士でも喀痰吸引研修を受ければ吸引できます。
※介護福祉士は平成28年度以降の国家試験資格取得者は座学(
基本研修)が免除になります。同じく実務者研修を受講している人も基本研修が免除になります。
現在施設を経営している方はもちろんのこと、これから施設を開業するという方も、雇用する職員には喀痰吸引等研修を受講させて、幅広い利用者にアプローチできる施設を目指すと良いでしょう。
なお、喀痰吸引できる介護職員を雇用する際には、施設も「喀痰吸引等事業者」として登録申請する必要がありますので、この点には十分に注意してくださいね。