高齢化社会で必要になる喀痰吸引等研修とは
近年の日本は高度な高齢化社会になっています。
高齢になると全身の機能が衰えてきます。筋力や脳の機能、反射運動などが衰えさまざまな問題が生じてきます。そのような高齢者が多くなってくると、医療行為を受ける必要のある人も増加してきます。そのような状況で喀痰吸引等研修という研修の重要性が増してきています。
喀痰吸引等研修は介護職員が本来は行うことのできない医行為である、喀痰吸引や経管栄養の管理を行うための研修です。この研修を受けることにより介護職員が行うことのできる行為が広がるのです。今回は近年の高齢化した日本社会の中で喀痰吸引等研修がなぜ重要になってきているのかについて解説していきます。
日本の高齢化の現状
日本の総人口は2019年10月1日現在1億2617万人となっています。その中で65歳以上の人口は3589万人になり、高齢化率は28.4%となっています。さらに75歳以上の人口は14.7%となっています。日本は世界で有数の高齢化社会なのです。
1950年には人口の5%以下、1970年には7%台に、1994年には14%と右肩上がりです。その後も高齢化率は上昇を続け1994年から現在の間では高齢化率は2倍になっています。
この傾向は今後も続いていくと見られ、増え続ける高齢者をどのように支えていくかというのは我が国における大きな社会的問題となっているのです。
さらに未来の予想に目を向けると2036年には国民の3人に1人は高齢者ということになります。
高齢化社会で増える肺の病気
前項目で日本の高齢化は世界的にも進んでおり今後もその流れは進んでいるということを説明しました。
そのような状況にあって高齢者で問題となる疾患の一つに誤嚥性肺炎という疾患があります。これは嚥下機能の低下や喀痰の排出能力の低下により引き起こされる疾患で、口腔ケアやこまめな喀痰吸引が欠かせません。
また高齢になり喀痰を自分で出す力が弱くなると痰が気管に溜まり気道を塞いで窒息したり、肺に垂れ込んで肺炎の原因になります。全身状態が落ち込んでくる超高齢者にとって喀痰吸引は命を繋ぐのに必須の処置となっています。
高齢化社会で増える経管栄養
喀痰吸引等研修を受講すると喀痰吸引だけでなく、胃ろうや経鼻チューブなどの経管栄養の管理もできるようになります。
先ほど日本は高齢化社会となり、誤嚥性肺炎などの疾患が増えると解説しましたが、それに伴い口から食事を取ることが誤嚥リスクのために難しくなる高齢者が増えることが予想されます。
そうなると経管栄養を受ける人の数も増えていきます。また脳梗塞や脳出血を起こす人の数も多くなり、それにより嚥下機能が落ちてしまい経管栄養を受ける人も多くなります。つまり高齢化が進むと経管栄養の管理ができる人材が不足してくることになり、喀痰吸引等研修の重要性は増していく一方なのです。
喀痰吸引等研修を受けるメリット
ここまで高齢化社会で喀痰吸引等研修の役割が大きくなっていることを説明してきました。ではこの研修を受けることで、受けた個人には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。見ていきましょう。
まずはなんといっても業務中にできる行為が増えるということです。
介護職をしていて介護者にしてあげられることが増えるということは、介護者のニーズをより満たすことができるということです。痰が多く出てしんどそうにしている人を目の前にして何もできないのは辛いものです。また緊急事態で喀痰吸引ができると介護者を救命することにつながったり誤嚥性肺炎などの疾患を予防したり重症化を防ぐことにつながります。
できる行為が増えることはやりがいにつながるだけでなく、危険な状態から自分や、介護者を守ることにつながります。
就職の幅が広がり待遇が改善することも大きなメリットです。
高齢化社会においてたくさんの高齢者がいる施設では喀痰吸引や胃ろうの管理が必須のスキルとして求められることも少なくありません。また喀痰吸引等研修を受けた介護職員の方が多くの職場から求められることから待遇の改善も見込むことができます。
喀痰吸引や慰労の管理は研修を受ければすぐに行うことができるようになる処置ですので、研修を受けたらすぐに実践できるのも大きな強みと言えるでしょう。
まとめ
今回は高齢化社会における喀痰吸引等研修の重要性を解説していきました。
高齢者が多くなるとその分さまざまな病気のリスクを抱えた人が増えるということなので、医療行為のスキルを持つことの価値はどんどん高まっていきます。喀痰吸引等研修は研修を受け終わったらすぐに実践できる医療のスキルを身につけられる研修です。
今後、介護職員の働き先の多くで喀痰吸引等研修を受けることが求められることが予想されます。研修を受けることで働き先の選択肢が広がり、待遇の改善が期待できます。