来年度の介護報酬改定に向けた協議で改定される可能性のある医療連携体制加算。その要点を解説します
近年我が国では高齢化が顕著に進行しており、グループホームなどの事業所においても医療管理が必要とする利用者が増加しています。
そのような状況を改善するための加算として医療連携体制加算があります。この医療連携体制加算について、厚生労働省が来年度の診療報酬改定の際に高まる医療ニーズに対応していくためにテコ入れを検討しているのです。
今回は医療連携体制加算について解説し、今後どのように変わっていくかについてみていきたいと思います。
医療連携体制加算とは?
医療連携体制加算とはその名の通りグループホームなどの事業所と医療機関が連携をすることで、医療者の在籍していない事業所に暮らす人の医療ニーズに対応できるようにするためにある加算です。
この医療連携体制加算はグループホームなどの医療者の設置が義務付けられていないような事業所において、周囲の病院や診療所、訪問看護ステーションの協力を得ることで、看護師を1名以上確保して、喀痰吸引などの医療行為の実施や、介護職員への指導を行うことで算定できる加算です。
この加算を算定できる事業所というのは、医療職である看護師に訪問してもらい、介護職員だけではできない処置もできるようにすることで、現在利用中の利用者に医療行為をする必要が出たときにも引き続き同じ事業所を利用できるようにする体制が整っている。ということになります。
病気になり病院に入院してその結果、体の機能が低下してしまい、嚥下などが困難になり、喀痰吸引や慰労管理などが必要になると、もともと利用していた事業所では対応ができず、利用者が行き場を失うという状況になることが多々あるのです。
事業所が医療ニーズに応えることができるようになることは今後の我が国にとって非常に重要なのです。
現在の医療連携体制加算の問題点とは
まず、この加算を取るために介護職員を配置する必要がありますが、事業所の職員として看護職員を配置するのが難しいという問題があります。また加算を行うためにがんばって看護職員を確保したとしても、時期によっては利用者の中に医療ニーズのある人がいない時があるという問題もあります。
現状では看護職員が確保されていて、かつ、医療ニーズに応えているというのが算定要件になっていて、看護職員を確保するだけでは加算にならないのです。
実際看護師を確保したにも関わらず、医療ニーズに対応していない、という事業所もあり、これでは負担だけが増えてしまい本末転倒と言えます。
そのため看護体制の要件と利用者の受け入れ実績の要件を分けるなど、評価方法の見直しなどが検討されているのです。
ただし一定の看護体制を取っただけで医療ニーズに対応する動きを見せない施設に加算をつけるのは慎重にするべきであるという話も出ています。
また看護職員の配置や訪問看護ステーションとの連携を促進すべき加算の評価の引き上げが必要であるという主張も行われており、医療連携体制加算を算定できるように準備しておくことで今後より経営にメリットが見込める状況であるとも言えるでしょう。
今後必要な対策とは
今後ますます重要度を増していくと思われる医療連携体制加算ですが
算定するために必要な対策を考えてみましょう。
まずは看護職員の確保と育成です。事業所に看護職員を配置することができれば医療連携体制加算を算定できる可能性がグッと高まります。
ただし看護職員がいれば算定できるかはまだわかりません。医療ニーズに対応していないと見做されると今後テコ入れがあった場合には算定できる加算が少なくなる可能性があるからです。
看護職員だけでなく介護職員が事業所で行われる医療行為について知っておく必要があります。どのようなときに看護職員に連絡をするのか、事業所がどの程度までの医療ニーズに対応できるのかを把握しておく必要があります。
また看護職員の数が十分でないときに医療ニーズに対応仕切れない可能性があります。
介護職員でも医療行為を可能にする、喀痰吸引等研修を受けるなどの対策を行い、医師や看護師の指示のもと医療行為に参加できる介護職員を増やすことも今後重要になっていくと考えられます。
まとめ
今回は医療連携体制加算について解説し、今後のテコ入れについて予想される動向を見ていきました。
医療連携体制加算は算定できると大きな利益になるものの、人材確保のハードルが高い加算です。算定したい場合には看護職員の確保を行うとともに、介護職員が医療行為に参加できるように喀痰吸引等研修などを積極的に利用しましょう。