2024年の介護報酬改定のポイント①「地域包括ケアシステムの深化・推進」に関する改定
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要約:
3年に一度行われる介護報酬改定。2024年はその介護報酬改定が実施される年です。その年の社会情勢や環境の変化に応じてどのような改定が行われるかは毎回異なるため、介護を提供する事業所は社会情勢を知り、介護報酬改定が実施されたらすぐに対策を立てる必要があります。しかし膨大な介護報酬の改定を全てリサーチするのは容易ではありません。そこで介護報酬改定のポイントをいくつかに分けて解説します。今回は「地域包括ケアシステムの深化・推進」について解説を行います。
︎地域包括ケアシステムとは
「地域包括ケアシステムの深化・推進」について理解するためにはまず地域包括ケアシステムについて知る必要があります。
地域包括ケアシステムとは高齢者が住み慣れた地域に安心して暮らせることを目指して一人一人の状態に応じて切れ目なく提供するシステムのことです。
高齢者が住み慣れた地域で過ごすためには同じ地域の中でそれらのサービスを受けられることが重要です。
例えば自宅で過ごしている人が病気になってしまった時に一番近い病院まで数時間かかるとすると同じ地域で住むことは難しくなってしまいます。また介護施設と自宅が遠く離れていると適切な介護が受けられなくなってしまいます。
地域包括ケアシステムでは、これらの「住まい」「医療」「介護」「介護予防」「生活支援」といった5つのサービスが地域内で提供されるようにすることで同じ地域内で高齢者が過ごすことができるようにすることを目指します。
地域包括ケアシステムをの深化・推進のための改定:特定事業所加算の強化
地域包括ケアシステムを充実させるためにどのような改定が行われるのかについてみていきましょう。
まず、「居宅介護支援における特定事業所加算の見直し」が行われます。
特定事業所加算とは質の高い介護サービスを提供する事業所を評価する加算のことです。
加算するには訪問介護職員への研修の実施する、適切なサービス提供のための会議を行う、健康診断を実施する、緊急時における対応方法を明示する、介護職員に占める介護福祉士の割合を一定以上にする、医療行為を必要とする利用者を一定以上受け入れるといった要件があります。
今回の改訂ではこの特定事業所加算の点数が大きくなります。
︎地域包括ケアシステムをの深化・推進のための改定:介護予防への支援の強化
介護予防支援費の見直しが行われます。2024年4月から従来の地域包括支援センター以外にも市町村からの指定を受ければ、居宅介護支援事業所が介護予防支援を実施できるようになります。
地域包括支援センターの行う介護予防支援に関係する介護予防支援費 (I)は単位が増え、指定居宅介護支援事業者を対象とした介護予防支援費(II)が新設されます。
地域包括ケアシステムをの深化・推進のための改定:医療と介護の連携推進
医療と介護の連携を推進するために専門性の高い看護師が行う訪問看護がより評価されるようになります。
緩和ケアや褥瘡ケア、人工肛門・人工膀胱ケアに関わる専オン研修を受けた看護師や、特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合に専門管理加算が認められます。
さらに療養通所介護において重度者のケアを行うための体制を整えることで重度者ケア体制加算を算定できるようになり、看取りに対応することで看取り連携体制加算を算定できます。利用者さんが地域で暮らし、亡くなる時まで住み慣れた地域で暮らせるようにするという目的があるのです。
地域包括ケアシステムをの深化・推進のための改定:高齢者の安全確保
高齢者の安全を守ることも重視されています。感染や災害への対応力の向上を目的とした改定も行われます。まず高齢者施設などにおいて感染症が発生した際の対応を評価する加算が親切されました。高齢者施設等感染対策向上加算という加算です。
感染症法に規定されている医療機関との間で、進行感染症の発生時などの対応を行う体制の確保や、医療機関・地域の医師会の行う院内感染対策に関する研修や訓練に1年に1回以上参加していることが要件になっています。
認知症の対応力向上も評価されます従来の認知症加算に加えて新たな区分か追加となり、元々あった認知症加算も単位数が増えます。さらに認知症の行動・心理症状の発言防止や出現時の早期対応をする体制を整えている施設んは認知症チームケア推進加算が新たに算定できるようになります。
2024年の介護報酬改定のポイント②「自立支援・重度化防止に向けた対応」に関する改定
介護における自立支援とは
自立支援といってもどのようなことをするのかよくわからないという方もいらっしゃるかもしれません。介護における自立支援とはどのようなものなのかみてみましょう。
介護における自立支援は、介護を受ける人が自分自身の能力に応じて自立した生活ができるように支援することを指します。それぞれの要介護者に残された能力を高めて少しでも自分でできることを増やすことが重要です。
また、まだ要介護状態になっていない高齢者については自立した生活を継続して営むために、要介護状態になることや今ある疾患が重症化することを予防することがより重要です。
この目的を果たすためにどのような改定が行われたのでしょうか。
自立支援・重度化防止に向けた改定:リハビリテーション加算の見直し
要介護となった人の残された能力を少しでも底上げするためにはリハビリテーションが重要になります。また体の機能を温存したり栄養状態を良く保つためには機能訓練、口腔ケア、栄養管理が重要です。
これらを効率的に進めるために、リハビリテーションのサービスにおける加算や介護保険施設における機能訓練等に関連する加算に新たな区分が儲けられます。各事業所は新しく設けられたリハビリテーション加算の算定要件を確認した上で、リハビリテーションに必要な資格者を揃え、リハビリを実施する体制を構築することがより重要となります。
通所リハビリテーションにおいても、基本報酬が見直されます。
今回の改定では基本報酬が通常規模型・大規模型の2段階となります。
現在大規模型に区分されている事業所のなかで以下の要件をすべて満たす事業所は通常規模型と同等に評価されます。
- リハビリテーションマネジメント加算の算定率が、利用者全体の80%を超えている
- 利用者に対するリハビリテーション専門職の配置が10:1以上である
自立支援・重度化防止に向けた改定:口腔管理、栄養管理に関する加算の見直し
管理栄養士や歯科衛生士等の通所サービス利用者に対する介入の充実も改定のポイントとなっています。
従来は居宅管理指導においては算定対象が「通院または通所が困難な者」とされていました。寛解の改訂ではそれが「通院が困難な者」に変更されています。
また訪問系・短期入所系サービスで、利用者の航空鵜状態を確認して、航空管理を適切に行うよう促すことを目的に口腔連携強化加算という加算が新たに設けられます。
これにより口腔状態の悪化による栄養状態の悪化や誤嚥性肺炎などの疾患の発生を防ぐことが目的になっています。
また介護保険施設利用者が他の施設や医療機関に移る時に、情報交換が行われず、これらのケアが途切れてしまわないように対策をすることも重要です。退所時栄養情報連携加算という加算が新設され、退所時の情報連携を行うことの重要度がより増しました。
自立支援・重度化防止に向けた改定:自立支援重症化防止に係る取り組みの推進
自立や重度か防止のための取り組みも当然評価されます。
まずはかかりつけ医連携薬剤調整加算です。利用者の状況についてかかりつけ医に情報提供を行い、適切な処方が行うための連携を行うことが求められています。また類似の薬剤の重複処方や多数の薬剤が処方されるいわゆるポリファーマシー問題の解決のために入所時に処方されていた薬剤を対処時に減らすことでも加算がつくようになります。不適切な処方を減らして適切な医学管理を行うことで自立支援や重度化の防止につながるのです。
自立支援・重度化防止に向けた改定:質の高い介護の実現に向けた取り組み
質の高い介護を目的として化学低介護推進体制下さんが見直されます。
現状の化学的介護推進の取り組みとしては化学的介護情報システムLIFEに対してのデータ提出などを求めており、要件を満たすと科学的介護推進体制加算が算定できます。
この加算の要件が、変更されます。
データの提出頻度が3ヶ月1に1回に見直されたり、入力項目の明確化が予定されています。
介護の質の向上や自立支援・重度化の防止の取り組みを評価する目的で、ADL維持等加算、排泄支援加算、褥瘡マネジメント加算、褥瘡対策指導管理などの加算の算定要件も見直しが行われます。
2024年の介護報酬改定のポイント③「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」に関する改定
良質な介護サービスを効率的に提供するための課題と、それに基づいた改定内容
介護を必要としている人に良質な介護を行き渡らせるための課題として常にあるのが人材不足です。
第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推定した介護職員の必要数は2023年は233万人、2025年は243万人となり増え続けることが予想されます。2025年までは毎年5万人規模の介護職人材の不足が出ると言われています。
この課題を解決するための改定が今回の介護報酬改定で実施されます。
介護職員の処遇改善
介護職につきたいという人を増やすために最も重要なのが、介護職員の処遇改善です。介護現場で働く人に向けて、ベースアップに繋がるように加算が追加されます。
令和6年に2.5%、令和7年に2%のベースアップが目標となっています。
これまで、介護職員に対する処遇改善に関する加算は、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ支援加算と3種別に別れていましたが、これらは1本かされます。
これによりそれぞれの加算の要件を満たす必要があり負担があった状況を改善し、より多くの事業所が介護職員の処遇改善に動くことができるようにする目的があります。
生産性の向上を通じた働きやすい職場環境づくり
生産性の向上に努める事業所に対する評価を行うために新たな加算である、生産性向上推進体制加算が設けられます。
この加算を算定するには、利用者の安全・介護サービスの質の確保・職員の負担軽減について検討する委員会の開催や、見守り機器などのテクノロジーの導入、業務改善の取り組みによる効果を示すデータの提供が求められます。
要するに職場の現状を顧みる話し合いを行った上で職員の負担を減らすテクノロジーの導入を行い、それによって成果を出す必要があるということになります。
制度の安定性・持続可能性の確保に向けた課題とそれに基づいた改定ポイント
介護報酬も無制限に出せるものではないため一部減算の規定が増える部分があったり、報酬単位の見直しがされている部分があります。
訪問看護の同一建物減算の見直し
新しく、「正当な理由なく、事業所において前6ヶ月間に提供した訪問介護サービス提供総数のうち、事業所と同位置敷地内または隣接する敷地内に所在する建物に居住するものに提供されたものの占める割合が90%以上である場合」において4.12%の減算がされるようになりました。
集合住宅の利用者を集中的に囲い込むような事業所が増えることを懸念しての改定となっています。
短期入所生活介護における長期利用の適正化
今までも短期入所介護で31日以上の長期利用を行うと単位数が減産されましたが、今回の改訂で61日以降の利用はさらに減算されることとなりました。
また介護予防短期入所生活介護において、要支援1の場合は要介護1の単位数の75%とんり、要支援2の場合には要介護1の単位数の93%と単位数が低くなります。要介護の利用者を積極的に受け入れることを促進する狙いがあると考えられます。
まとめ
2024年の介護報酬改定では、質の高いサービスがより評価され、医療機関との連携をとり、重症者や認知症のある利用者などの医療ニーズのある利用者を受け入れることができるような施設がより評価されます。そのためには医療行為に対応できる人材の拡充がより重要であると言えます。また、今回は自立支援・重度化防止の試みに関連した改定ポイントを解説しました。今後の高齢化が進んだ社会においては、高齢者が今ある能力をいかに伸ばし、失わないようにするかが重要となります。今回の介護報酬改訂でもそこが大きなポイントとなっています。今回は「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」に関する改定についてみていきました。今回の介護改訂報酬では介護職員が日本中で不足する時代において、限られた人材で増大する介護ニーズに対応する力が求められていることがわかります。また、より介護量が必要な利用者をいかに受け入れるかがより重要となります。人材をいかに雇うかということも重要ですが、自施設をいかに働きやすくするか、いかに人材を自施設で育てるかがこれからますます重要になります。
本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。