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認知症対策にAIはどう活用できる?
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

医療、健康、教育、環境など、多岐にわたる分野での社会貢献を目指し、プレゼンス・メディカルを設立。日本の医療・介護分野において「技術の革新」をキーワードに、数々の新しいケアプロトコルを生み出し、業界に貢献している起業家である。M&Aやベンチャーキャピタルの分野で多数の事業を手掛け、その経験と知識を活かして、日本の介護業界にイノベーションをもたらすプレゼンス・メディカルを設立しました。
同社のCEOとしても活躍し、研修や喀痰吸引に関するコラムを通じて、事実に基づいた医療的ケアの意義や役割を啓蒙している。その知見は、今後の介護業界の発展に大きく貢献することが期待される。
2014年から500施設以上の施設経営者と直接対面を行い、現場における課題解決に向けた対談多数。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会でのセミナーを全国28都道府県で実施。

2024.08.05

認知症対策にAIはどう活用できる?

要約:

認知症のケアにAIを活用する動きがあるのは知っているけれど、具体的にどのように介護の現場に取り入れていけばよいのかよくわからず困っている人はいませんか?

認知症対策にAIを活用するメリット

認知症対策にAIを活用するメリットは以下の通りです。

 

  • 介護に用いると介護者の負荷軽減になる
  • 介護に用いると人間ではできない多方面からの認知症ケアにつながる
  • 介護に用いると患者の尊厳保持につながる
  • 検査に用いると認知症の早期発見につながる

 

人間とAIのそれぞれの良さを生かして適切な分業を行い、認知症患者のケアに取り組むのが重要だと言えるでしょう。

認知症対策のためのAIの種類とは?

認知症対策のためのAIの種類は、目的が「早期発見・診断」「介護」「予防」の3つに分かれるので、それぞれの目的に応じたAIをご紹介します。

 

早期発見・診断

認知症の早期発見・診断に役立つAIを3つご紹介します。

認知症のリスクを予測できるAISupportBrain

株式会社ERISAの「SupportBrain」は、「AIによる認知症将来予測プログラム」というキャッチコピーの通り、将来的に認知症にかかるリスクがあるかどうかを予測できるAIです。

SupportBrainは島根大学医学部、滋賀医科大学、株式会社ERISAが共同開発した脳画像解析技術で、脳全体を対象にAIによる高精度のMRI画像解析を行うことで脳の各部位における将来の変化を予測し、受検者一人一人の認知症リスクを検査します。

認知症にかかるリスクが予測できれば、受検者はライフスタイルの見直しをしてそのリスクを減らす取り組みができたり、医療機関に相談して早期対策し予防の方針を定めたりもできるでしょう。

SupportBrainによる検査の流れは次の通りです。

  1. SupportBrainを導入している医療機関で検査を予約する
  2. 医療機関で頭部のMRIを撮影する
  3. 解説つきの検査レポートを医療機関から受け取る

SupportBrainの公式ホームページにはSupportBrainを導入している医療機関の一覧表が掲載されており、住んでいる地域別に検索をかけて医療機関を選び、電話や専用予約フォームから検査予約をすることができます。

SupportBrainの公式ホームページでは50才以上の人が23年に1回の頻度で検査を受けるのを推奨しているため、介護の現場では利用者の認知症リスクの把握を目的に検査を勧めてみるのもよいでしょう。

参考:株式会社ERISA「SupportBrain」

認知症早期発見に役立つAIONSEI

日本テクトシステムズ株式会社の「ONSEI」は、認知症医療の第一人者で公益法人老年精神医学会元理事長の本間昭医師によって監修された、簡単な質問に音声で回答するだけで認知機能の変化を知ることができるアプリです。

ONSEIの特徴は次の3つです。

  • スマホアプリを開いてから認知機能チェックの結果がわかるまで20秒しかかからない
  • アプリが簡単な質問をするので声で回答すると回答内容と声質をAIが分析して認知機能をチェックする
  • 認知機能の変化を93%の正分類率(機械学習モデルによる予測結果における正解数をデータ数で割った値)で判別できる

ONSEIを介護の現場に導入する場合の流れは以下の通りです。

  1. 日本テクトシステムズ株式会社と代理店契約(ライセンス契約)を結ぶ
  2. 代理店より利用者にONSEIを紹介する
  3. 利用者がスマホにONSEIのアプリをダウンロードする
  4. 利用者は代理店が指定する団体コードを入力して利用開始

 

ONSEIは介護予防に力を入れている事業所や、これから認知症予防に力を入れて取り組みたい事業所におすすめです。

参考:日本テクトシステムズ株式会社「ONSEI」

認知症の診断支援に役立つAI「会話型 認知症診断支援AIプログラム」

会話型認知症診断支援AIプログラムとは、塩野義製薬株式会社、株式会社FRONTEO、株式会社スズケンが協業して社会実装を目指す、5分~10分程度の自然会話をAIが分析し認知機能低下の有無などを検査して見分けるためのAIプログラムです。

具体的には次のような流れで検査を行います。

  1. 患者と医師や臨床心理士などが通常の自然会話を行い、音声データとする
  2. 音声データをアップロードする
  3. クラウド上のAIプログラムが会話の音声データから変換されたテキストデータを解析する
  4. 解析結果をダウンロードする

テキストデータの解析で疾患や認知機能低下の可能性の有無をAIが判定するという仕組みなので、認知症専門医の診断をサポートするだけではなく、一般医の使用やオンライン診療での活用も想定できるでしょう。

会話型認知症診断支援AIプログラムが社会実装されると、次のようなメリットがあると予想されます。

  • 医療業界が人手不足であっても、認知症であるかどうかの診断が素早くできる
  • オンライン診療で認知症を診断できる可能性が高まる
  • 認知症の専門医療機関以外でも検査を受け付けられるようになる

会話型認知症診断支援AIプログラムのための塩野義製薬株式会社、株式会社FRONTEO、株式会社スズケンの協業は、20245月に発表されたばかりですが、認知症の早期発見・診断のためにも期待できる取り組みだと言えるでしょう。

参考:SHIONOGI「塩野義製薬・FRONTEO・スズケン、3社協業により会話型 認知症診断支援AIプログラムの社会実装を目指す」

介護

認知症患者の介護に役立つAIを3つご紹介します。

AIIoTBPSDの予測とケア方法を通知するアプリ「DeCaAI

DeCaAI」とはゲオム株式会社が提供するiOS専用アプリで、AIが認知症の周辺症状であるBPSD60分前・30分前に予測し、介護者に適切なケア方法とともに通知してくれます。

BPSDとは認知症による脳の障がいである中核症状と、患者の性格や環境、周囲の人との関わりなどの相互作用の結果として現れるさまざまな精神症状や行動障がいのことです。

主な精神症状、行動障がいの内容は次の通りです。

項目

概要

望ましい対応方法の例

精神症状

不安・焦燥

l  共感的理解

l  居心地のよい空間作り

抑うつ

l  強要しない

l  励まさない

l  太陽の光を浴びる

妄想・幻覚

l  話を聴く

l  話の内容を否定しない

誤認

l  尊厳を傷つけないよう配慮し話を合わせる

l  否定しない

興奮

l  できるだけ一人で声をかける

l  話を聴く

行動障がい

外出して道に迷う

 

l  外出時は付き添いをする

l  名刺や名札を持つか衣服に縫っておく

l  GPSを持ってもらう

多動

 

l  毎日のルーティンを事故が予防できるものに置き換える

不潔行為

 

l  トイレ誘導をする

l  ポータブルトイレを設置

l  こまめなオムツチェック

収集癖

 

l  不安の表れなので不安は何かを理解し解消に努める

l  処分や回収はむやみに行わず慎重にする

社会的に不適切な言動や暴力

 

l  否定しない

l  その場を去る

性的逸脱行為

 

l  背景を理解しさりげなく話題を変える

l  短い言葉で注意する

l  運動や趣味に気持ちを向ける

破壊行為

l  その場を離れる

l  静かな環境を作る

 

BPSDの現れ方は個人差があり、上記のように適切な対応も異なるため介護者がケアの方法に迷うことも多いのですが、「DeCaAI」を導入すればBPSD発現を予測し、望ましいケア方法とともに通知してくれるので介護者がいつでも患者に望ましい対応ができるようになるのです。

またAIチャットボットに患者の状況を音声入力すれば、AIがその患者に応じた適切なケア方法を調べ表示もしてもらえます。

DeCaAI」を介護の現場に導入するまでの流れは以下の通りです。

  1. ゲオム株式会社の問い合わせフォームから必要な事項を記入し相談をする
  2. 担当者に現状のヒアリングをしてもらいそれに応じた「DeCaAI」の機能やプランの説明を受ける
  3. 最適なプランの提案を受け見積内容に納得できたら契約をする(補助金活用の提案も必要であれば受けられる)
  4. ゲオム株式会社の作業後利用開始

DeCaAI」の価格は初期費用とライセンス費の合計になるので、詳細は見積で確認するようにしましょう。

参考:geom「認知症ケア|BPSD予測AI」

介護の匠の知見を効率良く学べるAI「マジ神AI

マジ神AIとは、ベネッセスタイルケアが提供する利用者の状況観測データを可視化し、適切なケアのフィードバックを行うデジタルツールです

ベネッセスタイルケアでは、「認知症ケア」「安全管理と事故の再発防止」「介護技術」の観点で高いスキルを持つ介護の匠を独自の社内資格で「マジ神」と認定しています。

しかい介護の現場は業務量が膨大なため、高度な専門性を持つ「マジ神」になるまでの人材育成になかなか時間をかけることができません。

そのため、「マジ神」認定されたスタッフの思考や行動を効率良くインプットし、実践する環境作りを目的に開発されたのが「マジ神AI」というわけです。

具体的には、マジ神AIでは以下のようなことができます。

  • マジ神たちの経験や知識をデータベース化して機械学習させる
  • 介護記録やセンサーが記録したデータを見える化する
  • 利用者の睡眠やバイタルサインの情報から異常を検知する
  • BPSDなど専門性の高い領域のデータから利用者に認知症の傾向があるかどうかを予測する
  • BPSDに関する適切なケアを提示する

ベネッセスタイルケアではこの機能に満足せず定期的に現場に開発者が足を運び、スタッフにマジ神AIで使いにくい部分や使い勝手をヒアリングすることで改善を続けているのです。

2023年7月にベネッセスタイルケアがマジ神AIを導入した31の施設における520人を対象としてアンケート調査をした所、次のような結果が出ました。

  • 利用者の体調変化に気づきやすくなった
  • 利用者との関わり方に変化があった
  • マジ神AIの活用で夜間覚醒が多いと分析できた利用者にトイレ誘導をし、日中の活動量を増やして対応した所転倒事故の発生回数が減少した

これらの結果から、ベネッセスタイルケアでは今後マジ神AIをベネッセが運営する介護施設全拠点に導入

するとしています。

参考:ベネッセ「介護の現場にもAIの力を。『マジ神AI』で介護スタッフの負担を軽減し、ご入居者様のQOLが向上」

認知症コミュニケーションロボットだいちゃん

認知症コミュニケーションロボット「だいちゃん」とはザ・ハーモニー株式会社が開発・提供する認知症ケアに特化したおはなしロボットです。

 

だいちゃんには次のような特徴があります。

  • 認知症患者の会話の内容やリズムから相手の会話への集中度を計り集中度の高い時と低い時とで対応を変えられる
  • 雑音の多い介護の現場でも声が聞き取りやすいように話ができる
  • アプリを随時更新しコンテンツを追加している

 

AIを搭載し、アプリも随時更新することで認知症患者に対し柔軟な対応ができるのがわかります。

だいちゃんには、具体的には以下の4つのモードがあります。

モードの種類

概要

おはなしモード

l  認知症患者に回想を促すさまざまな質問をすることで楽しく会話ができるモード

うたモード

l  懐かしい童謡や歌謡曲(20246月現在全91曲)をランダムにだいちゃんが歌ってくれるモード

l  一緒に歌って遊んだり、歌声を聞いたりして音楽鑑賞を楽しめる

l  アプリを使えば歌ってほしい曲だけを選べる

クイズモード

l  ことわざクイズと都道府県クイズの2種類で脳トレができる(アプリが必要)

l  レクリエーションに活用できる

セリフ機能

l  服薬や入浴をだいちゃんから決まったセリフでお願いする(アプリが必要)

 

だいちゃんは「認知症コミュニケーションロボット」と銘打たれていますが、実際はコミュニケーションだけではなく介護のサポートもできるのです。

だいちゃんを利用するための流れは次の通りです。

  1. 公式ホームページの「お申込み」ボタンをクリックする
  2. 申込フォームが表示されるので必要事項を記入して申し込みをする
  3. 情報確認後契約申し込みが完了
  4. だいちゃんが指定された住所に届く

 

2024年6月現在1か月無料お試しができるので、ホームページの公式動画や説明を見ても介護の現場にどのように取り入れればよいのかイメージがわかない人はまずはお試しで利用してみるのをおすすめします。

また価格は以下の2つのプランで分かれています。

プランの種類

価格

基本プラン

l  初月無料

l  2か月目~4か月目 月額3,300

l  5か月目以降 月額5,500

年間プラン

l  初月無料

l  1年目 47,520

l  2年目以降 52,800

 

見積を取らなければならない介護ロボットと異なり、だいちゃんはホームページに価格が明記されているので、安心して申し込みができます。

また使い方や操作方法は、ホームページから画像や動画でも確認できるようになっているので、初めて使う人でもスムーズに使いこなすことができるでしょう。

参考:認知症コミュニケーションロボットだいちゃん公式ホームページ

 

予防

認知症予防に役立つAIをご紹介します。

認知症予防を目的としたAIアプリ「脳にいいアプリ」

「脳にいいアプリ」は、認知症予防を目的として株式会社ベスプラが開発・提供しているiPhoneAndroid向けの脳科学に基づいた脳の健康維持アプリです。

近年の脳科学において、認知症予防に効果的だと言われているのは以下の5つの要素です。

  • 運動
  • 食事
  • 脳刺激
  • ストレス緩和
  • 社会参加

上記の要素を踏まえて、脳にいいアプリには次の5つの機能が搭載されています。

機能

概要

歩く(運動・ストレス緩和)

l  目標歩数に応じて現在の歩数や歩行ペースなどが表示され目標達成をサポートしてくれる

食事(食事)

l  今日食べた品目を画面でタップして食事管理ができる

脳トレ(脳刺激・ストレス緩和)

l  通知された目標に応じた脳トレを行える

l  脳年齢を見られる

l  手塚プロダクション監修のイラストを見ながら脳トレができる(回想法の効果が見込める)

目標通知

l  ユーザーに最適な目標をAIが算出し毎日通知する

評価

l  今日の活動内容を犬の「プレキュアくん」が評価しアドバイスする

l  目標達成するとスターがもらえる

 

株式会社ベスプラでは、目標を達成するともらえる「スター」を商品やサービスと交換できる機能を開発中としています。

脳にいいアプリは無料で手軽にダウンロードができるため、介護の現場でも利用者におすすめしやすいのではないでしょうか。

 

参考:脳にいいアプリ公式ホームページ

各事業所さまの認知症対策に最適なAIをご提案しています

株式会社プレゼンス・メディカルでは介護事業所の皆様の課題に合わせ、最適な認知症対策のためのAIをご紹介しています。

具体的には次の4つのステップでコンサルティングを行い、AI活用をサポートしているのです。

  1. AI活用の可能性検討
  2. AI活用プランの策定
  3. AIシステムの開発・導入
  4. AI活用の運用支援

 

自社に合ったAIを導入して活用したいけれど、何から手をつけてよいかわからない人は次のページもごらんください。

既存商品・サービスにAIを活用することで、新たな付加価値を創造し、販路拡大を狙う企業が増えています。 (presence-m.com)

 

まとめ

認知症対策のためのAIは、現状目的が「早期発見・診断」「介護」「予防」の3つに分かれており、それぞれまだ開発・実験中の場合もあれば介護の現場に実装されている場合もあるので、これからの技術の進歩に期待が持てると言えるでしょう。

この記事も参考にして、ぜひ積極的に認知症対策のためのAIを活用してみてください。

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2025年に向け必要とされている
介護職員の医療的ケア。

2025年に向け必要とされている介護職員の医療的ケア。
介護施設・保育園・福祉施設・在宅で医療的ニーズのある利用者が今後さらに増えています。
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