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最も取得したい研修が喀痰吸引等研修

介護事業の経営者になるには?
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

医療、健康、教育、環境など、多岐にわたる分野での社会貢献を目指し、プレゼンス・メディカルを設立。日本の医療・介護分野において「技術の革新」をキーワードに、数々の新しいケアプロトコルを生み出し、業界に貢献している起業家である。M&Aやベンチャーキャピタルの分野で多数の事業を手掛け、その経験と知識を活かして、日本の介護業界にイノベーションをもたらすプレゼンス・メディカルを設立しました。
同社のCEOとしても活躍し、研修や喀痰吸引に関するコラムを通じて、事実に基づいた医療的ケアの意義や役割を啓蒙している。その知見は、今後の介護業界の発展に大きく貢献することが期待される。
2014年から500施設以上の施設経営者と直接対面を行い、現場における課題解決に向けた対談多数。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会でのセミナーを全国28都道府県で実施。

2024.08.26

介護事業の経営者になるには?

要約:

介護事業所の経営実態から役に立つ資格まで詳しく解説
介護業界で長く働いてきたので、今後は介護事業の経営者になりたいと考えているけれど、何から始めればよいかわからず困っている人はいませんか?

 

この記事では、介護事業の経営者になるにあたって知っておきたい介護事業所の経営実態から経営の役に立つ資格まで詳しく解説します。

 

介護事業の経営実態

介護事業の経営実態とはどのようなものなのでしょうか。

3つの観点からご紹介します。

2023年の介護事業者の倒産実態

2023年に株式会社東京商工リサーチが発表した「老人福祉・介護事業」の倒産、休廃業・解散調査において、老人福祉・介護事業の倒産件数を調べた所122件で、過去2位を記録しました。

また休廃業・解散件数は510件と過去最多を記録したのです。

一方2023年に厚生労働省が行った介護経営実態調査で各介護サービス別の売上に対する利益率を示す収支差率を調べた所、次のような結果となりました。

介護サービスの種類

収支差率

介護老人福祉施設

-1.0%

介護老人保健施設

-1.1%

訪問介護

7.8%

通所介護

1.5%

短期入所生活介護

2.6%

認知症対応型共同生活介護

3.5%

介護老人福祉施設、介護老人保健施設では収支差率がマイナスとなり、他の介護サービスでも訪問介護以外はわずかなプラスに過ぎず経営に余裕があるとは言えないため、老人福祉・介護事業の倒産件数が過去2位の122件に達するのもうなずける結果だと言えるでしょう。

国では各介護事業者に経営情報(介護事業者の損益計算書)を報告してもらい、それをデータベース化することで政策に反映しようと、厚生労働省老人保健事業推進費等補助金を用いてこの分野での調査・研究を重ねています。

今後、各介護事業者の経営努力だけではどうにもならない部分をどのように国がサポートしていくのかが注目されます。

参考:株式会社東京商工リサーチ「介護事業者の倒産は 過去2番目、休廃業 ・ 解散は 過去最多の 510件 人手不足、物価高で『訪問介護』の倒産は最多更新」

参考:厚生労働省「令和5年介護事業経営実態調査結果の概要」

参考:三菱総合研究所「介護事業者の経営状況のデータベースに関する調査研究 報告書」

訪問介護事業所の入れ替わりの実態

画像出典:日本総合研究所「訪問介護事業所の現状と課題」

2023年に日本総合研究所が発表した「訪問介護事業所の現状と課題」において東京都における訪問介護事業所の新規指定と廃止数を調べた所、2017年ごろから新規指定数と廃止数の数が近づき、訪問介護事業所が入れ替わりながらサービスを行っている実態が見えてきました。

一方2023年に株式会社東京商工リサーチが発表した「訪問介護事業者」の倒産動向調査において、2023年は訪問介護事業所の倒産が12月15日までに60件となり、これまで年間最多だった2019年の58件を抜いて年間最多を更新したことがわかったのです。

前の項目でご紹介した通り、介護事業の中でも収支差率が決して良くないわけではない訪問介護でも経営は苦しく、倒産や廃止が多いのが現状だということです。

このような現状を踏まえ、2023216日に行われた第19回医療介護総合確保推進会議の資料「総合確保方針の見直しについて(案)」には、見直し案の1つとして介護サービス事業者の経営の協働化・大規模化の推進も挙げられました。

介護事業の経営を協働化・大規模化することで現状より少しは倒産や廃止が減少し、利用者が安心して介護サービスを受けられる体制が整うでしょう。

参考:株式会社東京商工リサーチ「2023年の『訪問介護事業者』倒産が 60件に急増  ヘルパー不足や物価高、競合で過去最多を更新」

参考:日本総合研究所「訪問介護事業所の現状と課題」

参考:厚生労働省「医療介護総合確保促進会議」

業務継続が困難になった場合の対策の実態

2022年3月に株式会社エヌ・ティ・ティデータ経営研究所が発表した「感染症対策や業務継続に向けた事業者の取組等に係る調査研究事業報告書」において、業務継続が困難になるような感染症の集団感染の発生経験についてたずねた所、以下のような結果が出ました。

項目

ある

ない

介護老人福祉施設

24.6%

75.4%

介護老人保健施設

31.2%

66.7%

訪問介護

5.2%

94.2%

通所介護

11.7%

88.3%

認知症対応型共同生活介護

13.6%

85.9%

全体

13.3%

86.0%

 

入所して集団生活を送る施設サービスの方が居宅サービスよりも集団感染の発生率が10%~20%ほど高いのがわかります。

また業務継続が困難になるような自然災害の罹災経験についてたずねた所、以下のような結果だったのです。

項目

ある

ない

介護老人福祉施設

15.0%

84.6%

介護老人保健施設

15.6%

83.7%

訪問介護

4.1%

95.3%

通所介護

7.3%

91.8%

認知症対応型共同生活介護

7.1%

90.4%

全体

9.2%

89.5%

 

自然災害の経験があるのはどの介護サービスでも15%以下となり、現状は集団感染ほど各事業所で経験がないのがわかります。

それでは感染症の集団感染や自然災害が起こった時、安定的に介護サービスを提供するために策定されるBCP(業務継続計画)を策定している介護事業所はどれくらいあるのでしょうか。

感染症BCPの策定状況についてたずねた結果は次の通りです。

 

2020年12月までに策定済み

2021年1月から2021年3月までに策定済み

2021年4月以降に策定済み

2022年3月までに策定予定

2023年3月までに策定予定

2024年3月までに策定予定

策定する目途は立っていない

介護老人福祉施設

4.3%

7.8%

12.8%

41.1%

14.9%

11.3%

7.8%

介護老人保健施設

11.2%

7.7%

14.6%

30.0%

16.5%

9.2%

8.5%

訪問介護

5.2%

3.5%

14.0%

20.9%

11.6%

7.6%

32.6%

通所介護

9.5%

6.9%

10.7%

22.1%

13.6%

6.6%

26.8%

認知症対応型共同生活介護

12.1%

6.1%

14.1%

20.2%

12.1%

7.6%

25.8%

全体

9.0%

5.5%

12.6%

24.8%

14.1%

9.5%

21.5%

感染症で業務継続が困難になった経験のあると回答した割合の高い「介護老人保健施設」では20243月までに89.2%、「介護老人福祉施設」では92.2%がBCPを策定するとしており、経験が生かされているのがわかります。

一方自然災害BCPの策定状況についてもたずねた所、次のような結果でした。

 

2021年3月までに策定済み

2021年4月以降に策定済み

2022年3月までに策定予定

2023年3月までに策定予定

2024年3月までに策定予定

策定する目途は立っていない

介護老人福祉施設

21.2%

13.5%

28.1%

16.9%

10.0%

9.2%

介護老人保健施設

16.3%

7.8%

36.2%

14.9%

14.2%

9.9%

訪問介護

8.7%

11.6%

18.6%

11.0%

8.1%

34.9%

通所介護

18.9%

10.1%

21.5%

15.1%

6.3%

23.7%

認知症対応型共同生活介護

16.7%

13.1%

21.7%

11.1%

7.6%

24.7%

全体

16.1%

9.8%

23.7%

15.0%

9.9%

22.0%

 

自然災害を経験した経験が4.1%しかなかった訪問介護においては、「策定する目途は立っていない」と回答した事業所は34.9%となり、経営の中で自然災害BCP作成の優先順位が低い様子が見て取れます。

厚生労働省ではこのような現状を鑑みて、BCP作成についての研修を行い、その時の資料をPDFや動画で発信しています。

介護事業を安定して経営し続けるためにも、BCPの作成をしっかりと行うのが大切だと言えるでしょう。

参考:株式会社エヌ・ティ・ティデータ経営研究所「感染症対策や業務継続に向けた事業者の取組等に係る調査研究事業 報告書」

参考:厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」


介護事業を経営するのに役立つ資格

介護事業を経営するのに役立つ資格には「介護福祉経営士」があるので、その役割と職務、段階と資格認定の流れ、資格試験の受験方法をご紹介します。

介護福祉経営士の役割と職務

介護事業の経営に関する法律の制度、財務会計、リスクマネジメント、コンプライアンス、人材育成などの知識や経験を持ち、実務の現場でそれを生かして経営を行うのが介護福祉経営士です。

介護業界は利用者のニーズに合わせて介護保険制度が変化していくのが特徴的なので、それに応じて常に新しいサービスを生み出していくのが介護福祉経営士の重要な役割だと言えるでしょう。

このことを踏まえると、介護福祉経営士の職務は次の5つとなります。

項目

概要

人財管理・育成

l  職員の質の向上を図るための人材育成

l  人事・労務管理

l  ES(従業員満足度)の向上

情報活用

l  マーケティング

l  情報開示と広告、広報、メディア活用

l  ITシステムの活用

サービス向上

l  利用者が安心して利用できる介護サービスの実践

l  介護保険外サービスの開発

l  リスクマネジメント

l  地域包括ケアの実践

l  クレーム対応

制度対応

l  介護保険法・介護報酬制度の理解

l  介護福祉関連法規の理解

l  超高齢社会における法務の理解

財務・資金調達

l  資金調達手段の理解とその裏付けとなる資金計画の作成

l  助成金や補助金の運用理解

l  運営コスト分析・削減

 

介護保険法からの収入が主となる中でもどのように利益を維持し、より良い介護サービスを地域の中で実現するかを考えるのが介護福祉経営士の職務と言えるのではないでしょうか。

参考:一般社団法人介護福祉経営人材教育協会「介護福祉経営士の役割」

参考:一般社団法人介護福祉経営人材教育協会「介護福祉経営士の担う職務」

介護福祉経営士の段階と資格認定の流れ

介護福祉経営士には次の2つの段階があります。

項目

概要

介護福祉経営士1

介護福祉経営の実践力を習得している

介護福祉経営士2

介護福祉経営の基礎知識を習得している

 

2級と1級では知識を持つだけではなく実践できる力があるかどうかに大きな違いがあると言えるでしょう。

2級~1級の資格認定までの流れは以下の通りです。

  1. 介護福祉経営士2級資格認定試験を受験
  2. 試験合格
  3. 登録審査
  4. 介護福祉経営士2級取得
  5. 介護福祉経営士1級資格認定試験を受験
  6. 試験合格
  7. 介護福祉経営士実践研修受講・修了
  8. 変更登録審査
  9. 介護福祉経営士1級取得

 

2級は資格認定試験に合格すると資格取得できますが、1級では実践研修を受講しなければならないのが大きな違いと言えるでしょう。

登録審査や実践研修の詳細な内容についてはホームページに記載されているので、あらかじめ確認をしておくのをおすすめします。

参考:一般社団法人介護福祉経営人材教育協会「介護経営福祉士の段階」

参考:一般社団法人介護福祉経営人材教育協会「資格認定の流れ」

受験の概要

介護福祉経営士の認定試験は、会場受験とリモート受験のどちらかを選ぶことができます。

また受験資格は1級の場合は2級を取得していることという条件はありますが、年齢、学歴、国籍等の制約はありません。

出題内容、勉強のためのテキストについてもホームページに詳細な記載があるので、比較的誰でも挑戦しやすいと言えるでしょう。

介護事業の経営に携わりたい人は、資格取得をぜひ検討してみてください。

参考:一般社団法人介護福祉経営人材教育協会「受験方法と受験申込」

参考:一般社団法人介護福祉経営人材教育協会「認定区分/受験資格/出題科目」

介護事業所立ち上げの流れ

実際に介護事業を経営するため、介護事業所立ち上げをするには、どのような流れで行えばよいのでしょうか。

東京都で訪問介護事業を立ち上げる場合を例としてご紹介します。

事前準備

まずは東京都福祉局のホームページに記載されている人員、設備、運営に関する基準に目を通しましょう。

これらの基準を満たせなければ、介護事業所立ち上げをすることはできません。

そして新規指定申請書類の受付と事前相談を担当する公益財団法人東京都福祉保健財団のホームページで、介護保険の指定事業者になるための以下の手順について理解しましょう。

  1. 新規指定前研修の申込をする
  2. 指定前研修を受講する
  3. 新規指定申請書の提出・受理 →人員、設備、運営基準などを満たしているか審査
  4. 基準などを満たした場合、指定介護サービス事業所などとして指定される

新規指定前研修は毎月1回開催されていますが、事業所開設3か月前までに受講しなければなりません。

また新規指定申請書は介護サービスによって内容が異なるので、訪問介護であれば訪問介護の書式と指示に従って提出する必要があるのも覚えておきましょう。

スケジュール

新規指定前研修から指定介護サービス事業所として指定を受けるまでのスケジュールは次の通りです。

①(指定予定日の4ヶ月前まで)新規指定前研修の申込み

②(事業所開設3か月前まで)新規指定前研修を受講

③(指定予定日の2ヶ月前15日が目途)新規指定申請書の提出・受理

④指定申請書の審査

⑤基準などを満たした場合、指定介護サービス事業所等として指定(指定申請が受理された月の翌々月1日付)

目標とする日に指定を受けるためにも、スケジュールに余裕を持って各手続きを進めていくのが大切です。

指定申請

指定申請についての相談や問い合わせ先は、内容に応じて異なるのでホームページを確認しましょう。

相談したいことを先延ばしにすると、思いがけなく解決に時間がかかってその後のスケジュールにも影響が及びかねないので、何かうまくいかないことがあれば早めに相談することをおすすめします。

参考:東京都福祉局「1訪問介護(新規に認定を受けたい方へ)」

参考:公益財団法人東京都保険福祉財団「新規に介護保険事業者として指定申請をお考えの方へ」


介護事業において受けられる経営支援

介護事業において受けられる経営支援には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

補助金

介護事業において受けられる経営支援の1つに補助金があります。

例えば東京都では「東京都特別養護老人ホーム経営支援事業」で、特別養護老人ホームを都内に設置し、適正な運営をしている社会福祉法人に対して運営費などの一部をサポートする補助金を支給しています。

介護事業を経営する上で受けられる補助金・給付金・助成金などがないか、地方自治体のホームページで調べることから始めてみましょう。

参考:東京都福祉局「東京都特別養護老人ホーム経営支援事業」

アドバイザーの派遣

介護事業における課題解決のために専門のアドバイザーを派遣するという形の経営支援もあります。

例えば神奈川県では「介護事業経営マネジメント支援事業」として、中小規模の介護サービス事業所を対象に無料で経営支援アドバイザーの派遣を行っているのです。

具体的には「労務」「人事」「経営」などの具体的な相談に応じるために、社会保険労務士、税理士、経営コンサルタントなどの専門家が派遣されるので、専門知識を生かして課題の解決方法を教えてもらえるのです。

自分一人の力では経営にかかる課題を解決できない場合、このような支援を受けるという方法もあるのを覚えておきましょう。

参考:神奈川県「介護事業経営マネジメント支援事業」

セミナー受講

介護事業における課題解決のためにセミナーを無料で受講できる形の経営支援もあります。

例えば神奈川県では介護事業経営マネジメント支援事業として、中小規模の介護サービス事業所を対象に無料で経営マネジメントセミナーを行っているのです。

具体的には「人材確保・定着・育成」「経営安定・経営戦略」「時事トピック・ケーススタディ」の3つを目的に年間約18回のセミナーを開催しており、オンラインで行うため手軽に受講ができます。

課題解決のためにまずは無料のセミナーで知識を深める方法もあるのを知っておきましょう。

参考:神奈川県「介護事業経営マネジメント支援事業」


総合コンサルティングサービスで介護経営をサポートします

株式会社プレゼンス・メディカルでは女性の職場環境改善を目的とした総合コンサルティングサービスで介護経営のサポートを行っています。

介護の現場では女性が多く働いていますが、女性が働きやすい職場作りに取り組むことで、離職率、職員のスキルアップ、リーダー育成などさまざまな現場の課題を解決できると考えているためです。

介護経営に対する公的なサポートでは物足りなさを感じている方は、次のページもごらんください。

女性の職場環境改善 | 喀痰吸引等研修の講習・資格・介護・福祉の研修実績|株式会社プレゼンス・メディカル (presence-m.com)

 

まとめ

現状の介護事業所における経営の実態を見ると倒産、廃業、事業継続などさまざまな面で課題があると言えますが、事前準備をしっかりと整え介護業界ならではの経営知識を学ぶことで課題を乗り越えやすくなり、経営を安定させることもできるでしょう。

この記事も参考にして、ぜひ自分の理想とする経営を行ってみてください。

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2025年に向け必要とされている
介護職員の医療的ケア。

2025年に向け必要とされている介護職員の医療的ケア。
介護施設・保育園・福祉施設・在宅で医療的ニーズのある利用者が今後さらに増えています。
利用者が安心した生活を過ごせるように、 喀痰吸引等の資格取得が必要です。
研修予算計画を始め、現場に寄り添った年回計画を策定し、安定的な資格取得の計画をご提案します。