PAGE TOP

コラム

column

介護施設・保育園・福祉施設・在宅で
最も取得したい研修が喀痰吸引等研修

介護現場におけるハラスメントとは?種類から事例まで
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

医療、健康、教育、環境など、多岐にわたる分野での社会貢献を目指し、プレゼンス・メディカルを設立。日本の医療・介護分野において「技術の革新」をキーワードに、数々の新しいケアプロトコルを生み出し、業界に貢献している起業家である。M&Aやベンチャーキャピタルの分野で多数の事業を手掛け、その経験と知識を活かして、日本の介護業界にイノベーションをもたらすプレゼンス・メディカルを設立しました。
同社のCEOとしても活躍し、研修や喀痰吸引に関するコラムを通じて、事実に基づいた医療的ケアの意義や役割を啓蒙している。その知見は、今後の介護業界の発展に大きく貢献することが期待される。
2014年から500施設以上の施設経営者と直接対面を行い、現場における課題解決に向けた対談多数。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会でのセミナーを全国28都道府県で実施。

2024.10.14

介護現場におけるハラスメントとは?種類から事例まで

要約:

介護現場でのハラスメントは、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、カスタマーハラスメント、就活ハラスメントの5種類に分類されます。パワーハラスメントは優越的な関係を背景にした言動や業務上必要で相当な範囲を超えた言動が含まれ、セクシュアルハラスメントは労働者の意に反する性的な言動が該当します。妊娠・出産・育児休業等ハラスメントは、妊娠や育児休業を取得した労働者に対する不当な扱いを指し、カスタマーハラスメントは顧客からの不適切な要求や攻撃的な言動が含まれます。就活ハラスメントは、就職活動中の学生に対する不当な扱いを指します。これらのハラスメントを防ぐためには、厚生労働省のマニュアルを活用し、職員向けの研修や教育を行うことが重要です。

介護現場で起こりうるハラスメントの種類

介護現場で起こりうるハラスメントの種類にはどのようなものがあるのでしょうか。

5つご紹介します。

パワーハラスメント

パワーハラスメントとは以下の3つの要素を満たすもののことです。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要で相当な範囲を超えた言動
  3. 労働者の就業環境が害される言動

業務上必要で相当な範囲を超えた言動には次のような例があります。

  • 業務上必要のない言動
  • 業務の目的から大きくずれた言動
  • 業務をするための手段として不適当な言動
  • 言動の回数、言動をした人の数、言動の様子や手段が社会通念に照らして許される範囲を超えている

介護の現場は利用者やその家族にとっては生活の場ですが、働く人にとっては業務をする場所になるため職場や業務の目的からずれている言動は、業務上必要で相当な範囲を超えた言動と見なされるというわけです。

またパワーハラスメントには以下の6つの類型があります。

類型

身体的な攻撃

l  殴打、足蹴りを行う

l  相手に物を投げつける

精神的な攻撃

l  人格を否定するような言動を行う

l  長時間にわたって、業務に関する厳しい叱責を繰り返し行う

人間関係からの切り離し

l  一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる

過大な要求

l  労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる

過小な要求

l  管理職でもある労働者を退職させるため、誰でもできる業務を行わせる

個の侵害

l  労働者を職場外で継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする

 

これらの類型に含まれるものだけがパワーハラスメントにあたるわけではないため、個別の事例がパワーハラスメントかどうかは慎重な判断が必要です。

セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメントとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることです。

性的な言動とは次のような内容を指します。

項目

概要

性的な内容の発言

l  性的な事実関係をたずねる

l  性的な内容の情報(うわさなど)を流す

l  性的な冗談やからかい

l  食事やデートにしつこくさそう

l  個人的な性的体験談を話す

性的な行動

l  性的な関係を強要する

l  必要がないのに身体に触れる

l  わいせつ図画を配布・掲示する

l  強制わいせつ行為をする

l  強姦

 

異性を対象とした言動のみがセクシュアルハラスメントにあたると勘違いしやすいですが、同性に対する言動もセクシュアルハラスメントにあたるため注意しましょう。

またセクシュアルハラスメントには次のような種類があります。

項目

対価型セクシュアルハラスメント

l  事業主から性的な関係を要求されたが拒否したら、解雇された

環境型セクシュアルハラスメント

l  上司が労働者の腰、胸などにたびたび触ったため、その労働者が苦痛に感じて就業意欲が低下した

 

対価型の例では労働者が解雇という不利益を受け、環境型の例では労働者の就業環境がよいものとは言えなくなっています。

セクシュアルハラスメントが起こりやすい環境を作らないためには、介護事業所全体が過度な性別による役割分担意識にとらわれていないか客観的に見直すことが重要です。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメント

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは、マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)とも呼ばれ、職場で上司や同僚からの言動により妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業などを取得した男女労働者の就業環境が害されることを指します。

ただし以下のような場合は妊娠・出産・育児休業等ハラスメントにはあたりません。

  • 制度利用を希望する人に対し業務で必要な変更の依頼や相談をすること
  • 妊娠した本人は仕事を続けたいという意欲はあるが、客観的に見て体調が良くない場合に業務量の削減や業務内容の変更などを打診すること

業務用必要な言動であるかどうかが妊娠・出産・育児休業等ハラスメントを見極める第一歩となるのを覚えておきましょう。

カスタマーハラスメント

カスタマーハラスメントとは業界により顧客への対応基準が異なるため明確には定義づけられませんが、以下のような事例がそれにあたると考えられます。

項目

事例

顧客の要求の内容が妥当ではない事例

l  提供するサービスに欠陥や過失がない場合

l  要求の内容が提供するサービスの内容と関係がない場合

要求を実現するための手段や振る舞いが社会通念上不適当な事例

要求内容が妥当かどうかにかかわらず不適当とされる可能性が高いもの

l  身体的な攻撃(暴行、傷害など)

l  精神的な攻撃 (脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言など)

l  威圧的な言動

l  土下座の要求

l  何度も繰り返されるしつこい)言動

l  拘束的な行動(不退去、居座り、監禁など)

l  差別的な言動

l  性的な言動

l  従業員個人への攻撃・要求

要求内容が妥当かどうかに照らし合わせて不適当とされることが多いもの

l  商品交換の要求

l  金銭補償の要求

l  謝罪の要求(土下座を除く)

 

介護の現場は利用者や家族が働く人たちに直接要求をすることが多い環境なので、事業所としてカスタマーハラスメントどのように防止するかはしっかり考えておく必要があるでしょう。

就活ハラスメント

就活ハラスメントとは、就職活動中やインターンシップの学生などに対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントのことです。

立場の弱い学生の尊厳や人格を不当に傷つける行為で、介護事業所でもし就活ハラスメントが起こると事業所のイメージ低下はまぬがれず、募集をかけても応募がこなくなる可能性が高いでしょう。

参考:厚生労働省 あかるい職場応援団「ハラスメントの定義」

介護の現場におけるハラスメントの実態

介護の現場におけるハラスメントの実態とはどのようなものなのでしょうか。

ハラスメント発生の有無、職員向け研修の実施状況、契約時のハラスメントに関する説明の実施状況の3つの観点からご紹介します。

ハラスメント発生の有無

画像出典:三菱総合研究所 厚生労働省 老人保健健康増進等事業:令和2年度報告書「介護現場におけるハラスメントへの対応に関する調査研究事業」

2020年に三菱総合研究所が発表した「介護現場におけるハラスメントへの対応に関する調査研究事業」において、ハラスメントの発生の有無についてたずねた所、どの事業所でも20%~40%の職員が「有」と回答しました。

訪問看護においては42.0%、特定施設入居者生活介護では38.5%とハラスメントの発生率が高くなっており、改善に向けた努力が求められるでしょう。

職員向け研修の実施状況

画像出典:三菱総合研究所 厚生労働省 老人保健健康増進等事業:令和2年度報告書「介護現場におけるハラスメントへの対応に関する調査研究事業」

「介護現場におけるハラスメントへの対応に関する調査研究事業」において、施設・事業所内での職員向け研修の実施の有無についてたずねた所、ほぼ半数の事業所が実施していないと回答し、前の項目でハラスメントの発生率が高い理由がわかる結果となっています。

まずは事業所の運営側が職員に対し、ハラスメントについて教育をしなければならないという意識を持つのが大切です。

契約時のハラスメントに関する説明の実施状況

画像出典:三菱総合研究所 厚生労働省 老人保健健康増進等事業:令和2年度報告書「介護現場におけるハラスメントへの対応に関する調査研究事業」

「介護現場におけるハラスメントへの対応に関する調査研究事業」において、施設・事業所との契約時における利用者や家族へのハラスメントに関する説明の実施状況についてたずねた所、必ず実行しているのは20%~40%にとどまりました。

少しずつでも説明の実施を増やすことが職員へのハラスメント防止につながるでしょう。

参考:三菱総合研究所 厚生労働省 老人保健健康増進等事業:令和2年度報告書「介護現場におけるハラスメントへの対応に関する調査研究事業」

介護の現場で必要なハラスメント対策とは

介護の現場で必要なハラスメント対策には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

介護現場におけるハラスメント対策マニュアルを活用する

介護の現場におけるハラスメント対策をするため、厚生労働省では2018年に介護現場におけるハラスメント対策マニュアルを作成・周知し、2021年度に改訂しています。

介護現場におけるハラスメント対策マニュアルでは、ハラスメント対策として取り組む必要のあることを「施設・事業所として取り組むこと」「職員に対して取り組むこと」「関係者との連携に向けて取り組むこと」の3つにわけて以下のように紹介しています。

分類

項目

施設・事業所として取り組むこと

ハラスメントに対する施設・事業所としての基本方針の決定・周知

マニュアルなどの作成・共有

相談しやすい職場環境づくり、相談窓口の設置

介護サービスの目的および範囲などへのしっかりとした理解と統一

利用者・家族などに対する周知 

利用者や家族などに関する情報の収集とそれを踏まえた担当職員の配置・申し送り

サービス種別や介護現場の状況を踏まえた対策の実施

ハラスメントが発生した場合の対応

管理者などへの過度な負担の回避

PDCAサイクルの考え方を応用した対策などの更新、再発防止策の検討

職員に対して取り組むこと

組織としての基本方針や必要な情報の周知徹底 

介護保険サービスの業務範囲の適切な理解の促進

職員への研修の実施、ハラスメントに関する話し合いの場の設置

職員のハラスメントの状況把握のための取り組み

職員自らによるハラスメントの未然防止への点検などの機会の提供 

管理者向け研修の実施、充実

関係者との連携に向けて取り組むこと

行政や他職種・関係機関との連携(情報共有や対策の検討機会の確保) 

 

項目ごとに必要があれば参考資料が提示してあるため、初めて目を通した人でも概要がわかりやすくなっています。

介護の現場におけるハラスメントに対し事業所が一体となって取り組むためにも、介護現場におけるハラスメント対策マニュアルの内容を理解し、活用しましょう。

管理者と職員向けに研修を行う

厚生労働省では2019年に「管理者向け研修のための手引き」「職員向け研修のための手引き」を作成・周知しています。

管理者向け研修のための手引きは「手引きの目的」「管理者向け研修資料」の2部構成です。

相談受付に関しての項目では相談を受け付ける際の心構えや対応方法、外部機関との連携について細かく記載があり、管理者としてどのようなことに気を付けて対応すればよいかが理解しやすくなっています。

また職員向け研修ための手引きも「手引きの目的」「職員向け研修資料」の2部構成です。

介護現場におけるハラスメントを予防するためにはどのようなことに気を付けて業務に取り組めばよいかが、チェック方式でわかるようになっています。

裁判の事例について知る

介護の現場において適切なハラスメント対策をするためには、実際にハラスメントについてどのような裁判が行われたかについて理解を深めておくのも大切です。

厚生労働省が運営する「あかるい職場応援団」では、「裁判例を見てみよう」というページで裁判例が検索できるようになっています。

介護の現場におけるハラスメントの裁判例として、介護士に対する雇い止めが無効であるとして地位確認と損害賠償が認められた事例があります。

この裁判の原告である病院において、有期雇用で働き1年契約を3回契約更新された介護士が、3回目の契約満了時において、人事考課の結果笑顔がないなど介護員の資質が低すぎることを理由に、雇用契約が更新されませんでした。

裁判では、人事考課の評価点が低下したのは上司の交代による評価基準の違いによるものであることが指摘され、笑顔がないという理由は主観的で介護士として不適格とまでは言い切れず、契約更新がされないのは妥当ではなく不法行為だと判断されたのです。

判決として裁判所は被告に20万円の慰謝料および5万円の弁護士費用の支払いを命じました。

介護の現場において適切な理由もなく雇い止めをするのは違法行為となり、損害賠償の対象ともなりうるのを覚えておきましょう。

参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」

参考:厚生労働省 あかるい職場応援団「裁判例を見てみよう」

介護の現場におけるハラスメントの事例

2020年に厚生労働省では介護現場におけるハラスメント事例集を発表し、ハラスメント発生の経緯、対応、事例から学べる対策や対応上のヒントが見られるようにしました。

特に事業所を運営する人に特に目を通してほしいのが事例4で、事業所の対応策が不明瞭な場合ハラスメントはどのように大きくなり改善するのが難しくなるかがわかる事例となっています。

前提として事業所ではハラスメントに対する方針を定めておらず、職員が個別対応し記録にも残していませんでした。

そのような中、ある利用者が複数の女性職員に対して胸や股間をさわる、卑猥な発言をするといったセクシュアルハラスメントを繰り返すようになります。

職員会議が開催され職員の配置変更、勉強会の開催、家族への報告といった対策が取られましたが結果的にハラスメントは改善されず、事業所変更となりました。

この事例からは介護の現場でハラスメントについての研修を行っておくことの大切さ、早期に対応することの大切さ、事例を地域の関係者と共有して繰り返さないための対策を考える重要性などを学ぶことができるでしょう。

参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」

 

 


株式会社プレゼンス・メディカルにご相談ください

株式会社プレゼンス・メディカルは、介護事業者の経営安定を支援するためのコンサルティングを提供しています。既に事業所を運営している企業や、介護業界への参入を検討している企業に対し、開業から運営までの全プロセスをサポートします。

介護業界は複雑で多岐にわたる課題が存在しますが、プレゼンス・メディカルは各企業の方針に合わせたスモールステップでの導入を推奨しています。これにより、無理なく確実に目標を達成することが可能です。

私たちのコンサルティングサービスは、増収増益、離職率の低下、医療的ケアの受け入れ体制構築など、具体的な経営課題に対する解決策を提供します。プレゼンス・メディカルと共に、介護事業の未来を築き上げましょう。まずはお気軽にご相談ください。


お問い合わせはこちら

介護事業所のパワハラ防止対策をサポートしています

株式会社プレゼンス・メディカルでは介護事業所のパワハラ防止対策をサポートしています。

株式会社プレゼンス・メディカルでは、パワハラを防止するためには以下の4つの対策を取るのが望ましいと考えています。

項目

概要

会社⽅針の周知

l  衛⽣委員会で企業⽅針を決定し、議事録に掲載

従業員の研修

l  産業保健スタッフに研修や意識啓発を依頼

相談窓⼝設置

l  外部にパワハラ相談窓⼝を設ける

発⽣時の対応

l  産業保健スタッフにパワハラ発⽣時の対応を依頼する

なぜ外部に相談窓口を設けるのか疑問に感じる人もいるかもしれませんが、例えば上司からパワハラを受けている場合、社内の相談窓口があるのでは上司に情報が伝わり報復されるのをおそれて通報できない人も出てくるでしょう。

本気で事業所内のハラスメントを改善したいという意欲のある運営者の方は、次のページもごらんください。

2022年4月より中小企業も義務化!パワハラ防止法について。 労基署に社名を公表、被害者・加害者から訴えられる危険性。 (presence-m.com)

 

まとめ

介護現場におけるハラスメント対策は、事業所全体で取り組むべき重要な課題です。パワハラ、セクハラ、マタニティハラスメント、カスタマーハラスメント、就活ハラスメントといった多様な問題は、介護職員の就業環境に悪影響を及ぼします。適切な対策として、厚生労働省のマニュアルを活用し、職員への研修を実施することが効果的です。また、事業所の運営者がハラスメントに対する意識を高め、相談しやすい環境を整備することも重要です。さらに、実際の裁判事例やハラスメント事例集を参考にし、具体的な対応策を検討することが望まれます。株式会社プレゼンス・メディカルでは、外部相談窓口の設置など、事業所内でのハラスメントを防止するためのサポートを提供しています。ハラスメントのない職場づくりに向けて、この記事を参考に少しずつ取り組んでみてください。


本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

Documents・Contact

2025年に向け必要とされている
介護職員の医療的ケア。

2025年に向け必要とされている介護職員の医療的ケア。
介護施設・保育園・福祉施設・在宅で医療的ニーズのある利用者が今後さらに増えています。
利用者が安心した生活を過ごせるように、 喀痰吸引等の資格取得が必要です。
研修予算計画を始め、現場に寄り添った年回計画を策定し、安定的な資格取得の計画をご提案します。