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介護士のストレスチェックはなぜ必要?ストレスケアの方法もご紹介
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

医療、健康、教育、環境など、多岐にわたる分野での社会貢献を目指し、プレゼンス・メディカルを設立。日本の医療・介護分野において「技術の革新」をキーワードに、数々の新しいケアプロトコルを生み出し、業界に貢献している起業家である。M&Aやベンチャーキャピタルの分野で多数の事業を手掛け、その経験と知識を活かして、日本の介護業界にイノベーションをもたらすプレゼンス・メディカルを設立しました。
同社のCEOとしても活躍し、研修や喀痰吸引に関するコラムを通じて、事実に基づいた医療的ケアの意義や役割を啓蒙している。その知見は、今後の介護業界の発展に大きく貢献することが期待される。
2014年から500施設以上の施設経営者と直接対面を行い、現場における課題解決に向けた対談多数。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会でのセミナーを全国28都道府県で実施。

2024.10.30

介護士のストレスチェックはなぜ必要?ストレスケアの方法もご紹介

要約:

介護事業所における介護士のストレスケアについて、ストレスチェックの必要性や導入方法、ケアの実践について解説しています。ストレスチェックは、感情労働やハラスメントといった介護士の特有の負担を軽減し、バーンアウトや精神疾患を予防するために重要です。導入には、事業所の方針策定や実施体制の準備が必要で、結果に基づく面接指導や職場環境の改善が求められます。適切なストレスケアを行うことで、介護サービスの質の向上と職員の離職防止が期待できます。

ストレスチェックとは

ストレスチェックは、2014625日に公布された労働安全衛生法の第66条の10で「事業者が労働者に対して行う、医師などによる心理的な負担の程度を把握するための検査」と定義づけられています。

ストレスチェックと、その結果に基づく面接指導の実施を事業者に義務付けることなどを内容とした「ストレスチェック制度」の目的は以下の通りです。

  • メンタルヘルス不調になるのを未然に防止する一次予防を強化するため
  • 本人にストレスチェックの結果を通知してストレスの状況への気づきを促し個々のストレスを低減させるため
  • 職場におけるストレス要因を評価し事業者に職場環境の改善を求めるため
  • ストレスの高い人を早期に発見し医師による面接指導につなげ、メンタルヘルス不調を未然に防止するため

ストレスチェックは、労働者と事業者両方にメンタルヘルス不調予防のための気づきを促すことのできる検査だと言えるでしょう。

参考:e-GOV法令検索「労働安全衛生法」

介護士のストレスチェックが重要な理由

介護士のストレスチェックが重要な理由にはどのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

介護の仕事は感情労働のため

介護の仕事は感情労働で、業務上において感情のコントロールやその場に合わせた適切な表現が必要な労働だと言えます。

その場に応じた適切な感情が仕事上定められており、介護士は自分自身が感じたことではなく、定められた感情を表現することになるためストレスがたまりやすい環境にあると言えるでしょう。

感情労働における感情のコントロールには次のような種類があります。

種類

概要

表層演技

お世辞や愛想笑い、社交辞令など自分の感情とは関係なく相手に示す演技だが自分の本当の感情と異なるため演技を見透かされることもある

深層演技

自分の感情そのものをコントロールして演技すること

 

介護士は介護の現場で働くうちに深層演技を少しずつ身に着けていくことになりますが、これが習慣化すると仕事へのモチベーションが下がり、休日でも心が休まることがないといった問題が発生する場合もあります。

また問題をそのまま放置しておくと、1つの物事に没頭していた人が心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い社会に適応できなくなるバーンアウト、精神疾患の発症など働くのが難しい状態におちいることもあるでしょう。

介護士の限界サインを見逃さないためにも、定期的なストレスチェックは重要だと言えるのです。

ハラスメントの問題が発生しやすいため

画像出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査結果」

画像は2023年に公益財団法人介護労働安定センターが行った介護労働実態調査において、職場で受けたハラスメント、利用者や利用者の家族から受けたハラスメントにはそれぞれどのようなものがあるか聞いた結果です。

企業においてはハラスメントというと従業員からのハラスメントのみですが、介護士の場合は利用者からのハラスメントも受ける可能性があるため、それだけストレスがたまりやすい環境だと言えるでしょう。

また職員からのハラスメントで一番多かったのが精神的な攻撃で7.4%、利用者や利用者の家族から受けたハラスメントで一番多かったのが暴言で21.6%ですが、2つに共通するのは介護士の心を直接傷つけるハラスメントだということです。

ハラスメントへの対策はもちろんですが、介護士への適切なメンタルケアをするためにもストレスチェックをするのは重要だと言えるでしょう。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」

介護サービスの質が低下する可能性があるため

介護士が感情労働やハラスメントで疲弊していくと、モチベーションの低下を引き起こす可能性が高くなりますが、これはそのまま介護サービスの質の低下につながります。

またストレスからバーンアウトや精神疾患を引き起こした場合、働くこと自体が難しくなり利用者が必要な介護サービスを受けられなくなる可能性も高まるでしょう。

このようなリスクを事前に避けるためにも、定期的にストレスチェックをするのは重要だと言えます。

介護事業所におけるストレスチェック導入の流れ

介護事業所でストレスチェックをスムーズに導入するには、どのような流れで行うのが望ましいのでしょうか。

厚生労働省の「ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル」を参考にご紹介します。

導入前の準備

介護事業所においてストレスチェックを導入する前にしてほしい準備は以下の4つです。

  • 介護事業所でストレスチェックを実施するという方針を示す
  • 事業所の衛生委員会でストレスチェックの実施方法を話し合う
  • 決まったことを社内規程として明文化する(内容を従業員に共有する)
  • 実施体制・役割分担を決める

衛生委員会では、主に次のようなことを話し合っておくとよいでしょう。

  • ストレスチェックの担当者を誰にするか
  • ストレスチェックをする時期
  • ストレスチェックシートの内容
  • どんな方法でストレスの高い人を選ぶか
  • 面接指導を誰に申し出るか
  • 面接指導をどの医師に依頼するか
  • 集団分析はどんな方法で行うか
  • ストレスチェックの結果を誰がどのように保管するか

事前準備を丁寧にすると導入がスムーズになるため、決定事項にもれがないかをしっかりと確認するのがおすすめです。

ストレスチェックの実施

以下の流れでストレスチェックを行いましょう。

  1. 職員にストレスチェックシートを記入してもらう
  2. 実施者がストレスチェックシートを回収する
  3. ストレスチェックシートを基に実施者がストレスの程度を評価し、高ストレスで医師の面接指導が必要な職員を選ぶ
  4. 結果を職員に通知する
  5. 結果を実施者が保管する

ストレスチェックシートの回収は第三者や人事権を持つ職員が行うことはできません。

またストレスチェックの結果を事業所が知るには本人の同意が必要なのも覚えておきましょう。

高ストレスと評価された人が不利益を被らないよう、細心の注意を払うことが大切です。

面接指導の実施と就業上の措置

ストレスチェックの結果から高ストレスと評価される職員がいた場合、面接指導やその内容に伴う就業上の措置をする必要があります。

ストレスチェック結果で医師による面接指導が必要とされた職員から、結果を通知して1か月以内に申し出があった場合、申し出の日から1か月以内に面接指導を行わなければなりません。

面接指導が行われた後、担当医師から1か月以内に就業上の措置の必要性の有無とその内容を聞き、それを踏まえた労働環境の改善をしましょう。

また面接指導の結果は事業所で5年間保存する必要があります。

職場分析と職場環境の改善

実施者がストレスチェックの結果を一定規模の集団ごとに集計・分析をし、その結果を踏まえて職場環境の改善を行います。

実施者は質問票の項目別の平均値を求めて比較し、事業所内のストレス状況を客観的に把握しましょう。

ただし、集団の規模が10人未満の場合は個人が特定される可能性があるため、全員の同意がない限り結果の提供を受けてはいけません。

もし職場環境の改善といっても何から始めてよいのかわからない場合は、厚生労働省のホームページに掲載されている「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」に改善の事例が記載されているので、目を通してみるとよいでしょう。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル」

介護事業所で使いたいストレスチェックシート

介護事業所におすすめのストレスチェックシートを3種類ご紹介します。

厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票(57項目)

厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票は、ストレスチェックシートとして利用するのが推奨されているため、そのまま介護事業所で使用するのもよいでしょう。

事前準備の段階で担当者がどのくらいストレスチェックに対して手間や時間をかけられるかは把握できるので、時間がなく最初からストレスチェックシートを作るのが難しい場合は厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票を使うのがおすすめです。

参考:厚生労働省「『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』ダウンロードサイト」

外国語版の職業性ストレス簡易調査票

海外からの留学生を受け入れている介護事業所の場合、外国語版の職業性ストレス簡易調査票を用いるのが便利です。

職業性ストレス簡易調査票は以下の10か国語に翻訳されています。

  • 英語
  • 中国語
  • ベトナム語
  • タガログ語
  • ネパール語
  • ペルシャ語
  • ポルトガル語
  • スペイン語
  • インドネシア語

日常会話に問題がないと日本語のストレスチェックシートでよいのではないかと考えてしまいがちですが、各質問事項の正確なニュアンスを理解して回答をしてもらうためにも、職員の母国語のストレスチェックシートを使うのがおすすめです。

参考:厚生労働省「外国語版の職業性ストレス簡易調査票等」

オリジナルのストレスチェックシート

ストレスチェックシートには法律上、以下の項目が含まれていればよいとされています。

  • ストレスの原因に関する質問項目
  • ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
  • 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

そのため、厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票の内容を自分の介護事業所に合わせて変更して使うのもよいでしょう。

逆に含めるのが不適当な項目は次の通りです。

  • 性格検査
  • 適性検査
  • うつ病検査
  • 希死念慮
  • 自傷行為

介護事業所におけるストレスチェックの目的は職員のストレスの状態を把握し、職場環境の改善につなげることなので、上記の項目はいずれも不適当だとわかります。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル」

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

介護事業所ができるストレスケアとは?

ストレスチェック後に介護事業所としてできるストレスケアには、どのようなものがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

セルフケアのポイントや社内相談窓口を伝える

厚生労働省が運営する働く人向けのメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」には、ストレスチェック後に職員に個人結果を返却する際に合わせて介護事業所が配布できるリーフレットが2つ掲載されています。

「セルフケアのポイント」ではセルフケアとは何かとその目標を示した上で、セルフケアの基本を食事、運動、睡眠、ストレス対処法の4つだとし、その内容について解説しているのです。

一方「相談窓口のご案内」では社内の相談窓口を案内できるだけではなく、「こころの耳」の電話相談、SNS相談、メール相談の連絡先が記載されています。

セルフケアの方法や相談先を提示することで、職員は介護ストレスが限界になる前に適切なサポートが受けられるでしょう。

参考:厚生労働省 はたらく人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳「ストレスチェック制度について」

 

ハラスメント対策を行う

2022年7月に日本介護福祉士会では運営サポーターアンケートの結果として、「介護現場におけるハラスメントの実態と対応策に関する調査」を公表しました。

アンケートで職場に望むハラスメント対応や対策を自由記述で聞いた所、以下のような対策を望む人が多いとわかったのです。

  • ハラスメントに関する家族や社会の理解の促進
  • 退所等の規定化
  • 相談体制の整備
  • 報告しやすい環境の整備
  • 職員間の情報共有
  • 個人で抱え込まない組織的な対応
  • 研修会開催
  • 迅速な対応
  • 法人・施設や管理職の意識改革
  • 指針の可視化
  • 事業所外の相談窓口の整備

ストレスチェックの結果に基づき職員の希望する形でハラスメント対策を行えば、事業所に対するエンゲージメントが高まるため、介護サービスの質の向上や離職率の低下にもつながるでしょう。

参考:日本介護福祉士会 運営サポーターアンケート「介護現場におけるハラスメントの実態と対応策に関する調査」

メンタルヘルス対策の事例を参考に自分の事業所に合った対策を検討する

厚生労働省が運営する働く人向けのメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」には、職場のメンタルヘルス対策への取組事例が掲載されています。

医療・福祉ジャンルの事例も見ることはできますが、他の業種のストレスチェックの生かし方を学ぶのもよいでしょう。

例えば株式会社丸井グループでは、ストレスチェックを「攻めのストレスチェック」と位置づけ、結果を積極的に活用するため毎年取り組み内容を見直し、改善を続けています。

具体的には以下のような取り組みを行いました。

  • 2016年には社員数10名以上の部門、約200か所についてすべて集団分析結果を個別に各社の社長や部門長にフィードバックした
  • 2017年からは集団分析結果にもとづき、ありたい職場に近づくためのアクションを、各部門が主体的に考えて実施した
  • 2018年には一部の部署でアクション検証のための2回目のストレスチェックを半年後に実施し、効果を検証した
  • 2019年からは、ストレス度とワーク・エンゲージメントの偏差値が全国平均を下回る部門のアクションプランに関して対話を行い、アクションがより具体的になるようサポートした

毎年ストレスチェック結果の自社らしい生かし方を検討し続け、根気よくグループ全体に浸透させることで「ありたい職場」に少しずつ近づけていった好事例と言えるでしょう。

参考:厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」

プレゼンス・メディカルでは女性の職場環境改善に取り組んでいます

株式会社プレゼンス・メディカルでは、介護・福祉業界の女性が働きやすく満足できる職場への改善をサポートしています。

具体的な取り組みの1つとして、職場内でのストレス要因や負担を把握し個々のニーズや意見を丁寧に受け止め、効果的なワークライフバランスを実現するための提案を行っているのです。

また事業所にはストレスケアのため職員に対し、どのようなサービスが提供できるのかを検討してもらうようにもしています。

ストレスチェックの結果を最大限に生かし、職場の環境改善につなげたい方は次のページもごらんください。

女性の職場環境改善 | 喀痰吸引等研修の講習・資格・介護・福祉の研修実績|株式会社プレゼンス・メディカル (presence-m.com)

まとめ

この記事では、介護事業所におけるストレスチェックの重要性と、ストレスケアの方法について詳しく解説しています。介護士は感情労働の一環として、業務中に自分の感情を抑え、規定された感情を表現する必要があり、その結果、ストレスが蓄積しやすい環境にあります。さらに、介護士は利用者やその家族からのハラスメントに直面することが多く、これが精神的な負担となることも少なくありません。こうしたストレスが蓄積されると、バーンアウトや精神疾患を引き起こし、介護サービスの質の低下や離職の原因となります。事業所におけるストレスチェックの導入は、こうしたリスクを未然に防ぎ、職場環境を改善するために必要なプロセスです。導入に際しては、準備から実施、結果のフィードバックまでの流れを丁寧に行い、職員のメンタルヘルスを守る体制を整えることが重要です。適切なストレスケアにより、介護士の働きやすい環境が整い、結果的にサービスの質向上と事業所の安定運営が期待されます。


本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

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2025年に向け必要とされている
介護職員の医療的ケア。

2025年に向け必要とされている介護職員の医療的ケア。
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