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事業統合とは?メリットから事例まで
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

2014年、介護・福祉施設の経営課題解決を目的にコンサルティング会社を創業し、認定特定行為業務従事者育成事業をスタート。全国12,500施設、4,000法人超への支援実績を持ち、500名以上の経営者との対話を通じて現場ニーズに応えてきました。2023年AI事業開始、2025年にホールディングス体制へ移行。介護施設経営の安定化を実現するプロフェッショナル人材を育成中。2040年に介護福祉業界で最も影響力を持つ組織となるという目標に向けて、業界全体の発展と未来を切り拓くべく挑戦を続けています。

2025.12.17

事業統合とは?メリットから事例まで

要約:

事業統合は、複数の企業が事業を統合し新体制で再スタートする戦略で、合併や事業譲渡などの法的統合と、持株会社方式などの経営統合に大別されます。介護業界では、国の協働化・大規模化推進、介護事業所の倒産増加、業務の効率化を背景に重要性が高まっています。事業統合は、複数の企業が事業を統合し新体制で再スタートする戦略で、合併や事業譲渡などの法的統合と、持株会社方式などの経営統合に大別されます。介護業界では、国の協働化・大規模化推進、介護事業所の倒産増加、業務の効率化を背景に重要性が高まっています。統合は経営基盤の強化人材の確保サービス品質の向上といったメリットがある一方、組織文化の摩擦労務トラブルのリスクもあります。現状として、社会福祉法人の合併は横ばいですが、倒産増加に伴い事業譲渡・譲受が急増しており、特に財務安定人材確保を目的とするケースが多く見られます。統合を成功させるには、法人の規程・制度の調整関係者への丁寧な説明が重要です。

自分が運営する介護事業所の経営が思わしくないため、何か新しい戦略を考えなければならないけれどよいアイデアがなく困っている人はいませんか?

この記事では、そんな人に知ってほしい事業統合について詳しく解説します。

事業統合とは?

事業統合とは、複数の企業がそれぞれの事業を統合し新しい組織体制で再スタートすることです。

事業統合は大きく法的統合(法的な手続きを通じて統合すること)と経営統合(法的には別のまま経営体制や方針を一本化すること)2つに分類できますが、それぞれで用いられる手法は以下の通りです。

分類

手法

概要

法的統合

合併(吸収合併・新設合併)

l   複数の法人を1つに統合する形式

l   法人格が一体化し、資産・負債・契約・職員などすべてを承継する

事業譲渡

l   特定の事業のみを他法人に譲る形式

l   譲渡対象の事業に関する契約や人材、設備などを引き継ぐ

会社分割

l   法人の一部事業を切り離して新会社に移したり、他法人に承継させたりする形式

l   再編や事業整理の際に活用される

経営統合

持株会社方式

l   複数の法人が共同で持株会社を設立し、グループとして経営方針を統一する形式

l   各法人は独立性を保ちながら連携を強化する

業務提携・共同事業

l   採用・研修・サービス提供などの領域で協力関係を築く形式

実質統合

l   複数の法人が対等な立場で経営権と経営資源を一体化し、単一の経営方針・戦略でグループを運営する形式

介護業界では、202562日に株式会社ケア21が公表した、株式会社あさひから訪問介護事業所2拠点を202561日付けで事業譲受した事例が大きなニュースとなりました。

これは地域での認知度やシェアの拡大、介護サービスの更なる充実を目的として行われましたが、介護業界でも経営戦略の1つとして事業統合を選択肢に入れておくのは重要なことだと言えるでしょう。

参考:株式会社ケア21「株式会社あさひからの事業譲受に関するお知らせ」

事業統合が介護業界で行われる背景

事業統合が介護業界で行われる背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

介護施設・事業所の協働化・大規模化を国が推進している

厚生労働省のホームページでは、小規模経営をしている介護事業所や介護施設が今後安定した事業継続、サービス確保、複雑化したニーズへの対応をするためには協働化・大規模化などによる経営改善の取り組みが必要だとしています。

協働化・大規模化は3段階のステップを踏んで実施されますが、厚生労働省が各段階別に行うサポートは以下の通りです。

段階

サポート内容

Step1】経営課題への気づき

・経営課題や介護施設・介護事業所の属性別に、協働化・大規模化への取り組み事例を作成して周知する

・社会福祉連携推進法人における先行事例集を作成して周知する

・都道府県別における社会福祉法人の経営状況の分析・公表・周知

・各都道府県に2023年より設置されるワンストップ窓口における相談対応

・よろず支援拠点(中小企業・小規模事業者のための経営相談所)における相談対応や、独立行政法人福祉医療機構が行う経営支援の周知徹底

Step2】協働化・大規模化などに向けた検討

・第三者からの支援・仲介を受けた場合、社会福祉法人において合理性があると判断できれば必要な経費を支出できることの明確化

・社会福祉法人の合併手続きの明確化

・社会福祉連携推進法人の申請手続きの明確化

・役員の退職慰労金に関するルールの明確化

Step3】協働化・大規模化などの実施

・小規模法人等のネットワーク化に向けた取り組みへの支援

・複数の介護事業者が協働して行う職場環境改善への支援

・社会福祉連携推進法人の立ち上げに向けた取り組みへの支援

・社会福祉法人の合併の際に必要な経営資金が不足している場合、独立行政法人福祉医療機構が優遇融資を行う

上記のような段階別の細やかな支援を受けられるとわかれば、経営課題の解決のために事業統合を検討してみようと考える介護事業者が少しずつ増加するのではないでしょうか。

参考:厚生労働省「厚生労働分野におけるデジタル行財政改革」

参考:厚生労働省「介護施設・事業所の協働化・大規模化」

介護事業所の倒産が増加している

画像出典:株式会社東京商工リサーチ「2024年「介護事業者」倒産が過去最多の172件 「訪問介護」が急増、小規模事業者の淘汰加速」

2024年に株式会社東京商工リサーチが行った「老人福祉・介護事業」の倒産調査において、倒産件数を調べたところ、過去最高の172件という結果が出ました。

また従業員数別では5人未満が103件、5人以上10人未満が40件、10人未満が143件で、介護事業者の倒産は小規模事業者が大半を占めていることがわかったのです。

このことから倒産防止を目的として、事業統合を考える小規模事業者は今後増加すると予想されます。

介護事業者の倒産についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。

2024年は過去最多の172件を記録しました。人手不足、利用者からの対価回収の困難さなどによる売上不振、運営コストの上昇

業務の効率化が進んでいる

画像出典:厚生労働省「(参考)介護テクノロジー利用の重点分野の全体図と普及率」

介護の現場においては、すでにDXの取り組みが行われ業務の効率化が進んでいます。

具体的には、介護テクノロジーの利用において見守り・コミュニケーションを支援する機器の普及率が30%となり、介護ロボットによる生産性向上の取り組みにおいては実証実験が毎年積極的に行われているのです。

このことから、介護事業所の経営も今後は事業統合やAIの活用などでより効率化が求められていくでしょう。

参考:厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」

参考:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」

事業統合を介護業界で行うメリット

事業統合を介護業界で行うメリットは次の通りです。

項目

概要

経営基盤の強化

複数拠点やサービスを統合することで、収益の分散リスクを下げられる

人材の確保・育成

従業員の異動や研修制度を整備しやすくなり、キャリア形成と人材の定着につながる

業務の効率化・コスト削減

事務処理、情報システム、人事・経理などの共通業務を一本化して運営コストを削減できる

介護サービスの品質向上

ノウハウを共有できるため、利用者対応やケアプラン作成の質が全体的に上がる

地域包括ケアへの対応力アップ

在宅介護や通所介護など複数のサービスを連携させ、地域全体で包括的な支援が可能となる

行政・金融機関からの信頼性向上

事業統合によって経営規模が大きくなると、補助金や融資の審査で有利になる可能性がある

介護事業はコストの増加や人材不足が経営課題であることから、事業統合によるメリットは大きいと言えるでしょう。

事業統合を介護業界で行うデメリット

事業統合を介護業界で行うデメリットは以下の通りです。

項目

概要

一時的な介護サービスの質の低下による信頼低下

システム統合や人員の再配置などにより介護事業所の雰囲気が変化するため、利用者やその家族が不安を感じやすい

組織文化や現場の摩擦

統合先と統合元で運営方針や業務のやり方が異なる場合、従業員同士の摩擦や不満が生じやすい

労務・契約上のトラブルの発生

労働条件の変更や雇用形態の整理に伴い、労使トラブルが発生するリスクがある

上記のデメリットは必要な情報を開示し関わる人に誠実に説明を行うことで解消できるため、事業統合を行う際は必要なコミュニケーションを省略せず関係者全員が納得できるように配慮しましょう。

事業統合の介護業界における現状

事業統合の介護業界における現状について、社会福祉法人の合併、事業譲渡と事業譲受の実施状況の2つの観点からご紹介します。

社会福祉法人における合併の実施状況

 

画像出典:厚生労働省「介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等」

厚生労働省社会・援護局、老健局、障害保健福祉部が公表した「介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等」の資料において社会福祉法人における合併認可件数と合併目的を調査したところ、画像のような結果となりました。

合併認可件数は調査開始の2018年以来、10件以上20件以下の間で横ばいを続けています。

一方合併の目的は「財務状態の安定のため」が62.1%、「人材確保、育成のため」が48.3%を占め、介護業界において合併することで解決したい経営課題は財務状況の悪化と人材不足であるのがわかります。

社会福祉法人における事業譲渡と事業譲受の実施状況

画像出典:厚生労働省「介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等」

「介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等」の資料において、社会福祉法人における事業譲渡と事業譲受の実施状況を調べたところ、上記画像のような結果でした。

調査開始の2019年以来横ばいを続けていた事業譲渡または譲受のために認可や届出を受けた件数は、2022年度に急増しています。

2022年度は介護事業者の倒産が急増した年でもあり、事業譲渡した目的も「財務状態の改善のため」が31.8%を占めていることから、介護事業者の中で倒産への危機感から何らかの手を打たなければならないという考えが広まったのかもしれません。

事業統合を介護業界で行った事例

事業統合を介護業界で行った事例を2つご紹介します。

合併を行った事例

山口県宇部市では、公設民営で長い歴史を持つ法人を20年来の実績ある大規模法人が吸収合併し、社会福祉法人むべの里光栄が誕生しました。

この2つの法人は以前から現場での交流や協働を行ってきた関係だったため、一方の収益改善や運営立て直しが経営課題となった際に、吸収合併が提案されたのです。

また展開する介護サービスや地域に重複がなかったため、吸収合併によって組織運営・管理の改善ができればスムーズに経営が軌道に乗ると見られていました。

吸収合併を従業員に伝えたのは半年前でしたが繰り返し周知と説明を行い、特に管理職には経営陣から個別説明を行うなど誠意ある対応を心がけたそうです。

その結果吸収合併は成功し、以下のような効果が見られました。

・運営体質の改善、仕事や働き方への意識改革につながった

・人材が定着するようになった

・合併に伴うセントラルキッチン化により、食事にかかるコストが適正化できた

・初任者向けの資格取得講座の開講、海外人材を採用・受け入れする部署の創設、災害時の職員派遣など、合併前にはできなかった取り組みが可能となった

・財政規模が大きくなり安定したため、地域や地方自治体からの要望にも応えられる余力ができた

共同事業をまず行ってから吸収合併をしたことで、スムーズな事業統合につながった好事例だと言えるでしょう。

業務提携・共同事業を行った事例

新潟県十日町では社会福祉法人11法人が、2022年に一般社団法人「妻有地域メディカル&ケアネットワーク」を設立し、人材確保などの課題や自治体への要望などについて年3回協議を実施することとしました。

地域全体で人材不足による介護サービスの提供の維持が困難になっていたことから、連携して課題を解決するのを目的として一般社団法人を設立したのです。

協働を進めていく中で各社会福祉法人のノウハウや知見が共有でき、単独の法人では開催できなかったようなイベントを行って介護の魅力を発信できるのが大きなメリットとなりました。

人材不足を地域共通の課題としてとらえ、解決に向けて積極的に事業統合に取り組んだ好事例だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「介護現場の働きやすい職場環境づくりに向けた 経営の協働化・大規模化 事例集」

事業統合の介護業界における課題

画像出典:厚生労働省「介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等」

事業統合を介護業界で行う場合、どのような課題があるのでしょうか。

「介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等」の資料において、合併と事業譲渡などにおける困難さや課題を調べたところ、上記画像のような結果でした。

合併における困難さや課題で「最も重要な課題であった」と回答した介護事業者が23.5%で同率1位だったのが「法人の規程や制度の統合・調整」と「許認可に関する行政との調整」だったのです。

そのためもし事業統合の中で合併を考えているなら、この2つに時間を多めに割き各担当者と丁寧なコミュニケーションを行うのが望ましいでしょう。

一方事業譲渡などにおける困難さや課題では「法人の規程や制度の統合・調整」と「利用者への説明」が23.3%で同率1位ですが、「全体の進め方・スケジュールの立て方」が20.9%、「従業員の承継、雇用確保や処遇、従業員との交渉や調整」が18.0%と近い数値で分散しているのが特徴的です。

このことから事業譲渡や事業譲受を考えているなら、まずは余裕のあるスケジュールを立て、不測の事態が起こっても対応できる体制を整えておくのがよいでしょう。

事業統合を介護業界でお考えなら株式会社プレゼンス・メディカルにご相談ください

事業統合を介護業界においてお考えの方は、株式会社プレゼンス・メディカルにご相談ください。

株式会社プレゼンス・メディカルでは法的統合・経営統合どちらを行う上でも下準備としてやっておきたい職場環境改善のコンサルティングサービスを行っています。

職場環境改善をして多様な人材や考え方を取り入れられるようにしておくと、コミュニケーションコストが削減でき事業統合もスムーズに進むでしょう。

株式会社プレゼンス・メディカルにおいて行っている職場環境改善の施策は次の通りです。

・女性のキャリア継続支援コンサルティング

・勤務時間の柔軟化コンサルティング

・育児、介護支援プログラムの導入

・女性の管理職、リーダー候補向けメンター制度の導入

・ハラスメント防止と心理的安全性の向上

・多様な人材のための採用、定着支援

・多文化共生のためのコミュニケーション・トレーニング

・公正・公平な人事評価制度の再構築

・個々のキャリアパスとスキルアップ支援

・多様性を活かしたチームビルディング

事業統合前・事業統合後双方で役立つ職場環境改善に取り組んでみたい方は、次のページもごらんください。

「介護・福祉業界の多様な人材が働きやすく満足できる職場へ」結婚、出産、育児といったライフイベントとキャリアを両立が課題

まとめ

この記事は、介護業界における「事業統合」の意義、背景、メリット、課題を詳細に解説しています。事業統合は、複数の法人が事業を統合し、法的統合(合併、事業譲渡など)または経営統合(持株会社方式、共同事業など)として新しい組織体制を築くことです。介護業界で統合が進む背景には、①厚生労働省による協働化・大規模化の推進②小規模事業者の倒産件数増加③DXによる業務効率化への要求があります。統合のメリットは、経営基盤の強化人材の確保・育成業務効率化サービス品質向上が挙げられます。一方で、組織文化の摩擦利用者信頼の一時的な低下がデメリットとなり得ます。社会福祉法人の現状を見ると、財務安定人材確保を目的とした合併・事業譲渡が多く、特に倒産増加を背景に事業譲渡・譲受が急増しています。成功事例として、合併による運営体質改善や、共同事業による地域課題解決の好事例が紹介されています。統合を成功させるための課題は、法人の規程・制度の統合許認可に関する行政との調整であり、丁寧なコミュニケーションと計画的な進行が不可欠です。事業統合を検討する際は、メリットを最大化し、課題を最小限に抑えるため、専門的なコンサルティングを活用することが有効であると結ばれています。


本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

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