介護事業所を開業するには?受けられる支援から相談先まで
要約:
介護事業所の開業には、事前準備から法人格取得、指定申請まで多くのステップがあります。まず介護保険サービスと介護保険外サービスの種類を理解し、地域の高齢化率や人材確保の状況を踏まえて開業場所を選ぶことが重要です。法人格の取得後は、自治体の指定基準を満たし、指定前研修や申請手続きを進めます。また、助成金・創業融資・制度融資などの支援制度を活用することで開業の負担を軽減できます。相談先が分散しているため、ワンストップで相談できる商工会議所や専門支援サービスの活用も有効です。
日本では今後さらに高齢化が進むことから、介護業界にビジネスチャンスがあると感じるけれど開業するには何から始めればよいかわからず困っている人はいませんか?
この記事では、介護事業所を開業する際に受けられる支援から相談先まで詳しくご紹介します。
介護事業所を開業するまでの流れ
介護事業所を開業するまでの流れを事前準備、法人格の取得、指定申請の3つのステップにわけてご紹介します。

事前準備をする
介護事業所を開業するためにしておきたい事前準備を3つご紹介します。
介護保険サービスの種類について知る
介護保険サービスとは利用者が介護保険を利用して受ける介護サービスのことで、以下のような種類があります。
|
項目 |
概要 |
|
居宅介護支援 |
・ケアマネジャーが、利用者の状況に応じた介護サービスを利用するためのケアプランを作成するサービス ・適切なサービスが提供されるよう、ケアマネジャーが事業者や関係機関との連絡・調整を行う |
|
訪問介護 |
・訪問介護員が訪問して身体介護や生活援助を行うサービス ・通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助サービスを提供する場合もある |
|
訪問入浴 |
・看護職員と介護職員が利用者の自宅を訪問し、持参した浴槽で入浴の介護を行うサービス |
|
訪問看護 |
・看護師などが疾患のある利用者の自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行うサービス |
|
訪問リハビリ |
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが利用者の自宅を訪問し、リハビリテーションを行うサービス |
|
夜間対応型訪問介護 |
・夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問するサービス ・「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがある |
|
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
・定期巡回や随時通報への対応など、24時間365日利用者のニーズとタイミングに応じて柔軟に提供するサービス ・介護と看護の一体的なサービス提供も受けられる |
|
通所介護 |
・通所介護施設の利用時間内において食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを利用者のニーズに応じて提供するサービス |
|
通所リハビリ |
・通所リハビリテーションの施設において、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供するサービス |
|
地域密着型通所介護 |
・地域密着型通所介護施設の利用時間内において、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを利用者のニーズに応じて提供するサービス |
|
療養通所介護 |
・療養通所介護の施設において、食事や入浴などの日常生活上の支援、機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供するサービス |
|
認知症対応型通所介護 |
・認知症の利用者に向けて、通所介護の施設において食事や入浴などの日常生活上の支援、機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供するサービス |
|
小規模多機能型居宅介護 |
・利用者の選択に応じて、通所を中心にショートステイや自宅訪問を組み合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行うサービス |
|
看護小規模多機能型居宅介護 |
・利用者の選択に応じて、通所を中心にショートステイ、自宅訪問、訪問看護を組み合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行うサービス |
|
短期入所生活介護 |
・介護老人福祉施設などが、常に介護が必要な人の短期間の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練などを提供するサービス |
|
短期入所療養介護 |
・医療機関、介護老人保健施設、介護医療院が日常生活上の世話や、医療、看護、機能訓練などを提供するサービス |
|
介護老人福祉施設 |
・入所者ができるだけ自宅での生活に復帰できるよう、入浴や食事などの日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話などを提供するサービス |
|
介護老人保健施設 |
・自宅生活への復帰を目指す入所者に対し、必要なリハビリテーション、医療、介護などを提供するサービス |
|
特定施設入居者生活介護 |
・指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームなどが、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを提供するサービス |
|
介護医療院 |
・長期にわたって療養が必要な人の入所を受け入れ、療養上の管理、看護、介護、機能訓練などを提供するサービス |
|
認知症対応型共同生活介護 |
・認知症の利用者に対し、グループホームにおいて食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを行うサービス |
|
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
・入所定員30人未満の介護老人福祉施設が、常に介護が必要な人の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話などを提供するサービス |
|
地域密着型特定施設入居者生活介護 |
・指定を受けた入居定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなどが、食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練などを提供するサービス |
|
福祉用具貸与 |
・指定を受けた事業者が適切な福祉用具を選ぶための援助・取り付け・調整などを行い、福祉用具をレンタルするサービス |
|
特定福祉用具販売 |
・福祉用具販売の指定を受けた事業者が、入浴や排泄などのレンタルになじまない福祉用具を販売するサービス |
介護保険サービスの種類を知り、自分が競合他社と比較して地域でどのようなサービスを提供すれば差別化できるかを考えてみるのがおすすめです。
参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム「公表されている介護サービスについて」
介護保険外サービスの種類について知る

介護保険外サービスとは利用者が介護保険を利用せずに自己負担で受ける介護サービスのことで、市区町村、社会福祉協議会、民間などさまざまな運営母体があるため市場も拡大傾向にあるのが特徴的です。
介護保険外サービスの主な種類は次の通りです。
|
運営元 |
サービスの種類 |
公式ページ例 |
|
市区町村 |
・紙おむつの助成 ・介護理容や介護美容 ・寝具乾燥消毒サービス ・配食サービス |
・荒川区 |
|
社会福祉協議会 |
・住民参加型在宅福祉サービス ・配食サービス |
・目黒区社会福祉協議会 |
|
シルバー人材センター |
・福祉・家事援助サービス |
・東京都シルバー人材センター連合 |
|
民間企業 |
・旅行サービス |
・東京トラベルパートナーズ |
介護保険サービスが「日常生活の維持」を目的とするのに対し、介護保険外サービスは「生活の質(QOL)の向上」を目的とするサービスであるため、より自由な発想で事業展開がしやすい分野と言えるでしょう。
介護事業所を開業するための場所を決める

画像出典:厚生労働省社会・援護局「介護人材確保の現状について」
介護事業所を開業する場所を決める時は、顧客となる利用者の数と職員として働いてくれる人材が確保できるかどうかを意識して選びましょう。
2024年に内閣府が公表した令和6年版高齢社会白書において、地域別の高齢化率を調べたところ最も高いのが秋田県で39.0%、最も低い東京都で22.8%でした。
高齢化率の高い地域ほど介護を必要とする人も増加するため、効率よく集客できるでしょう。
一方2025年に厚生労働省が公表した「介護人材確保の現状について」において、介護分野の有効求人倍率を調べたところ、全国平均は3.77倍でしたが、東京都は約2倍となる7.39倍でした。
募集をかけても誰も応募してくれないという状況を避けるためにも、有効求人倍率の低い地域で開業するのは望ましいことだと言えるでしょう。
参考:内閣府 高齢社会白書 「第1節 高齢化の状況(4)地域別に見た高齢化」
法人格を取得する

介護保険サービスを事業として行う場合は、原則として法人格の取得が必要とされています。
法人格とは会社や団体が個人とは別の存在として、法律上の権利や義務を持つための資格のことです。
法人格を取得することで介護保険サービスを行うのに必要な利用者との契約・銀行口座の開設・職員の雇用などができるようになります。
介護事業所を開業する場合によく選ばれる法人格の取得の流れは以下の通りです。
|
法人格の種類 |
取得の流れ |
|
株式会社 |
1. 基本事項を決める 2. 定款作成 3. 公証役場で定款の認証を受ける 4. 資本金の払い込み 5. 登記書類の作成 6. 法務局で設立登記 |
|
合同会社 |
1. 基本事項を決める 2. 定款作成 3. 資本金の払い込み 4. 登記書類の作成 5. 法務局で設立登記 |
|
社会福祉法人 |
1. 設立構想の策定 2. 地方自治体との事前協議 3. 設立認可の申請 4. 設立認可の取得 5. 法務局で設立登記 |
|
NPO法人 |
1. 設立メンバーを集める(原則10人以上) 2. 定款作成 3. 所轄庁に設立認証を申請 4. 縦覧(公開)期間を経る 5. 認証を受ける 6. 法務局で設立登記 |
法律的な手続きに自信がない場合は法人登記の専門家である司法書士、書類の提出に自信がない場合は行政への書類提出の専門家である行政書士にそれぞれ相談しましょう。
地域の司法書士を探したい場合は日本司法書士会連合会のホームページの「しほサーチ」、行政書士を探したい場合は日本行政書士会連合会の「行政書士会員検索」を用いると便利です。
指定申請を行う
指定申請とは介護事業所として介護保険サービスを提供するために、地方自治体から基準を満たしているかどうかの認可を受けるための手続きのことです。
地域や行いたい介護サービスによって申請窓口や手続きの方法が異なりますが、標準的な流れをご紹介します。

指定基準を満たしているか確認する
指定申請をする前に、自分の運営する介護事業所が指定基準を満たしているか確認しましょう。
指定基準とは厚生労働省令を基に都道府県条例などで定められた介護事業所に必要な人員、設備、運営方法に関する基準のことで、サービス別で以下のように分かれています。
|
介護サービス |
指定基準 |
|
指定居宅介護支援など |
|
|
指定居宅サービスなど |
|
|
指定地域密着型サービス |
|
|
介護老人保健施設 |
|
|
指定介護老人福祉施設 |
書類がそろっていても基準を守らなければ指定申請をしても認可が下りないため、十分な注意が必要です。
指定前研修を受ける
指定前研修とは、介護事業所として指定を受ける前に地方自治体が実施する説明会や研修に参加し、制度や運営上のルールを学ぶための場です。
自治体によっては指定前研修の受講が指定申請の必須条件となっている場合もあります。
例えば東京都内で指定前研修を受講したい場合、公益財団法人東京都福祉保健財団のホームページで研修内容、申込方法、スケジュール、注意事項などが詳しく案内されています。
自分の介護事業所を開設したい地域の指定前研修はどのような形で行われているのかを、あらかじめ確認しておくことが大切です。
指定申請を行う
指定申請の流れは地方自治体によって異なりますが、東京都の場合は以下のようになっています。
- (指定予定日の4ヶ月前までに)新規指定前研修の申し込みをする
- 新規指定前研修を受講する
- (指定予定日の2ヶ月前の15日までに)新規指定申請書の提出・受理を経て審査へ
- 基準を満たした場合、指定介護サービス事業所として指定を受けられる(指定申請が受理された月の翌々月1日付)
自分の介護事業所を開設したい地域の指定申請の流れについて、あらかじめ理解しておくことが重要です。
参考:公益財団法人東京都福祉保健財団「新規に介護保険事業者として指定申請をお考えの方へ」
介護事業を開業する時に受けられる支援

介護事業を開業する時に受けられる支援を4つご紹介します。
助成金の交付
介護事業所の開業によく使われる助成金には、「高齢者向け新ビジネス創出支援事業」や「創業助成事業」があります。
いずれも要件を満たすと所定の助成率に応じた助成金が受け取れるというもので、2025年度分はいずれも募集終了していますが、創業助成事業は特に平成29年度より毎年募集しているため来年度も募集される可能性があるでしょう。
介護事業を開業する際には、対象となる助成金がないかチェックしてみることが大切です。
参考:公益財団法人東京都中小企業振興公社「高齢者向け新ビジネス創出支援事業」
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫では新たに事業を始める人と事業開始後税務申告を2期終えていない人を対象に創業融資を行っています。
創業融資を受けるメリットは次の通りです。
・無担保・保証人なしで融資を受けられる
・利率を一律0.65%引き下げてもらえる
・設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内と長期での返済が可能
開業資金が足りず助成金の条件を満たせない場合は、一般の融資より条件が有利な創業融資を検討してみましょう。
地方自治体の制度融資
地方自治体の制度融資とは、その地域の中小企業が金融機関からの融資を受けやすくするために地方自治体、地域の信用保証協会、指定金融機関の三者協調の上で成り立っている融資制度のことです。
地域の信用保証協会は、経営者の人間性、資金の使途、返済能力などを総合的に判断して保証の諾否や保証金額を決定します。
開業資金が足りない時すぐに金融機関に駆け込むのではなく、まず制度融資を検討してみるのがおすすめです。
相談窓口
介護の開業に関する公的な相談の総合窓口はありません。
例えば東京都での指定申請なら公益財団法人東京都福祉保健財団、助成金なら各助成金の問い合わせ窓口といった形で相談先が細かく分かれているのです。
そのためワンストップで開業の相談をしたいなら日本商工会議所の経営相談がおすすめです。
商工会議所では地域の中小企業のサポートを行っているため、全国515の拠点で経営相談員が相談を受けてくれるのです。
また相談内容に応じて中小企業診断士、社労士、弁護士、税理士、ITの専門家、弁理士などの専門家が相談に乗ってくれます。
創業や資金調達の相談をしたい人は、まず地域の商工会議所に足を運んでみましょう。

株式会社プレゼンス・メディカルはワンストップで介護サービス専門の創業相談をお受けします
株式会社プレゼンス・メディカルはワンストップで介護サービスの創業相談をお受けいたします。
介護業界に参入しても制度や業界の慣習を知らず、相談先もないためよいビジネスモデルがあっても失敗してしまった事例は数多く存在します。
このような課題を解決するために、株式会社プレゼンス・メディカルでは介護業界への参入時に伴走し、現状分析から改善提案までをワンストップで行う「現状分析・戦略設計サービス」をリリースしました。
介護業界に新しい風を巻き起こしたいという意欲のある方は、ぜひ株式会社プレゼンス・メディカルまでお問い合わせください。
お問い合わせ | 喀痰吸引等研修の講習・資格・介護・福祉の研修実績|株式会社プレゼンス・メディカル
まとめ
介護事業所を開業するには、まず介護保険サービスと介護保険外サービスの特徴を理解し、自社が提供するサービスの方向性を明確にすることが重要です。地域の高齢化率や介護人材の有効求人倍率を確認し、利用者と職員の確保が見込めるエリアを選ぶことも成功の鍵となります。法人格を取得した後は、自治体が定める指定基準を満たし、指定前研修や申請手続きを計画的に進める必要があります。さらに、助成金や創業融資、制度融資などの支援制度を活用することで、開業資金の負担を軽減できます。相談窓口が分散しているため、商工会議所などのワンストップ相談を利用するとスムーズです。介護業界は制度が複雑で専門知識も求められるため、専門家の支援を受けながら準備を進めることで、より確実な開業が実現できます。
本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

