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身体拘束廃止未実施減算とは?要件と適用されないポイントを解説
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

2014年、介護・福祉施設の経営課題解決を目的にコンサルティング会社を創業し、認定特定行為業務従事者育成事業をスタート。全国12,500施設、4,000法人超への支援実績を持ち、500名以上の経営者との対話を通じて現場ニーズに応えてきました。2023年AI事業開始、2025年にホールディングス体制へ移行。介護施設経営の安定化を実現するプロフェッショナル人材を育成中。2040年に介護福祉業界で最も影響力を持つ組織となるという目標に向けて、業界全体の発展と未来を切り拓くべく挑戦を続けています。

2026.03.02

身体拘束廃止未実施減算とは?要件と適用されないポイントを解説

 

要約:
身体拘束廃止未実施減算とは、身体拘束の廃止・防止に向けた指針策定や研修、委員会開催、記録体制の整備などが不十分な場合に介護報酬が減算される制度です。2024年度の報酬改定で新設され、所定単位数の100分の1が減算対象となります。緊急やむを得ない場合の3要件や必要手続きを正しく理解し、組織として判断・記録できる体制を整えることが重要です。尊厳を守りながら減算リスクを回避するポイントを解説します。

介護事業所を運営していく中で利用者への身体拘束をしないように心がけているものの、ルールを守らないと介護報酬が減算されると聞き驚いている人はいませんか?

この記事では、身体拘束廃止未実施減算とは何かから適用されないポイントまで詳しく解説します。

身体拘束とは?

身体拘束とは何かを再確認する利用者と女性介護士、男性所長

身体拘束とは利用者本人の行動の自由を制限することです。

具体的には例として以下のような行為が挙げられます。

  • 利用者が一人で自由に歩き回れないよう車いす・いす・ベッドに身体を縛り動けなくする
  • ベッドからの転落を防ぐため身体を縛り動けなくする
  • ベッドから降りられないようにするため周囲を外せない柵などで囲み、車いすや杖なども遠ざけておく
  • 点滴や経管栄養などの管を勝手に抜かないようにするため、腕や足を縛り動けなくする
  • 管の破損や皮膚を傷つける行為を防止するため手袋などをはめて手や指の動きを制限する
  • 車いすからの落下や職員が予想していない不意の立ち上がりを防ぐためY字型拘束帯、腰ベルト、車いすテーブルなどを用いて動けなくする
  • 立位が取れる利用者が立つのを妨げるようないすを使用する
  • 脱衣やオムツ外しができないようにするため、容易に着脱できない介護衣(つなぎ服)を着せる
  • 周囲の利用者への迷惑行為を防ぐために、身体を拘束し動けなくする
  • 行動を落ち着かせるために、メンタルの薬を過剰に内服させる

介護の現場では常に人手が足りず、利用者の見守りにかけられる時間には限界があります。

そのため事業を運営する中では利用者、家族、職員といった関係者と十分にコミュニケーションを取った上で、どのような方法で身体拘束を抑制するかを考える必要があります。

参考:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」

身体拘束廃止未実施減算とは

身体拘束廃止未実施減算とは、介護事業所において身体拘束の廃止・防止に向けた体制の整備や取り組み(基本方針の策定、職員への周知、記録や検討体制の構築など)が適切に実施されていない場合に、介護報酬が減算される制度です。

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定において新設され、介護報酬における所定単位数の100分の1にあたる単位数が減算される仕組みとなっています。

せっかく介護サービスを行って得た介護報酬を減らされないためにも、身体拘束廃止未実施減算の適用対象にならないようにすることが大切です。

参考:厚生労働省 老健局「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 

身体拘束廃止未実施減算が適用される要件

身体拘束廃止未実施減算は、不要な身体拘束の抑制を目的として以下の取り組みが適切に実施されていない場合に適用される可能性があります。

  • 不要な身体拘束の抑制を目指すための指針を策定する
  • 3か月に1回以上不要な身体拘束の抑制対策を検討する委員会を開催し、検討内容を必ず職員に周知する
  • 職員に対し、不要な身体拘束の抑制を実現するための研修を定期的に実施する
  • 身体拘束を行う場合には、利用者の様子、身体やメンタルの状態、身体拘束を行った時間、緊急でやむを得ない理由を記録に残す

指針の策定、研修、記録ルールの徹底と、介護事業所の運営者が行うには手間や時間がかかる要件が多いのが特徴的です。

しかしどの要件も介護事業所の職員が個人の判断で不要な身体拘束を行うのを防ぎ、組織として適切な介護サービスを提供するために必要であることから、前向きに取り組むことが大切です。

参考:厚生労働省 老健局「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」

身体拘束を行う緊急やむを得ない場合の対応

介護の現場において緊急やむを得ない場合に身体拘束を行う時は、介護事業所としてどのような対応が必要となるのでしょうか。

「緊急やむを得ない場合の3つの要件」「緊急やむを得ない場合に必要な手続き」「緊急やむを得ない場合に記録する事項」の3つの観点からご紹介します。

緊急やむを得ない場合の3つの要件

緊急やむを得ない場合の3つの要件を示す図解

画像:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」

緊急やむを得ない場合とは、上記画像の3つの要件をすべて満たすと評価された状態のことです。

要件の概要と評価のポイントは以下の通りです。

要件

概要

評価のポイント

切迫性

利用者本人や他の利用者などの生命や身体が危険にさらされる可能性が大きい

  • 身体拘束をしない場合、生命や身体がどのような危険にさらされるか
  • 上記はどのような根拠から言えるか
  • 関係機関や医療職はどのような見解を持っているか

非代替性

身体拘束や行動制限を行う以外に代わりの方法がないこと

  • 身体拘束や行動制限をせずにケアを行う代わりの方法を精査したか
  • 複数の職員や多職種で代わりの方法の精査を行ったか
  • 代わりの方法でケアを行った結果について適切に検討したか
  • 外部の有識者や外部機関に代わりの方法の精査について相談できるか

一時性

身体拘束や行動制限は一時的であること

  • 利用者本人の現況に応じて最も短い拘束期間を想定した上で、具体的な時間を決めたか
  • 関係者全員で身体拘束をするという結論を出したか

 

要件の内容や評価のポイントを詳細に確認すると、上記3つの要件を確実に満たす事例というのはそれほど多くないのがわかるのではないでしょうか。

事例が少ないからこそ難しい、緊急時に身体拘束をするかどうかの判断を個人に委ねないためにも、外部の相談先や専門職との連携体制をあらかじめ決めておくことをおすすめします。

緊急やむを得ない場合に必要な手続き

緊急やむを得ない場合に必要な手続きをする際には、以下の4つの点に留意しましょう。

 

留意点

確認のポイント

関係者全員で検討を行う

  • 関係者全員が参加した会議において現況が要件を満たすかどうかの評価を行っているか
  • 要件を満たさなくなった時点で、身体拘束を止めるかどうかについても同じ形で検討されているか

緊急やむを得ない場合の三つの要件を満たすかを慎重に検討する

  • 関係者全員が「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件をすべて満たす事例は限られるという認識を共有できているか
  • 検討時家族や職員の感情、安全性を考慮しているか
  • 代わりの方法を複数試し、出た結果を適切に検討した記録があるか
  • 介護に関する専門知識を家族が必ずしも持っていないことを考慮した上で、非代替性の検討が行われているか

本人や家族に対しできるだけ詳しく説明を行う

  • 本人に対しできるだけ詳しく説明を試みているか
  • 認知症の利用者の場合、振る舞いや言動、顔つきの変化も意思表示として最大限受け入れているか
  • 身体拘束を実施した時点で、個別に説明を行っているか
  • 家族の感情にも配慮した説明を行っているか
  • マニュアルや研修などを通して事業所全体に上記の説明方法と説明時の留意点が浸透しているか

三つの要件の再検討と要件を満たさなくなった場合の身体拘束の終了

  • 時間が経過し三つの要件を満たさなくなった時点で、すぐに身体拘束を止める必要があるのを関係者全員が共有しているか
  • 身体拘束を一時的に中止し、様子観察をするといった試みに取り組んでいるか
  • 様子観察を頻回に行っているか
  • 上記の結果を、関係者全員で共有し再検討しているか

4つの手続きは一見複雑な内容に見えますが、医療におけるインフォームドコンセントの考え方や、介護現場で重視されるチームケアの視点に基づいて整理されていることがわかります。

介護事業所として、身体拘束を行うかどうかの評価を職員個人にゆだねるのではなく、複数の関係者で協議して決める体制作りが重要です。

緊急やむを得ない場合に記録する事項

身体拘束を行う場合には、身体拘束時の現況、行った期間、利用者の心身の現況、緊急でやむを得ない理由を記録することとなっています。

記録内容を確認する際は、次の点を押さえておくとよいでしょう。

  • 要件を満たすと評価した根拠を具体的に記録しているか
  • 再検討を行った時点から新しい記録を加えているか
  • 今後改善の見込みがあるケアとは何かが記載されているか
  • 利用者本人の現況や、家族の考えについての記載があるか
  • 認知症などの利用者においては、身体拘束への理解を関係者全員で評価したか

身体拘束を減らすためには、関係者全員がその利用者についてさまざまな角度から分析するための客観的な事実を必要とします。

そのため記録は正確に、今後の検討に役立つ内容を意識して作成しましょう。

参考:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」

身体拘束廃止未実施減算が注目される背景

身体拘束廃止未実施減算が注目される背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

施設における高齢者虐待の増加

厚生労働省「令和6年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」から介護サービス従事者による高齢者虐待の相談・通報件数、虐待判断件数のグラフ

画像出典:厚生労働省「令和6年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」

2024年度(令和6年度)に厚生労働省では高齢者虐待の防止を目的として、介護サービス従事者による高齢者虐待の相談・通報件数、虐待判断件数を公表しました。

相談・通報件数は2023年度(令和5年度)と比較して192件(5.6%)増加して3,633件、虐待判断件数は97件(8.6%)増加して1,220件となり、いずれも調査開始の2006年度(平成18年度)以来最も高い件数となりました。

身体拘束は高齢者虐待の一形態と位置づけられています。

そのため、身体拘束廃止未実施減算が適用されない体制を整えることは、介護事業所として虐待が起こりにくい環境づくりにつながると言えるでしょう。

高齢者の尊厳の保持が重要視されるようになったため

日本国憲法13条には、「すべて国民は、個人として尊重される」との記載があります。

これは国民がどのような状態であっても、その人の尊厳が守られなければならないことを示しています。

身体拘束は本人の行動の自由を制限する行為で、その人の尊厳を損なうおそれがあります。

介護事業所として身体拘束廃止未実施減算が適用されない体制を整えることは、高齢者の尊厳を守ることにつながると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」

身体拘束がもたらす弊害が明らかになったため

近年、身体拘束は筋力低下などの身体的な影響に加え、認知症の進行といった精神的な影響や、職員の士気低下などの社会的な影響をもたらすことが明らかになってきました。

また利用者に身体拘束による上記のような障害が現れた結果、更なる身体拘束を生みだす悪循環に陥ることも指摘されています。

介護事業所がこのような状態に陥らないためにも、身体拘束廃止未実施減算が適用されない体制作りに取り組むことは重要だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」

身体拘束廃止未実施減算が適用されない事業所作りのポイント 

身体拘束廃止未実施減算が適用されない事業所作りのポイントを3つご紹介します。 

身体拘束廃止・防止に向けた基本方針を理解する

身体拘束廃止未実施減算が適用されない事業所を作るためには、身体拘束廃止・防止に向けた以下の4つの基本方針を組織全体で理解することが大切です。

  • 介護事業所の経営陣が決意し、一体となって取り組む
  • 身体拘束を必要としないケアの実現を目指す
  • 利用者本人・家族・事業所が身体拘束について共通の認識を持つ
  • 常に身体拘束に代わる他の方法を考え続ける

身体拘束廃止・防止を理念として掲げる介護事業所においては、身体拘束を前提としないケアが定着しやすいことが指摘されています。

4つの基本方針をできる限り浸透させ、事業所全員が一体となって取り組みましょう。

身体拘束を必要としないための3つの原則を理解する

身体拘束廃止未実施減算が適用されない事業所を作るためには、身体拘束を必要としないための、次の3つの原則を理解するのが重要です。

  • 身体拘束が必要となる要因を探りそれを改善する
  • 起きる、食べる、排泄する、清潔にする、活動するなどの基本的な生活を支えるケアをていねいに行う
  • 身体拘束の廃止・防止をきっかけにより良いケアを目指す

身体拘束のないケアを実現したところで終わるのではなく、利用者にとってのよりよいケアを追求し続けていく姿勢が大切です。

緊急やむを得ない場合の対応について理解する

身体拘束廃止未実施減算が適用されない事業所にするためには、緊急やむを得ない場合の対応について関係者が理解を深めることが大切です。

安易な身体拘束を行わないためには、緊急やむを得ない場合とは何か、緊急やむを得ない場合と判断する要件、緊急やむを得ない場合に必要な手続き、緊急やむを得ない場合に記録する事項の4つについて関係者全員がしっかりと理解しておく必要があります。

また緊急やむを得ない場合に身体拘束をするかどうかの判断においては、介護事業所として個人の判断にゆだねず、関係者全員で検討ができる体制をあらかじめ整えておきましょう。

関係者がスムーズに連携して判断できる体制を整えることが、結果として身体拘束を減らし、事業所全体のケアの質を高める第一歩になるでしょう。

参考:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」

身体拘束廃止未実施減算についてのご不安は株式会社プレゼンス・メディカルにご相談ください

株式会社プレゼンス・メディカルロゴ

身体拘束廃止未実施減算が適用されない事業所作りが可能かどうか不安に感じる方は、株式会社プレゼンス・メディカルにご相談ください。

株式会社プレゼンス・メディカルでは継続的に行われる介護保険制度の改定、介護報酬改定に対し常に介護事業所の皆様が適切に対処できるよう、サポートを続けて参りました。

例えば喀痰吸引等研修の実施や、DX推進に伴うテクノロジーを用いた課題解決など、介護事業所の経営において先手を打って対処したい内容について、積極的に事業を展開しているのです。

また介護事業所の皆様から日々ご相談いただく内容から、介護保険サービスを行うにあたっては、まずは制度についてしっかりとした知識を持った上で対処方法を見出すことの大切さも理解いたしております。

事業所の皆様が日々行う介護サービスで得た介護報酬を身体拘束廃止未実施減算によって減らされないために、株式会社プレゼンス・メディカルでは身体拘束廃止・防止を目指して最後まで伴走したいと考えております。

身体拘束廃止未実施減算の適用に不安を感じている経営者・管理者の方や、現在の事業所の対応状況を一度整理したい方は、次のページもご覧ください。

お問い合わせ | 喀痰吸引等研修の講習・資格・介護・福祉の研修実績|株式会社プレゼンス・メディカル

まとめ

身体拘束廃止未実施減算は、介護事業所において身体拘束の廃止および防止を目的とした取り組みが十分に実施されていない場合に適用される可能性があります。

高齢者の尊厳を守り、介護報酬が減らされてしまわないためにも、この記事も参考にして事業所全体で身体拘束の廃止・防止に積極的に取り組んでみてください。

※本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

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後期高齢者対策と医療的ケア対応!

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