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訪問介護の利益率とは?経営者が知っておきたい収益構造を解説
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

2014年、介護・福祉施設の経営課題解決を目的にコンサルティング会社を創業し、認定特定行為業務従事者育成事業をスタート。全国12,500施設、4,000法人超への支援実績を持ち、500名以上の経営者との対話を通じて現場ニーズに応えてきました。2023年AI事業開始、2025年にホールディングス体制へ移行。介護施設経営の安定化を実現するプロフェッショナル人材を育成中。2040年に介護福祉業界で最も影響力を持つ組織となるという目標に向けて、業界全体の発展と未来を切り拓くべく挑戦を続けています。

2026.03.27

訪問介護の利益率とは?経営者が知っておきたい収益構造を解説

要約:
訪問介護の利益率は、一般企業の利益率に近い指標である「収支差率」で示されます。2024年度決算では9.6%と比較的高水準ですが、報酬改定による基本報酬引下げの影響で経営環境は厳しさを増しています。収益の柱は介護料収入、支出の大半は給与費であり、人件費管理と稼働率確保が鍵です。加算の取得や減算回避、保険外サービスの活用、採用手法の工夫、生成AIの活用などを通じて、構造を理解した戦略的経営が求められます。

これから訪問介護サービスを行う事業所を立ち上げたいと思っているけれど、利益を確保できるか心配な人はいませんか?

この記事では、訪問介護の利益率から経営者が知っておきたい収益構造まで詳しく解説します。

訪問介護とは

訪問介護とは、利用者が自宅で自立した生活を送れるようになることを目的として、身体介護や生活援助を行う介護保険サービスです。

訪問介護では以下のようなサービスを提供します。

項目

概要

身体介護

  • 食事
  • 排泄
  • 入浴
  • 衣服の着脱
  • 整容

など

生活援助

  • 掃除
  • 洗濯
  • 買い物
  • 調理

訪問介護では利用者の生活以外に関する援助(利用者の家族の食事の準備など)は行えないことに注意しましょう。

参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「訪問介護(ホームヘルプ)」

訪問介護利益率とは?

厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査の概要」より訪問介護の収支差率

画像出典:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査の概要」

一般企業における利益率に近い指標として、介護業界では「収支差率」が使用されます。

収支差率は以下の式で求めることができます。

収支差率=(介護サービスの収入額-介護サービスの支出額)/介護サービスの収入額

収支差率の値が大きいほど収入に対して支出を抑えられていることを意味するため、経営が健全であると言えるでしょう。

2025年(令和7)に厚生労働省が公表した「令和7年度介護事業経営概況調査」によると、訪問介護の収支差率は2024年度決算(令和6年度決算)で9.6%でした。

この数値は他の介護サービスと比較すると大きい方に含まれるため、訪問介護の経営は介護サービスの中でも健全であると言えます。

訪問介護利益率に注目が集まる背景

厚生労働省「令和4年度介護事業経営概況調査の概要」より各介護サービスにおける収支差率

画像出典:厚生労働省「令和4年度介護事業経営概況調査の概要」

訪問介護の利益率に注目が集まる背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

2022年(令和4年)に厚生労働省が公表した「令和4年度介護事業経営概況調査」によると、訪問介護の収支差率は2020年度決算(令和2年度決算)で6.9%、2021年決算(令和3年度決算)で6.1%でした。

他の介護サービスと比較すると、この数値はかなり高い方であるのがわかります。

この調査結果を基に、2024年の介護報酬改定では訪問介護の基本報酬が引き下げられました。

厚生労働省は介護職員処遇改善加算で介護職員の処遇を改善したことを評価してほしいと理解を求めていますが、介護事業所としては減収となる可能性が高いため、訪問介護の収支差率に注目が集まっているのです。

今後訪問介護を健全に経営していくためにも、利益をどのように確保するかを考えるのは重要なことだと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「令和4年度介護事業経営概況調査の概要」

参考:Yahoo!ニュース「訪問介護事業所、管理者の本音トーク。「この状況で介護報酬を下げるなら、私たちにも考えがある」

参考:ケアニュースbyシルバー産業新聞「訪問介護の基本報酬引下げ 事業者から不満や怒り」

訪問介護収益構造

厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査の概要」より訪問介護の1事業所あたりの収支額、収支等の科目の表

画像出典:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査の概要」

訪問介護の収益構造を知るには介護事業経営概況調査における、訪問介護の1施設・事業所あたりの収支額と収支等の科目の資料に目を通しておくとよいでしょう。

例えば上記画像の表を見ると、介護事業収益の柱は「介護料収入」、介護事業費用で一番多くかかっているのは「給与費」だとわかります。

つまり訪問介護を行っている介護事業所のほとんどは介護保険事業からの収入が柱となっており、コストとして一番多くかかっているのは人件費ということです。

訪問介護の1施設・事業所あたりの収支額と収支等の科目の資料についてより理解を深めるために、「介護料収入」「給与費」とは何かを詳しくご紹介します。 

介護料収入とは

画像出典:厚生労働省 老健局「地域区分」より介護報酬の仕組みの図解

画像出典:厚生労働省 老健局「地域区分」

介護料収入とは、利用者に介護保険サービスを提供したことにより事業者が受け取る介護報酬を指します。

介護報酬は、サービスごとに定められた「基本報酬」を基礎に、要件を満たした場合は「加算」が上乗せされ、要件未達の場合は「減算」される仕組みです。

「基本報酬」「加算」「減算」についてそれぞれご紹介します。

基本報酬

厚生労働省「介護報酬の算定構造」より訪問介護における基本報酬の表

画像出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」

基本報酬とは介護保険サービスの内容や提供時間ごとに国が定める介護報酬上の単位数のことです。

介護事業所はこの単位数をもとに介護報酬を算定し、これが売上の土台となります。

基本報酬は上記画像における「介護報酬の基本的な算定方法」の公式で求めることができます。

例えば1級地の東京都にある訪問介護事業所において、40分の身体介護を行った場合、公式に以下の数値を当てはめて考えます。

  • サービスごとに算定された単位数 387単位
  • 1単位の単価 11.40

上記の数値を公式にあてはめると、387×11.40=4,423.2となるため基本報酬の総額は4,423.2円となります。

加算

厚生労働省「介護報酬の算定構造」より訪問介護の加算部分の表

画像出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」 

加算とは介護保険制度において介護サービスの質を向上させるために、基本報酬に上乗せされる評価報酬のことです。

特定の条件を満たすことで基本報酬に上乗せされます。

例えば1級地の東京都にある訪問介護事業所において、新規の利用者に対して40分の身体介護を行った場合、新規利用者に対するサービス計画の作成を評価するため、初回加算の200単位が加算されるのです。

公式には以下の数値を当てはめて考えます。

  • サービスごとに算定された単位数 200単位
  • 1単位の単価 11.40

200×11.40=2,280となるため初回加算は2,280円となります。

このように、加算の取得状況はそのまま売上の増減に直結するため、訪問介護事業においては重要な経営要素となります。

減算

厚生労働省「介護報酬の算定構造」より訪問介護における減算についての表

画像出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」

減算とは介護保険制度において、介護サービスの質や提供状況に応じて基本報酬から一定の金額を差し引く仕組みです。

介護サービスの質や提供基準が満たされていない場合に適用されます。

高齢者虐待防止措置未実施減算が適用された訪問介護事業所の場合、所定単位数の100分の1に相当する単位数が減算されます。

例えば1級地の東京都にある訪問介護事業所において40分の身体介護を行った場合、387単位の1%相当分が差し引かれることになります。

減算は売上の直接的な減少につながるため、訪問介護事業の利益率にも影響を及ぼします。

事業所として、減算の適用を受けないような介護サービスの質や提供基準を維持するよう心掛けましょう。

給与費とは

厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査の概要」 より各介護サービスの収支差率と給与費割合の表

画像出典:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査の概要」

給与費とは、訪問介護事業所で働く職員に支払う人件費の総額のことです。

具体的には、常勤・非常勤職員の給与や賞与に加え、社会保険料などの法定福利費も含まれます。

訪問介護は労働集約型のサービスであるため、給与費が介護事業費用の大部分を占める構造となっています。

2025年(令和7)に厚生労働省が公表した「令和7年度介護事業経営概況調査」によると、訪問介護における給与費の対収入比率は2024年度(令和6年度)決算において67.8%、2023年度(令和5年度)決算において67.0%でした。

つまり、収入の約3分の2が人件費として支出されていることになります。

そのため、訪問介護事業では人件費管理と稼働率の確保が利益率を左右する重要なポイントとなります。

訪問介護利益確保する方法

訪問介護で利益を確保する方法を3つご紹介します。 

介護報酬改定について早めの情報収集をする

訪問介護において利益を確保したいなら、日ごろから介護報酬改定について早めに情報収集することを心がけましょう。

前の項目でもご紹介した通り、介護報酬改定は介護事業所の利益率を左右する構造的な要因となっているためです。

例えば介護報酬改定によって基本報酬が下がれば介護事業所の利益率は下がり、人員配置基準が強化されれば人件費が上がります。

改定内容によっては加算の算定要件が変更されることもあり、取得状況次第では売上構造そのものが変化します。

介護保険制度の見直しについては、社会保障審議会 介護保険部会で定期的に話し合いが行われ、その内容は厚生労働省のホームページで公開されています。

介護保険部会の議事録や資料を見れば議論や審議の方向性を把握できることから、いち早く対策が可能となるのです。

利益率の安定と事業継続のためにも、介護報酬改定の方向性について早めに理解しておきましょう。

参考:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会」

介護保険外サービスの提供を検討する

訪問介護において利益を確保したいなら、介護保険外サービスの提供も検討しましょう。

厚生労働省が発信した「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」の資料では、介護保険サービスと介護保険外サービスを組み合わせて利用する場合のルールについて解説されています。

例えば訪問介護の場合、介護保険サービスと明確に区分し、利用者の同意を得た上で、訪問介護サービス提供の前後や提供時間の合間に、同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物の介護保険外サービスを提供することが可能です。

2025年度(令和7年度)介護事業経営概況調査では、訪問介護における2024年度(令和6年度)決算の介護料収入が3,157,000/月だったのに対し、保険外の利用料による収入は69,000/月でした。

現状はまだ介護保険外サービスからの収入が少なく、競合他社が十分に活用できていない状態です。

このことから、介護保険外サービスへの早期参入は競合との差別化や収益源の多角化につながると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」

採用手法を工夫する

訪問介護事業所の売上は、介護報酬の単位数と介護職員の稼働状況に大きく左右されます。

売上から人件費をはじめとする費用を差し引いたものが利益となります。

介護職員が稼働しなければ売上が立たない業態であるとも言えるため、介護職員の確保と定着は、単なる人事課題ではなく経営課題だと言えるのです。

このことから、訪問介護事業所にとっての採用活動は、利益率を維持するための前提条件にあたると考えて行うのが望ましいでしょう。

訪問介護事業所におすすめの採用手法を3つご紹介します。

リファラル採用

リファラル採用とは、自社の従業員が知人や友人を推薦し、紹介を通じて採用活動を行う手法です。

リファラル採用と混同されやすい言葉に縁故採用がありますが、リファラル採用では最初から自社でスキルや経験を発揮できそうな人を紹介しますが、縁故採用では実力に関係なく身内を紹介するという違いがあります。

訪問介護事業所でリファラル採用を行うメリットは次の通りです。

  • 採用後のミスマッチが起こりにくく、離職率を下げ定着率を上げられる可能性が高い
  • 採用コストを削減できる
  • 転職市場での人材獲得競争に巻き込まれにくくなる

また採用単価や早期離職にかかる再採用コストを抑えられる点も、経営面での大きなメリットです。

介護業界全体が人手不足の中、リファラル採用は採用の精度を高めることができるため、大いに活用したい手法の1つだと言えます。

ただしリファラル採用は多様性の欠如をもたらし、似た価値観の従業員ばかりが集まってしまう可能性もあります。

そのためリファラル採用のみで採用活動を行うのは避け、他の採用手法と並行して用いるのがおすすめです。

カジュアル面談

カジュアル面談とは採用の合否の判定を目的とせずに、採用担当者と求職者が仕事内容、職場環境、キャリアプランなどについて気軽に話し合う場のことです。

カジュアル面談は、採用の精度を高めることで早期離職を防ぎ、結果として人件費のロスを抑える効果が期待できます。

訪問介護事業所でカジュアル面談を行うメリットは以下の通りです。

  • 潜在層にも接触できる
  • 採用後のミスマッチが起こりにくくなる
  • オンラインでも実施可能のため業務で忙しい中でも時間を作りやすい

ただしカジュアル面談を取り入れることにより採用担当者の稼働時間は増加するため、リファラル採用などの工数が少ない採用手法と併用するのが望ましいでしょう。

生成AIの活用

訪問介護事業所における採用活動では、業務効率化を進め採用担当者の稼働時間を減らすために、採用に生成AIを活用するのがおすすめです。

採用業務を効率化することで間接部門の人件費を抑制でき、結果として利益率の改善につながります。

生成AIを用いると、今まで採用担当者が行ってきた次のような作業を効率化できます。

  • 求職者対応メールの下書き作成
  • 採用広報文章の作成
  • チャットボットによる一次問い合わせ対応
  • 面接日程調整の自動化
  • 書類作成の効率化

限られた人員で採用活動を回せる体制を構築できれば、間接コストを抑えながら人材確保を進めることが可能です。

訪問介護において利益率を確保したい方は株式会社プレゼンス・メディカルにご相談ください

株式会社プレゼンス・メディカルロゴ

訪問介護で安定的に利益率を確保するには、制度理解だけでなく、事業戦略の設計が欠かせません。

株式会社プレゼンス・メディカルでは新しく訪問介護に新規参入して利益率を確保したい介護事業所さま向けに、現状分析・戦略設計サービスをご提案しています。

現状分析・戦略設計サービスは介護業界の経営安定化を支援し、優れた介護サービスを必要な現場へ届けるのを目的とするサービスです。

具体的なサービス内容は以下の通りです。

項目

概要

現状分析

  • 事業内容・商材ヒアリング
  • 営業体制の把握
  • 競合分析
  • 強み・弱みの整理

課題の洗い出しとリスト化

  • 参入障壁分析
  • ボトルネック特定
  • リソース課題整理
  • 優先順位付け
  • クイックウィン/ロングターム分類

改善提案の策定

  • 介護業界に特化した戦略立案
  • ターゲット顧客の明確化
  • バリュープロポジション設計
  • チャネル戦略の最適化

マイルストーン設計

  • 3か月目まで:市場参入準備期
  • 6か月目まで:事業拡大期
  • 12か月目まで:安定成長期

KPI設定

  • 定量的KPI
  • 定性的KPI

分析から実行計画までを体系化した20ページの戦略資料を納品します。

興味のある方は、次のページからお問い合わせください。

お問い合わせ | 喀痰吸引等研修の講習・資格・介護・福祉の研修実績|株式会社プレゼンス・メディカル

まとめ

一般企業における利益率に近い指標として、介護業界では「収支差率」が使用されます。

そのため訪問介護においても、収支差率の数値が高いほど経営状態が健全であると判断されるのです。

訪問介護は介護職員が稼働しなければ売上が立たない業態のため、収支差率を維持し利益を確保するのは決して簡単なことではありません。

制度に依存するビジネスモデルであるからこそ、構造を理解し、戦略的に行動することが利益率改善の鍵となります。

地域の高齢者の方々に望ましい訪問介護サービスを提供するためにも、経営において常に利益を意識し続けていくことが大切です。

※本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

 

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