職員の離職を防ぐ。離職防止の取り組みについて
病院での仕事はやりがいのあるものですが、激務であり、人間関係の問題が発生しやすい環境であることから離職率が高いという問題がどうしてもついて回ります。
今回は病院で多く働いている看護師の離職について現場を見ていき、なぜ離職が多いのか、離職を防ぐためにはどうすればいいのかについて解説していきたいと思います。
看護師の離職の現状
まずは看護師の離職について現場を見ていきましょう。
2019年の「雇用動向調査結果」を見てみると看護職員の離職率は全体で11.5%でした。
この数字自体は他の業種と比べて飛び抜けて高いわけではありません。
2020年の病院看護実態調査を確認すると
個人の運営する規模の小さい病院の離職率が31.9%と高くなっていることがわかります。
また病院の規模が小さいほど離職率が高くなっています。これは公立病院では看護師が公務員として扱われ安定した福利厚生が望めることや規模の大きい病院では看護師一人にかかる負荷が軽減されていることが考えられます。
以上から看護師の離職の多い病院の特徴として
規模が小さく人材が少なく業務過多になりやすい。
民間病院で福利個性が明確に規定されていない・充実していない
といった特徴があるようです。
看護師が仕事を辞める理由は?
看護師が仕事を辞めてしまう理由については以下の5つが考えられます。
① 人間関係の悩み
② 勤務環境の不満
③ 出産や育児
④ 資格があるため転職が容易
⑤ COVID-19などによる勤務環境の変化
それぞれ見ていきましょう
① 人間関係の悩み
病院での仕事はミスが許されず、忙しく、患者さんへの対応による対人関係のストレスが溜まりやすいという特徴があります。そういった環境で働くとついつい上司から部下への指導が厳しくなったり、看護師同士、看護師-患者間のトラブルにまこまれるなどの問題が出現します。多くの人と連携して働く必要があるのでその分トラブルも多くなります。
② 勤務環境の不満
小規模な病院などで人材不足となると一人当たりの作業量が多くなり、体力面や精神面で限界を感じてしまい離職するケースがあります。そうしてより一層人手不足となり業務過多となり更なる離職といった悪循環が生まれてしまいます。
③ 出産や育児
出産や育児により職場に戻れなくなるケースは他の業種でもありますが、看護師の場合は夜勤であったり不規則な土日の勤務が重なりさらに継続が困難になる場合があります。
④ 資格があるため転職が容易
看護師は国家資格であり、看護師の求人は非常に多くあります。自分の働いている環境に不満を持ち転職活動をすると新しい職場がすぐに見つかります。そのため離職を決意するとそれを翻意することが少ないのです。
⑤ COVID-19などによる勤務環境の変化
COVID-19の蔓延により医療の環境が大きな変化が起こっています。
もともと担当していた診療科から移動になりCOVID-19の対応をすることになったり、
普段の診療科の医療が滞るという事態が発生しています。
病院での離職を防ぐためにできること
福利厚生を充実させしっかりと就業規則に明記する
働いている人をサポートする福利厚生が充実していないと離職率の上昇を招きます。
住宅手当や交通費、各種の手当などについてはきっちりと職員に伝える必要があります。
また出産や育児に関する休暇の取り扱いについて事前にしっかりと伝えておくことで将来への不安をなくすことができます。
相談窓口を設けるなどしてトラブルに対する風通しをよくする
看護師の離職の原因となる人間関係のトラブルを防ぐためにはトラブルが小さいうちから拾い上げて解決することが必要になります。しかしこれらのトラブルは外部から見てもわかりにくいことが多く、当事者からの申告がないと拾い上げることが困難です。
院内に相談窓口を設けて相談してもらうのも有効ですが、人間関係を知られたくない人もいるため院外の相談窓口を利用して院内の人間に知られることなくトラブルの相談をできる環境を用意することが効果的です。
キャリアアップのための精度を充実させる
自分の職場で必要なスキルが十分身につけることができるとその職場に留まるメリットを感じ離職率が低下すると考えられます。キャリアアップのための指導体制を整えて一定の方針を示すことでパワハラなどの対人関係トラブルを防ぐことにもなります。
多様な働き方に対応する
医療現場は女性の職員が多く、ライフステージの変化により働ける時間が変わってくる人が多くなっています。育児などがあり、フルタイムの勤務が難しい人や深夜労働はできない人、結婚を機に仕事の頻度を下げようと考える人、新たな資格の取得を考え勉強時間を取りたい人など、その人に合った働き方をできるように配慮していくことが離職防止に有効です。
まとめ
今回は医療機関の離職防止について解説しました。
職員が働きたいと思える職場環境をしっかりと作るのは実は容易なことではなく
大きな改革が必要になります。現場の様子をしっかりと拾い上げて、それに対応することが離職予防に重要です。