喀痰ができる介護職員が増えると施設の利益はどう変わるのか?

介護職員を対象とした研修である喀痰吸引等研修。研修を受けることで施設利用者の喀痰吸引を行うことができます。介護職員が喀痰吸引をできるようになることで、職員側には仕事の幅が広がったり、より待遇の良い就職先を見つけやすくなるというメリットがあります。

この喀痰吸引等研修について自施設の職員が受けられるような仕組みを作るべきか?という法人からの問い合わせを多く頂きます。
そこで今回は法人側から見て、介護職員に喀痰吸引等研修の受講を励行するメリットがあるのかについて解説をします。

喀痰吸引等研修とは

喀痰吸引は自分で痰を出すことができない方に対して行う処置で、溜まった喀痰を除去することで口腔内の環境改善、気道確保、感染予防の効果があります。

喀痰吸引は医療行為なので医師や看護師など医療系の資格が必要な行為とされています。
しかし夜間に看護師などの医療職が不在となる施設では、急な喀痰関係のトラブルに対応できなくなるという問題がありました。
そこで喀痰吸引等研修の制度が登場しました。この喀痰吸引等研修を受けることで本来は医療行為のできない介護職員が喀痰吸引できるようになります。

喀痰吸引等研修を受けると喀痰吸引に加えて胃ろうや腸ろうによる経管栄養やNGチューブによる経鼻栄養も行うことができます。

喀痰吸引研修を受けた介護職員が増えることのメリット

喀痰吸引研修を受けた介護職員が増えることのメリット

 

まずは加算を取れるようになるというメリットがあります。

施設が喀痰吸引をおこなっていることが要件となっている加算は多く存在します。
介護保険で加算が算定できるものとしては特定事業所加算、日常生活継続支援加算といったものあります。喀痰吸引しただけで加算できるというものではありませんが、加算の算定要件の中に喀痰吸引の実施が含まれています。

また障害者総合支援法で算定できる加算としての特定事業所加算、喀痰吸引等支援体制加算、医療連携体制加算など喀痰吸引ができることで取れるようになる加算が多くあります。

喀痰吸引が実施できる施設に対するニーズが高まっていることから、喀痰吸引できる施設では利用者が増えやすいというメリットがあります。我が国の後期高齢者(75歳以上)の総人口に占める割合は13.3%、つまり10人に1人以上は後期高齢者なのです。このような高齢化社会の中では当然日常生活のさまざまな行動に介助が必要な人の割合も増加します。

喀痰吸引が必要になる高齢者の割合も増加の一途を辿っています。病院から退院する際に、夜間に喀痰吸引ができる職員が不在であることから元の施設に戻れないという事例も多く存在します。介護職員に喀痰吸引等研修を受けた人がいる場合はこのような利用者さんでも受け入れることができます。

また胃ろうの管理ができるというのも大きなメリットです。高齢化社会が進むと胃ろう管理が必要な人数も増えることが予想されます。胃ろう増設後の利用者さんを受け入れられる施設のニーズは今後ますます増加していくと思われます。

医療事故のリスク低減も見込むことができます。喀痰吸引ができないということは喀痰による気道トラブルに対応できないということになります。つまり、夜間に痰詰まりなどの気道トラブルが発生したときに病院の救急外来を緊急受診しなければならなくなる可能性が高くなってしまいます。

救急受診が必要になると職員の付き添いが必要になります。夜間の人の少ない時間帯に職員が一人拘束されることになるのでマンパワーに関しては大きな痛手となります。大事に至る前に喀痰吸引をこまめにできるということは施設管理の上で大きなメリットと言えるでしょう。また緊急時以外でも誤嚥性肺炎の発症リスクを低減することにつながります。

高齢者が多い施設ではリスク管理のために非常に重要な研修であると言えます。

スタッフのモチベーションアップも無視できないメリットです。介護職に限らずどのような業種でもスキルアップしたいというニーズを持つ人はおおいです。施設などで喀痰等吸引研修などの実用的な研修を受けるサポートがされていると、職場への職員の定着率の向上や生産性の工場を見込むことができます。

まとめ

 

今回は喀痰吸引等研修のメリットについて施設や法人にとってどのようなメリットがあるか、という視点で解説をしていきました。高齢化が進む我が国では喀痰吸引や胃ろうの管理が必要な高齢者の割合はさらに増えることが予想されます。

そのような変化に対応するためには喀痰等吸引研修をより多くの職員に受けてもらい、より多くの喀痰吸引や胃ろう管理が必要な利用者さんにサービスを提供できるようにすることが重要となってきます。

経営的なメリットだけでなく、施設運営を行う上でなんとしても避けたい、急変トラブルの可能性を下げることにもつながります。