年々増加している医療的ケア児とは?医療ケア児の現状とそのケアに求められる処置について解説します。
近年、医療的ケア児と呼ばれる子どもが増加しています。この医療的ケア児という言葉に耳馴染みがない方も多いかも知れません。
医療的ケア児とは生きるために医療的ケアを必要とする子どものことを指します。医療的ケアが必要と言ってもその程度は様々で軽度の医療的ケアを受けながら他の子どもと変わらない生活を送っているような子どもから、重症心身障害があり、寝たきりの子どもまで幅広く含まれる概念となっています。
実はこの医療的ケア児は年々増加しており、2021年には医療的ケア児支援法が成立するなど国からも社会的な課題として考えられており、医療的ケア児を受け入れることのできる施設の拡充も求められています。
今回はそんな医療的ケア児の現状や課題について解説していきます。
医療的ケア児の現状
厚生労働省の発表をみると、2005年に国内には約1万人の医療的ケア児がいました。それが2019年には2万人超となっています。
つまり14年で医療的ケア児の数は1万人増えており、およそ2倍となっているのです。
この医療的ケア医児の増加の背景には医療の発達が関連していると考えられます。新生児医療が発達し高度な医療が提供されるようになったことで今までなら助からなかった子どもの命が助かり、在宅で医療的ケアをうける子どもが増えているのです。
医療的ケア児の受ける医療的ケアとは
医療的ケア児のうける医療的ケアとはどのようなものなのか見ていきましょう
服薬ケア
様々な病気に対して処方される薬剤をちゃんと時間通りに飲ませます。子どもは自分で内服できなかったり、内服を嫌がることもあるので毎日スケジュール通りに服薬管理を行う必要があります。
経管栄養
大きな病気を背負って生きている子どもの中には口から飲んだり食べたりできない子どもも多くいます。そのような場合には経鼻栄養(鼻から胃にチューブを入れて栄養を入れられるようにする)胃ろう(体の表面から胃に通じる穴を開けて管をいれて直接栄養を入れられるようにする)といった経管栄養を行う必要があります。栄養の注入を行い逆流などの問題がないかを確認します。
喀痰吸引
自分で痰を出せないと、その痰で気道が塞がれて窒息してしまいます。そのため喀痰がたまらないように吸引する必要があります。
このほかにも在宅酸素の管理や、気管切開部の管理、バイタル測定など多岐にわたる管理が必要になるのです。
医療的ケア児を持つ家族の苦悩
医療的ケア児のうけるケアは本来、医師や看護師が行う行為ですが、医療従事者の指導をうけた家族が行っています。そのため医療的ケア児の保護者は慣れない医療的ケアを行いつつ子育てをおこなっていく必要があるため、退院後の不安を抱えたり、退院後のケアなどで十分な睡眠や休養が取れず疲弊したり、と様々な問題に直面しています。
また医療的ケアをできる環境でないと預けることができないため預け先が見つからないという現状もあります。保育園を探して引っ越しを余儀なくされる家庭もでてきています。子供のケアと子育てのために仕事を失う人もいるなどの問題もあります。
このような現状があるなかで支援制度もまだ十分に整備されておらず、どんどん医療的ケア児は増え続けているのです。
もちろんいままで助からなかった命が助かることは素晴らしいことなのですが助かった命が健やかに成長していけるシステムの構築が重要な社会的課題になっているのです。
医療的ケア児と家族のためにできた法律、医療的ケア児支援法とは
2021年6月に医療的ケア児を取り巻く環境を改善すべく、医療的ケア児支援法が成立しました。
この法律では医療的ケア児の支援が国や地方自治体の責務と明記されています。
また保育所や学校の責務として以下のことを明記しています。
- 看護師又は喀痰吸引等が可能な保育士を配置する
- 保護者の付き添いがなくても適切な医療的ケアや支援を受けることができるように看護師を配置する
さらに各都道府県に医療的ケア児支援センターを設置することも記されています。
今後医療的ケア児に対応できる人材がますます社会の中で求められることが予想されます。
まとめ
今回は医療的ケア児を取り巻く環境について解説していきました。年々増加している医療的ケア児とその家族をいかに支援していくかが今後我が国の重要な課題となっています。
今後医療的ケアのできる人材はますます重要な存在となっており喀痰吸引や胃ろうの管理などができるようになることで、社会により貢献することができるようになります。