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医療的ケア児とその家族に対する支援の現状と課題
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

医療、健康、教育、環境など、多岐にわたる分野での社会貢献を目指し、プレゼンス・メディカルを設立。日本の医療・介護分野において「技術の革新」をキーワードに、数々の新しいケアプロトコルを生み出し、業界に貢献している起業家である。M&Aやベンチャーキャピタルの分野で多数の事業を手掛け、その経験と知識を活かして、日本の介護業界にイノベーションをもたらすプレゼンス・メディカルを設立しました。
同社のCEOとしても活躍し、研修や喀痰吸引に関するコラムを通じて、事実に基づいた医療的ケアの意義や役割を啓蒙している。その知見は、今後の介護業界の発展に大きく貢献することが期待される。
2014年から500施設以上の施設経営者と直接対面を行い、現場における課題解決に向けた対談多数。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会でのセミナーを全国28都道府県で実施。

2024.03.28

医療的ケア児とその家族に対する支援の現状と課題

目次 [閉じる]

  • 1 はじめに
  • 2 調査の目的及び背景
  • 3 調査結果
  • 4 まとめ

:要約:
医療的ケア児への支援には、教育、医療、地域社会の連携が不可欠です。多職種間協力による包括的なプランの策定と、教員の継続的な研修、地域資源の活用が重要です。これらの取り組みにより、医療的ケア児が教育を受け、成長できる環境の整備が求められます。全ての関係者の協力による持続的な支援が、医療的ケア児の社会参加と充実した生活を可能にします。


参考:総務省行政評価局 医療的ケア児とその家族に対する支援に関する調査

はじめに

近年、医療技術の進歩により、出生時に重大な疾患や障害を持つ子どもたちの生命を救うことが可能になってきました。しかし、これらの子どもたち、すなわち「医療的ケア児」は、日常生活において人工呼吸器や胃ろうなどの特別な医療支援を必要とします。彼らの増加に伴い、家族だけでなく、社会全体での支援の必要性が高まっています。

特に、学校は子どもたちが日々の大半を過ごす場所です。医療的ケア児が学校生活を送るうえで、安全かつ適切な医療支援を受けることは極めて重要です。しかし、現状では、適切な医療的ケア体制の確立に至っていない学校が多く、これが大きな課題となっています。保護者が学校に常駐することなく、子どもたちが安心して学べる環境を整えることが急務です。

医療的ケア児

調査の目的及び背景

この調査は、医療的ケア児がどの地域に住んでいても、等しく適切な支援を受けられるようにするという基本理念を実現するために実施されました。日本全国で医療的ケア児が増加している現状を踏まえ、彼らが幼稚園や学校で平等に学び、成長できるよう、必要な支援体制の構築が求められています。

調査結果

医療的ケア児及びその家族に対する支援の施策概要

日本では、医療的ケア児及びその家族への支援法が、これらの子どもたちとその家族が日常生活を送る上で必要な医療的ケアを適切に受けられるようにすることを目的としています。この法律は、国と地方公共団体に対して、医療的ケア児とその家族への支援体制の整備を義務付けています。具体的には、医療、福祉、教育の連携強化、支援情報の提供、専門的な医療的ケアが提供できる人材の育成と確保、家族への心理的及び経済的支援が含まれます。

この法律の下で、各地方公共団体は、医療的ケア児の在籍する学校や保育所に対し、必要な医療的ケアが提供できるようにするための支援計画を策定し、実施しています。これにより、医療的ケアが必要な子どもたちが、自宅だけでなく、学校や地域社会で安心して生活できる環境が徐々に整いつつあります。

保育所や幼稚園、学校における医療的ケア児の在籍状況

現在、日本全国の保育所、幼稚園、小・中・高等学校には、多様な健康条件を持つ子どもたちが在籍しています。医療的ケア児の数は年々増加傾向にあり、特に小学校では、全医療的ケア児の約70%が在籍していると報告されています。この増加は、医療技術の進歩による生存率の向上と、在宅での医療的ケアの普及によるものです。

この在籍状況を踏まえて、調査対象機関の選定は、医療的ケア児が実際に在籍している学校や施設に重点を置いて行われました。これにより、現実に即した支援の必要性と実施状況の評価が可能となり、より具体的で効果的な改善策を提案することができます。

就学時の情報把握と医療的ケア実施者の確保状況

医療的ケア児が安心して学校生活を送るためには、学校における情報の共有と医療的ケアを実施できる人材の確保が不可欠です。現在、多くの学校では、医療的ケア児の情報を把握し、それに基づいて個別の支援計画を立てる体制を整備しています。しかし、全ての学校で十分な体制が整っているわけではありません。特に、医療的ケアを実施するための専門的知識を持つ人材、例えば看護師や医療的ケア専門員の確保には大きな課題があります。

この課題に対応するため、一部の自治体では、医療的ケアが必要な子どもたちが在籍する学校に看護師を配置する取り組みを行っていますが、これはまだ一部に限られています。また、保護者や学校スタッフへの医療的ケアに関する研修の提供も必要とされており、これらの研修を通じて、非専門家でも基本的な医療的ケアを行えるようにする試みも行われています。

小学校における医療的ケアの実施状況

小学校における医療的ケアの実施状況は、学校や地域によって大きく異なります。多くの小学校では、医療的ケア児に対する個別の支援計画の作成と実施が行われていますが、その質と範囲にはまだばらつきがあります。また、医療的ケアを必要とする子どもたちの増加に対して、学校での医療的ケアの提供体制は追いついていないのが現状です。

この調査から、小学校での医療的ケアの実施に当たっては、次のような問題点が浮かび上がりました。第一に、医療的ケアを行うための人材と資源の不足です。第二に、医療的ケア児の教育への参加を支えるための学校内の体制や理解の不足です。第三に、緊急時に医療的ケアを提供するための計画の不備です。

これらの課題に対して、学校、保護者、地域社会、政府が連携して、医療的ケア児が学校で安心して過ごせるような環境を整えることが急務です。具体的には、医療的ケアの専門家の確保、学校スタッフや同級生への意識向上と教育、緊急時対応計画の策定と実施訓練の充実が求められます。これらの取り組みを通じて、医療的ケア児が学校での学びと成長を全うできるよう支援することが、社会全体の責任であると考えられます。

医療的ケア児

ここで問題となっているのは、これらの子供たちが安全で支援的な環境で学び、成長できるようにするための具体策の策定と実施です。具体的な解決策としては、医療的ケアの専門家を学校に配置すること、教員や学校スタッフへの継続的な研修の提供、保護者や地域社会との連携強化などが挙げられます。

小学校での医療的ケアの専門家の配置に関しては、看護師や医療的ケア専門員など、子供たちの特定の医療ニーズに対応できる人材を確保する必要があります。これにより、医療的ケア児が学校で安全に過ごせるだけでなく、緊急時に迅速に対応できる体制を整えることが可能となります。

教員や学校スタッフへの研修は、医療的ケア児に対する理解を深め、適切な支援を行うために欠かせません。これらの研修を通じて、医療的ケアの基本的な知識や技術、緊急時の対処法などを学び、全ての児童生徒が共に学ぶ環境を実現することが目指されます。

さらに、保護者や地域社会との連携により、学校外での支援体制も強化されます。医療的ケア児の家族や地域の関係者と連携し、学校での支援を家庭や地域社会での支援と一貫したものにすることが大切です。また、地域社会における理解と支援の促進により、医療的ケア児がより広い社会で活動できるようになることも期待されます。

これらの取り組みを通じて、医療的ケア児が学校で安心して学び、友達との関わりを楽しむことができる環境の整備が進むことを目指しています。しかし、これらの取り組みは、単に政策や制度の変更だけでは実現できません。教育現場、医療機関、行政、そして地域社会全体の理解と協力が必要です。医療的ケア児一人ひとりのニーズに応じた支援の実現を目指し、継続的な評価と改善が求められます。最終的には、すべての子どもが自分の能力を最大限に発揮し、健やかに成長できる社会を目指していくことが重要です。




継続的な評価と改善のプロセスは、医療的ケア児に関する施策の有効性を確かめ、必要に応じて適応していくために重要です。このプロセスには、定期的なフィードバックの収集、問題点の特定、そして施策の改善が含まれます。このようにして、学校、家庭、そして地域全体で医療的ケア児の支援体制を持続的に向上させることが可能となります。

また、医療的ケア児の学校生活の質を高めるためには、同級生や他の学校関係者の理解と協力も必要不可欠です。同級生や教員に対する意識啓発活動を通じて、医療的ケア児が直面する課題についての理解を深め、支援への取り組みを学校全体で共有することが重要です。これにより、医療的ケア児が学校での生活をより充実したものにし、友人関係を築き、学習に集中できる環境が整えられます。

さらに、医療的ケア児への支援は、単に医療的なニーズに対応するだけではなく、彼らの社会的、心理的なニーズにも対応する必要があります。例えば、学校行事や放課後の活動に積極的に参加できるようにすること、友人との交流を促進する機会を提供することなどが挙げられます。このような取り組みを通じて、医療的ケア児が学校生活の全ての側面に参加し、充実した学校生活を送ることができるようになります。

最後に、医療的ケア児の支援に関わる全ての人々が、継続的なコミュニケーションを保ち、情報共有と協力を促進することが重要です。保護者、教員、医療専門家、地域社会のメンバー間で定期的なミーティングを開催し、医療的ケア児の現状、ニーズ、進歩について話し合うことが効果的です。このような協力体制を築くことにより、医療的ケア児一人ひとりに合った支援プランを作成し、実施することができます。

医療的ケア児を取り巻く環境は、常に変化しています。そのため、彼らに対する支援体制も柔軟に、かつ積極的に進化させる必要があります。全ての関係者が協力し、医療的ケア児が安心して学び、成長できる環境を提供することが、私たち社会の大切な使命です。


社会の使命を果たすためには、包括的なアプローチが必要です。これは教育機関だけでなく、地域社会、政府機関、非営利団体、そして医療提供者が共同で取り組むべき課題です。特に、医療的ケア児の支援においては、多職種間の協力が極めて重要となります。異なる専門分野からの知見とスキルが結集することで、医療的ケア児の多様なニーズに対応した包括的なサポートプランが策定されます。

このような協働の下、医療的ケア児に関する政策やプログラムは、より効果的かつ持続可能なものになります。具体的には、政策立案者やプログラム開発者は、実践現場からのフィードバックを基に、より実用的で効果的な支援策を設計することができます。また、このような協力関係を通じて、必要な資源やサービスをより迅速に、そして適切に医療的ケア児とその家族へ提供することが可能になります。

また、教育機関内での医療的ケアの提供に関しては、教育と医療の間のギャップを埋めるために、教師と医療専門家が協力して働く体制を整えることが重要です。学校内における医療的ケアの品質を保証するためには、教員への医療的ケアに関する継続的な教育と研修が不可欠です。これにより、教員は医療的ケア児の日常的なニーズと緊急時のニーズの両方に適切に対応できるようになります。

地域社会においても、医療的ケア児とその家族への支援は、地域のネットワークとリソースを活用して行われるべきです。例えば、地域内の医療施設、支援団体、ボランティアグループが連携することで、医療的ケア児とその家族が必要とする多様なサービスを提供することができます。地域社会全体が医療的ケア児の支援に参加することで、彼らがより包括的なサポートを受けることが可能になり、孤立感の軽減にもつながります。

最終的に、医療的ケア児を支援する取り組みは、個々の子どもの権利と可能性を尊重することから始まります。全ての子どもが等しく教育を受け、自分の能力を最大限に発揮できる環境を整えること。これが、私たちが目指すべき未来の姿です。医療的ケア児への適切な支援と環境の提供を通じて、彼らが自信を持ち、社会の中で活躍できるよう支援することは、私たち全員の責任であり、最も重要な使命です。


まとめ

医療的ケア児及びその家族に対する支援には、まだ多くの課題が存在します。しかし、この調査を通じて明らかになったデータと情報は、これらの課題に取り組むための重要な一歩を示しています。法的枠組みの整備から、学校での具体的な医療的ケアの実施、緊急事態への備えに至るまで、多角的な改善が必要です。医療的ケア児一人ひとりが安全で快適に学び、成長できる環境の実現は、私たち社会全体の責任です。

この調査報告書は、医療的ケア児を取り巻く現状に光を当て、改善に向けた具体的な提案を行うことで、関連する全てのステークホルダーに対して行動を促します。医療的ケア児が持つ可能性は無限大であり、彼らが全力を尽くせるよう、適切な支援と理解のもとで、彼らの成長を支えていくことが求められています。

医療的ケア児とその家族に対する継続的な支援と改善は、より良い未来への投資です。この調査報告書が、その重要なステップの一つとなることを願います。


本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

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