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最も取得したい研修が喀痰吸引等研修

介護施設が喀痰吸引等を導入するメリット
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

医療、健康、教育、環境など、多岐にわたる分野での社会貢献を目指し、プレゼンス・メディカルを設立。日本の医療・介護分野において「技術の革新」をキーワードに、数々の新しいケアプロトコルを生み出し、業界に貢献している起業家である。M&Aやベンチャーキャピタルの分野で多数の事業を手掛け、その経験と知識を活かして、日本の介護業界にイノベーションをもたらすプレゼンス・メディカルを設立しました。
同社のCEOとしても活躍し、研修や喀痰吸引に関するコラムを通じて、事実に基づいた医療的ケアの意義や役割を啓蒙している。その知見は、今後の介護業界の発展に大きく貢献することが期待される。
2014年から500施設以上の施設経営者と直接対面を行い、現場における課題解決に向けた対談多数。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会でのセミナーを全国28都道府県で実施。

2024.06.10

介護施設が喀痰吸引等を導入するメリット

要約:

介護施設が喀痰吸引等ができるとどのようなメリットがあるのか気になる経営者がいるでしょう。
実際に喀痰吸引等ができる施設を運営している場所があります。これから、高齢者が増え、介護施設の利用者も増加するでしょう。なぜ病院だけでなく、介護施設で喀痰吸引等が行えたほうがいいのかについて深掘りします
この記事では、介護施設で喀痰吸引等を行うために必要なことや、喀痰吸引等ができる施設の需要について解説します。合わせて喀痰吸引等研修についても紹介するため、施設運営する経営者は参考にしてください。

介護施設が喀痰吸引等を導入するメリット2選

介護施設が喀痰吸引等を導入するメリットとして2つ挙げます。

  • 介護保険からの加算がある
  • 喀痰吸引等を必要とする利用者の増加が見込める

介護施設の経営面で利益が望めるため、介護職員への喀痰吸引等を実施できるように取り組みましょう。


介護保険からの加算がある

介護施設が喀痰吸引等を行うメリット1つ目として、介護保険からの加算があることです。

痰吸引等支援体制加算があります。研修を受けた介護職員が医師との連携のもとで、喀痰吸引が必要な利用者に対して実施したときに加算されます。

次に特定事業所加算について解説します。

特定事業所加算とは、介護施設で働く人を確保し、質の高いサービスを提供している事業所に対して評価する加算のことで、主に訪問介護施設が対象です。

加算要件は7つあり、いくつ当てはまっているかで、加算率が変わります。基本報酬は3%〜20%の加算です。

3つ目に日常生活継続支援加算です。重度の介護者を積極的に介護施設へ受け入れの促進のために設けられたもので、介護老人福祉施設における加算です。また、喀痰吸引等が必要な利用者がいる場合に算定できます。

喀痰吸引しただけでは加算できるというわけではありません。しかし、加算の算定要件の中に喀痰吸引の実施が含まれています。

このように、要件など細かくありますが、喀痰吸引等ができる職員、または喀痰吸引等の利用者がいる介護施設ではさまざまな加算があります。

喀痰吸引等が実施できる職員がいるか、いないかでも事業所の利益が変わります。積極的に研修を行い、吸引等ができる人材を増やしていくのが望ましいでしょう。

喀痰吸引を必要とする利用者の増加が見込める

現在は、高齢化が進み介護施設の利用も増加しています。そして、2025年度には高齢者の5人に1人が医療的ケアが必要となる予想です。

そこで、喀痰吸引等が介護施設でも行うことができれば、利用者の増加が見込めます。

介護施設で喀痰吸引等が行えない場合、容態が急変して吸引の必要が生じたときには、利用者全員を病院へ送ることになります。しかし、喀痰吸引等研修を行い、実施できるようになれば、介護施設内で医療的ケアを行えるため、利用者の負担も軽減されるでしょう。

また、利用者も病院だけでなく、介護施設という選択肢が増えます。これまで病院で過ごしていた方が介護施設への入居の決め手に「介護職員が喀痰吸引等ができる」という強みに惹かれ、選ぶという可能性が出てくるでしょう。

喀痰吸引等が実施できる介護職員がいることで、介護施設の利用者の幅を増やすことができます。よって他施設との差別化となり、選んでもらえる施設になるというメリットがあります。


喀痰吸引等ができる介護施設の需要について

喀痰吸引等ができる介護施設の需要は増えています。現在は勤務看護師も少なくなり、介護職員が吸引等を行う施設も増えました。

厚生労働省がまとめた「都道府県喀痰吸引等登録実施状況集計表」によると、登録喀痰吸引等事業者数は全国で2,731施設あるとわかりました。(令和5年4月1日時点)

そのうち、老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業所は2,185件です。

参考:令和5年度都道府県等喀痰吸引等実施状況|厚生労働省

介護施設の中でも、医療ミスが怖くて、介護職員にさせていないことや勤務看護師に任せているという施設も見受けられます。しかし、2025年には、後期高齢者が急増すると予想されているため、喀痰吸引等を実施できる介護施設の需要も同時に高くなると予想されます。

このように、介護施設の需要も高まるため、喀痰吸引等研修を行い、介護職員でもできる環境づくりをしましょう。

喀痰吸引が必要な利用者とは

喀痰吸引が必要な利用者は、自分で痰を出すことができない、または呼吸器をつけているなどが挙げられます。

  • 呼吸器系の疾患がある
  • 筋疾患である
  • 神経変性疾患や脳機能障害などにより、嚥下や呼吸機能が正常に働かない
  • 痰を出すことが困難である

喀痰吸引等の利用者の状況の資料について一部を紹介します。「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「障害者支援施設」では「口腔内」の喀痰吸引、「胃ろうまたは腸ろう」の割合が全利用者の5%~8%だと分かりました。

(介護保険施設・事業所、障害福祉サービスの調査(平成28年10月1日時点)

今後ますます利用者は増えると予想されます。同時に介護施設への喀痰吸引等が求められるでしょう。

参考:介護職員による喀痰吸引等の実施状況及び医療的ケアのニーズに関する調査研究事業

介護施設で喀痰吸引等を実施するための資格とは

介護施設で喀痰吸引等を実施するための資格は、第1号、第2号、第3号と3つあります。

喀痰吸引等研修集類別で実施できる行為と利用対象者は以下の通りです。

第1号

第2号

第3号

実施できる行為

口腔内吸引

鼻腔内吸引

気管カニューレ内部吸引


胃ろう・腸ろうの経管栄養

経鼻経管栄養

口腔内吸引

鼻腔内吸引

胃ろう・腸ろう経管栄養

口腔内吸引

鼻腔内吸引

気管カニューレ内部

吸引


胃ろう・腸ろうの経管栄養

経鼻経管栄養

利用対象者

不特定多数

不特定多数

特定の利用者のみ

介護職員の取得が多い、第3号研修では、特定の利用者にのみ実施できます。研修の際は、利用者に必要な行為の実地研修を受講します。実地研修では、医者等の評価において、研修者が習得すべき吸引等の技能を習得したと認めるまで実地しなければなりません。

受講し終えたら、認定特定行為業務従事者認定証の交付をしてもらいます。第1号、第2号の不特定多数の利用者に実施する場合は、認定特定行為業務従事者を登録する必要があるため、確認しましょう。

介護施設で喀痰吸引等を実施するために必要なこと

介護施設が喀痰吸引等を実施するために必要なこととして、4つ挙げます。

  • 指導看護師がいること
  • 喀痰吸引等研修を行った介護職員がいること
  • 施設の登録をすること
  • 医療器具を準備すること

すべての要件を満たすことで、実施することができます。以下に一つ見ていきましょう。


指導看護師がいること

介護施設で喀痰吸引等を実施するためには、医療者の監督のもとに行わなければなりません。介護施設には、看護師が勤めている場合があります。その看護師が指導看護師となり、介護職員の吸引等を見守ることで、実施が可能です。

指導看護師の条件として、看護師歴5年以上であることや、医療的ケア教員の講習会受講修了者、または喀痰吸引等研修指導者伝達講習会修了者であることとされています。

指導看護師がいなければ、介護職員が喀痰吸引等研修を行って資格を持っていたとしても、実施できないため、注意が必要です。

喀痰吸引等研修を行った介護職員がいること

介護施設で喀痰吸引等研修を行うには、研修を終えて資格を取得する必要があります。

  • 基本研修として講義8時間
  • 各行為のシミュレーター演習
  • 実地研修

実施の前提として、介護施設に喀痰吸引を行う利用者がいることです。もし、利用者がいない場合、吸引等を実施できません。利用者の吸引等のために、介護職員は研修を行い実施します。

介護職員が吸引を行う時は、夜勤で看護師が不在のとき、または訪問介護で自分ひとりだけのときが多いです。看護師がいる場合は、看護師に医療行為は任せている現状です。

このように、喀痰吸引等研修を終えた介護職員がいる必要があります。介護施設で不特定の利用者に吸引を行う場合は、第1号、第2号研修を行うことをおすすめします。

施設の登録をすること

介護職員が喀痰吸引等を実施するためには、施設の登録が必要です。介護職員が喀痰吸引等研修を行い、資格を持っていても、介護事業者が登録をしていなければ実施することができません。

事業所の登録には、医者や看護師などとの連携や安全確保措置などを満たしているという旨の登録申請が必要です。

医療物品を準備すること

介護施設が喀痰吸引等を実施するためには医療器具の準備が必要です。喀痰吸引と経管栄養に必要な医療物品について解説します。


喀痰吸引

喀痰吸引で必要な医療物品は以下の通りです。

  • 吸引機
  • 吸引カテーテル
  • カテーテルを保存する容器(消毒液が入っているとよい)
  • 消毒用のアルコール綿
  • 水の入ったコップ
  • 手袋
  • ゴーグル
  • エプロン
  • マスク

利用者を受け入れるために、必ず準備しましょう。

経管栄養

経管栄養で必要な物品は以下の通りです。

  • 注入用のボトル
  • ボトルに接続するライン(チューブ)
  • 栄養剤
  • 白湯
  • 注入用ボトルを下げるフックまたはスタンド
  • 時計
  • ハサミ

利用者の胃管、経管に入れている栄養チューブの交換をする場合は、以下の物品も準備する必要があります。

  • 栄養チューブ 
  • 挿入の際に使う水溶性潤滑剤
  • カテーテルチップシリンジ
  • マジックペン
  • 固定用のテープ
  • 手袋

このように、喀痰吸引等を行う際には多くの医療物品の準備が必要です。

実施できるように施設の環境を整える

医療物品が準備できたら、実施できるように施設の環境を整えます。

  • 感染症予防や発生時に対応するためのマニュアル一式
  • 医師への連絡体制や連携体制図
  • 申請書(喀痰吸引等を実施する者の氏名や認定証を添付)
  • 医療従事者とともに計画書を作成
  • 計画内容の同意と秘密保持
  • 業務適合書
  • 必要な備品の準備

登録特定事業者に登録するためには、施設の環境だけでなく、マニュアルの準備などが必要です。このように施設の環境を整えなければ登録できず、喀痰吸引等を実施できなくなります。

介護職員の研修とともに、事業者の登録、施設の環境を整えましょう。


喀痰吸引等を無資格、無登録で行った場合の罰則

もし、利用者が急変して今すぐ喀痰吸引を行う必要が出てきたとき、研修を行っていない介護職員が実施するとどうなるのか、詳しく見ていきましょう。

そもそも、喀痰吸引等は「医療行為」のため、医師または看護師等が行う必要があります。

喀痰吸引等研修を行い、資格の登録を行えば、介護職員も実施できますが、無資格だと「医師法」違反に該当します。

実際に、無資格で行い、施設経営者が行政処分となった事例です。

無資格で施設利用者に口や鼻から管を使ったたんの除去や、胃ろうでの栄養の送り込みを行っていました。さらに職員は業務記録で、たん吸引を「 口腔ケア」と改ざん。また、胃ろうへの栄養注入を、看護師が出勤した後に行ったように開始時間を偽ったりしていたというケースです。

介護保険法に基づいて、施設運営者が行政処分となりました。もし、無資格で吸引をし、ミスをして命を落としてしまったなど、取り返しのつかないことになりかねません。

資格を取得していても、厳重に実施する必要がありますが、無資格で実施するのはリスクが大きすぎるでしょう。無資格で行う利用者、実施者の双方に大きな損害をもたらす可能性があります。喀痰吸引等研修を実施し、利用者に正しい処置を行わなければなりません。

次に、事業者が登録をしていないが、吸引等を実施した場合の罰則について紹介します。

介護施設で喀痰吸引等を行うためには、登録特定行為事業者の登録と、実施者の登録の2つが必要です。

しかし、事業所の登録を受けずに、介護職員が実施したとして、施設経営関係者が書類送検されたという事例があります。

このように、喀痰吸引等を無資格、無登録で行った場合、罰則があるため注意が必要です。

  • 喀痰吸引等研修を取り入れて、資格を取得した職員が行うこと
  • 登録特定事業者になること

利用者だけでなく、職員や施設を守るためにも、守らなければなりません。

介護施設での喀痰吸引の実施状況

介護施設での喀痰吸引の実施状況について紹介します。介護職員は夜間、看護職員が常駐していないというときに喀痰吸引を行うことが多いです。

たとえば、夜間、利用者が喀痰吸引を必要としているが、看護師が不在の場合は、介護職員が実施するという形です。

利用者によっては夜間も吸引を必要とするため、喀痰吸引ができる職員を常駐させる必要があります。

一方で、利用者が転院をして、喀痰吸引を必要とする利用者がいなくなってしまった場合、資格がいかせないという現状があるようです。その時には、再度研修を行い、技術の向上を行うと利用者の安心安全につながります。

このように、介護職員が喀痰吸引を行う施設もあります。研修をして安心して任せてもらえるように、利用者や医師、看護師等と連携をして、実施するとよいでしょう。


介護施設で利益率を上げるためにやるべきこと

介護施設で利益率を上げるためにやるべきこととして4つ挙げます。

  • 他施設との差別化を行う
  • 施設の稼働率を上げる
  • 利用者の単価を上げる
  • 加算をもれなく取得する

以下に一つずつ見ていきましょう。

他施設との差別化を行う

これから介護施設は「利用者から選ばれる」または「選ばれない」と変化すると言われています。そのため、施設の強みを見つけ出す必要があります。

例えば、看護師が夜勤できない施設が多ければ、自施設は、夜勤ができる看護師を雇う。介護福祉士でいうと、研修を受けさせ、喀痰吸引ができる職員が複数いるなど。

他施設ができていないところをできるようにするとそれが差別化につながります。

また、これからの時代は、ネットでの発信が必要不可欠です。施設の様子や、職員がどのように対応しているかなど、ホームページに載せることで、安心感につながるでしょう。

このように、差別化を行うことで、利用者が増えるだけでなく、利益も増えます。また、職員の採用や離職率予防にも効果が出るでしょう。

施設の稼働率を上げる

他施設との差別化を行うことで、利用者が増え施設の稼働率が上げられます。基本的に、介護施設は稼働率100%になることは難しいとされています。

稼働率とは、実際に利用している数÷施設の定員数で計算します。

例えば、利用者数が100名、定員数が150名であれば、66%が稼働率です。

厚生労働省が公表した「令和4年度介護事業経営概況調査結果」によると、介護サービスの令和2年度の利益率は、全サービス平均3.0%で、前年度より0.9%の低下している結果です。

参考:「令和4年度介護事業経営概況実態調査」|厚生労働省

理由として、以下のことが挙げられます。

  • 介護業界の競争が激しくなった
  • 介護事業所が増えているが、働く人が増えない

介護業界全体で利益率が落ち込んでいることが分かりました。

また、有料老人ホームなど民間企業が参入しているため、利用者の選択肢が増えました。そのため、待機していた高齢者が減っている現状です。

利用者の単価を上げる

利益を上げるためには、利用者の単価を上げることも1つの手です。利用者の単価は重度の高い利用者が高くなります。利用者の介護度が高くなることで、利益は上がる仕組みです。

しかし、介護度の大きい利用者ばかりが増えても、介護職員の負担が増えます。施設の設備などを整える必要性も出てきます。

単価を上げるためには、サービスの質を上げることが大切です。利用者が減ってしまわないように、単価設定は慎重に行いましょう。

加算をもれなく取得する

介護業界は、介護報酬が収益に大きく関わります。加算は介護施設や提供するサービスによって異なります。

例えば、喀痰吸引ができる職員がいて実施すれば、喀痰吸引等支援体制加算があります。

介護報酬は令和6年度に大きく改定がありました。改定の推移は、直近3回はプラスの改定になっています。しかし、切り下げられた年もあるため、その場合は収益が減ってしまうことがあります。日頃から確認し、取りこぼさないようにしておきましょう。


まとめ

喀痰吸引等を行い加算と利用者の確保を目指そう

この記事では、介護施設で喀痰吸引を行うメリットや重要性について解説しました。

喀痰吸引ができる施設では、介護報酬で喀痰吸引等支援加算があります。そのほかにも、加算が受け取れるため、喀痰吸引等を実施できる職員を雇うまたは、研修を行い育てるとよいでしょう。

介護施設で喀痰吸引を行う際には、人材だけでなく、医療物品や環境の整備をする必要があります。

もし、無資格、施設無登録で利用者に喀痰吸引等を実施した場合、罰則が課されます。喀痰吸引等は医療行為です。看護師または、喀痰吸引等研修を行った介護職員が行わなければなりません。注意しましょう。

介護施設経営は介護報酬が大きな収入となります。そのほかにも、他施設との差別化を行い、利用者を増やし、稼働率を上げることが利益率を上げる方法です。

介護職員へ喀痰吸引等研修を行い、夜間でも介護職員が対応できる施設にすることで、加算だけでなく、利用者の増加も見込めるでしょう。

Documents・Contact

2025年に向け必要とされている
介護職員の医療的ケア。

2025年に向け必要とされている介護職員の医療的ケア。
介護施設・保育園・福祉施設・在宅で医療的ニーズのある利用者が今後さらに増えています。
利用者が安心した生活を過ごせるように、 喀痰吸引等の資格取得が必要です。
研修予算計画を始め、現場に寄り添った年回計画を策定し、安定的な資格取得の計画をご提案します。