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口腔連携強化加算とは?目的から算定要件まで詳しく解説
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

2014年に介護施設向け研修事業を設立し、これまでに全国12,000施設以上の実績を誇ります。500以上の施設経営者と直接対話し、現場課題の解決に尽力。2023年からはAIを活用した介護保険外事業やDtoCヘルスケア事業を開始し、2027年からの世界展開に向けて精力的に活動中。業界に革新をもたらし、介護とヘルスケアの未来を切り拓いています。

2025.05.21

口腔連携強化加算とは?目的から算定要件まで詳しく解説

要約:
口腔連携強化加算は、2024年の介護報酬改定で新設された加算で、介護職員や看護職員が利用者の口腔の状態を確認し、歯科医療機関やケアマネジャーに情報共有することで1回50単位を月1回まで算定できます。算定には評価項目に基づいた口腔内の観察と、歯科との連携体制の構築が必要です。加算の取得は、利用者のQOL向上だけでなく、職員のスキル向上、事業所の差別化にもつながります。申請には体制整備と届出が必要です。

口腔連携強化加算とは

口腔連携強化加算とは2024年の介護報酬改定において新設された加算の1つで、利用者に近い存在である介護職員や看護職員が、利用者の口腔の情報を歯科専門職やケアマネジャーに共有することで得られる加算です。

単位数は1回あたり50単位で、1月に1回に限り算定可能となります。

対象者は利用者全員で、対象となる介護サービスは以下の通りです。

  • 訪問介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

口腔連携強化加算を申請したい場合、まずは自社の運営する介護事業所が上記の介護サービスを行っているかを確認しましょう。

口腔連携強化加算について、3つの観点からもう少し詳しく解説します。

参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」

参考:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1344」

口腔連携強化加算の目的

口腔連携強化加算は利用者に接する機会の多い介護職員や看護職員が、利用者の口腔内の状態を確認し、スムーズな歯科医療につなげるのを目的としています。

そもそも口腔内を他人に見られたり、歯の状態を確認されたりするのは恥ずかしいと感じる人が多いのではないでしょうか。

しかも、高齢者の場合自分の口腔内の状態があまり良くないと感じていてもそれをうまく伝えられなかったり、遠慮してしまったりしてスムーズな受診につながらないことも考えられます。

そのため、歯科医療の関係者や家族以外で利用者と信頼関係が構築されている、介護職員や看護職員が口腔内の状態をさりげなく確認することが重要なのです。

口腔連携強化加算の算定要件

口腔連携強化加算の算定要件は以下の通りです。

項目

概要

口腔の健康状態を評価すること

所定の評価項目を指定された評価基準に基づいて確認

歯科医療機関と介護支援専門員に情報共有すること

l   情報共有する歯科医療機関は連携歯科医療機関、利用者のかかりつけ歯科医の両方またはいずれか

l   情報共有の方法は情報の機密性に配慮すれば郵送、メール、FAXなどどれを選択してもよい

l   情報提供をする際の書式は厚生労働省のホームページに掲載されている

厚生労働省の「(リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について)」で発信されている、口腔の健康状態の評価項目の詳細は次の通りです。

項目

評価

評価基準

評価が必要な理由

開口

1.      できる 

2.      できない 

上下の前歯の間に

2本分(縦)入る

程度まで口が開かない場合(開口量3cm以下)は「2」とする

l   開口が不十分だと口腔内の観察が十分にできず不潔になりやすいため

l   開口が十分にできない要因の精査が必要となる場合があるため

歯の汚れ

1.      なし

2.      あり

歯の表面や歯と歯

の間に白や黄色の汚

れなどがある場合には

「2」とする

l   歯の汚れは虫歯や歯周病の原因となるため

l   汚れを飲み込み肺に到達すると誤嚥性肺炎の原因になるため

舌の汚れ

1.      なし

2.      あり

舌の表面に白や黄

色、茶、黒色の汚れなどがある場合には

「2」とする

l   汚れを飲み込み肺に到達すると誤嚥性肺炎の原因になるため

歯肉の腫れ、出血

1.      なし

2.      あり

歯肉が腫れている

場合(反対側の同じ

部分の歯肉との比較

や周囲との比較)や

歯磨きや口腔ケアの

際に出血する場合は

「2」とする

l   歯肉の腫れ、出血は歯周病の可能性があるため

l   糖尿病などの全身疾患との関連性が報告されているため

左右両方の奥歯でしっかりかみしめられる

1.        できる 

2.        できない

本人にしっかりかみしめられないとの認識がある場合、または義歯を入れても奥歯がない部分がある場合は「2」とする

l   窒息事故との関連が報告されているため

l   転倒リスクとの関連性が報告されており、義歯の利用なども含めて検討が必要なため

むせ

1.      なし

2.      あり

通常時や食事時にむせがある場合や、明らかなむせはなくても、食後の痰がらみ、声の変化、息が荒くなるといった様子がある場合

は「2」とする

l   摂食嚥下障害の可能性があるため

l   唾液や食物などを誤嚥している可能性があり、摂食嚥下機能の精査や訓練などが必要な場合もあるため

ぶくぶくうがい

1.      できる 

2.      できない

歯磨き後のうがい

の際に口に水をため

ておけない場合や頬

を膨らませない場合

や膨らました頬を左

右に動かせない場合

は「2」とする

l   口腔機能の低下の可能性があるため

食物のため込み、残留

1.      なし

2.      あり

食事の際に口の中

に食物を飲み込まず

ためてしまう場合や

飲み込んだ後に口を

開けると食物が一部

残っている場合は

「2」とする

l   摂食嚥下機能の精査や訓練などが必要な場合があるため

その他

自由記載

歯や粘膜に痛みが

ある、口の中の乾燥、

口臭、義歯の汚れ、義

歯がすぐに外れる、

口の中に薬が残って

いるなどの気になる点

があれば記載する

l   歯科疾患との関連がある事項や利用者の訴えなども含めて検討が必要な場合があるため

歯科医師などに

よる口腔内など

の確認の必要

1.      低い

2.      高い

l   上記項目について「あり」または「できない」が1つでもある場合は、「高い」とする

l   その他の項目なども参考に歯科医師などによる口腔内などの確認の必要性が高いと考えられる場合は、「高い」とする

現場の職員が利用者の口腔内の健康状態を評価し、歯科医療機関とケアマネジャーに情報共有をすれば加算を申請できると覚えておきましょう。

口腔連携強化加算を申請する上での注意点

口腔連携強化加算を申請する上で覚えておきたい注意点は以下の2つです。

  • 口腔・栄養スクリーニング加算と居宅療養管理指導をすでに申請している場合は口腔連携強化加算を申請することはできない
  • 利用者が他の介護事業所で口腔連携強化加算をすでに申請していた場合は重複申請できない

利用者が複数の事業所で異なる介護サービスを受けている場合、特に注意が必要です。

参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」

参考:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1344」

口腔連携強化加算が新設された背景

口腔連携強化加算が新設された背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

 

利用者が必要な歯科治療を受けられていない

画像出典:厚生労働省 第232回社会保障審議会介護給付費分科会資料「口腔・栄養」

2023年の第232回社会保障審議会 介護給付費分科会の資料「口腔・栄養」において、要介護の高齢者290人を対象に歯科医療と口腔健康管理について調査を行いました。

すると上記画像のように歯科治療が必要な人が64.3%いたにもかかわらず、その中で実際に歯科治療を受けた人は2.4%しかいないことがわかったのです。

このことから利用者が必要な歯科治療を受けるためには、口腔連携医療加算が重要な役割を果たすと予想されます。

参考:厚生労働省 第232回社会保障審議会介護給付費分科会資料「口腔・栄養」

介護保険施設入所者が口腔内スクリーニングを受けられていない

画像出典:厚生労働省 第232回社会保障審議会介護給付費分科会資料「口腔・栄養」

「口腔・栄養」の資料で老人健康保険施設503施設と、介護医療院294施設に対して口腔内スクリーニングの実施状況についてたずねたところ、上記画像のように口腔衛生管理加算の有無でスクリーニングの実施状況が大きく異なることがわかりました。

老人健康保険施設において、加算がある事業所では79.7%が全員に口腔内スクリーニングを実施しているにもかかわらず、加算のない事業所では37.3%にまで減少します。

また介護医療院において、加算がある事業所では85.9%が全員に口腔内スクリーニングを実施していますが、加算のない事業所では42.1%にまで減るのです。

これらのことから利用者が適切な口腔健康管理を受けるためには、口腔連携医療加算が重要な役割を果たすと予想できます。

居住系サービスにおける口腔管理の不足

画像出典:厚生労働省 第232回社会保障審議会介護給付費分科会資料「口腔・栄養」

「口腔・栄養」の資料で特定施設入所者65人を対象に、「定期的な口腔のアセスメント」「歯科衛生士による口腔衛生管理」「歯科専門職による個別プラン作成」「歯科治療」の4つの項目の有無を調査したところ、上記画像のような結果となりました。

「定期的な口腔のアセスメント」「歯科衛生士による口腔衛生管理」「歯科治療」については20%前後の施設が行っていましたが、「歯科専門職による個別プラン作成」はほぼ行われていなかったのです。

介護サービスの中でも特に施設サービスの利用者に向けて、口腔内の医療的な管理にもっと力を入れた方がよいとわかる結果だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省 第232回社会保障審議会介護給付費分科会資料「口腔・栄養」

口腔連携強化加算を申請するメリット

口腔連携強化加算を申請する事業所、職員、利用者のメリットはそれぞれ次の通りです。

項目

概要

事業所

l   口腔内の健康管理に力を入れている介護事業所だということをアピールできるため競合する他事業所との差別化につながる

l   口腔連携強化加算が取得できるため事業所の予算に余裕ができる

職員

l   口腔内の健康管理をするための様子観察のスキルが身につく

l   医療関係者に口腔内の健康管理について相談がしやすくなる

利用者

l   信頼関係ができている職員に口腔内の確認をしてもらえる

l   口腔内の健康を維持することで肺炎の発症予防や全身の健康維持につながる

口腔連携強化加算は利用者だけにメリットがあると捉えられがちですが、事業所と現場で働く職員にもメリットがあるのを知っておくのが大切です。

参考:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1344

 口腔連携強化加算を取得する手順

口腔連携強化加算を取得する手順を3Stepにわけてご紹介します。

連携歯科医療機関を探す

連携歯科医療機関とは、診療報酬の歯科点数表区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関のことです。

口腔連携強化加算の算定においては、連携歯科医療機関が複数あっても問題ないとされています。

まずは連携歯科医療機関になってくれそうな歯科を探してみましょう。

連携歯科医療機関に相談できる体制を整える

口腔連携強化加算を算定するにあたっては、連携歯科医療機関の歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が介護事業所の職員からの相談に対応する体制を確保し、その旨を文書で取り決めなければなりません。

相談できる体制を確保するとは、具体的には自分の介護事業所が歯科医療機関に利用者の口腔の健康について相談や報告ができるように契約を結んでおくことを指します。

契約をする際の文書の書式については特に指定はありませんが、一般社団法人日本老年歯科医学会がホームページで書式の例を公開しているため、作成の際に参考にするのもよいでしょう。

書式の例に記載されている項目は以下の通りです。

  • 当該契約書において契約する事項
  • 実施事項
  • 契約形式
  • 注意事項
  • 法人名と事業所名

 

契約形式の項目では有償契約と無償契約のどちらにするかを選べるようになっており、有償契約の場合は金額、回数、時間などの詳細も記載できるようになっています。

連携していく中でトラブルを起こさないようにするためにも、介護事業所と歯科医療機関の双方が納得、合意の上で契約を結ぶことが大切です。

参考:一般社団法人日本老年歯科医学会 「特任委員会(老健事業・連携強化)」

届出を出す

連携歯科医療機関との契約が完了したら、次は口腔連携強化加算を申請するための届出を出します。

届出のための書式は厚生労働省の「令和6年度介護報酬改定について」のページにある「体制届出に関する通知」という項目内の「・(別紙一式)介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について【令和6年6月】」というExcelです。

Excelを立ち上げ、下のタブから「別紙11」を選択すると「口腔連携強化加算に関する届出書」が表示されます。

届出書に記載しなければならない項目は次の通りです。

  • 事業所名
  • 異動区分
  • 施設種別
  • 歯科医療機関との連携の状況

届出書を作成したら、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は市町村、それ以外の介護サービスは都道府県に提出します。

書式や記載内容に不備がないよう、確認してから提出をしましょう。

また手順に不明な点があれば、事業所のある市町村に確認するようにしてください。

参考:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1344」

参考:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)(抄)」

参考:日本歯科医師会「社会保険歯科診療報酬点数早見表⑴」

介護事業所と医療機関のスムーズな連携をサポートします

株式会社プレゼンス・メディカルでは介護事業所と医療機関がスムーズに連携できるよう、AIを用いた業務効率化をご提案しています。

口腔連携強化加算を得るためには介護職員や看護職員と利用者さまとの間でまずは信頼関係を構築する必要があるため、ご利用者さまに接する時間を確保しなければなりません。

そのためにはデータの整理や情報共有などの人間でなくてもできる作業はAIにしてもらうことで効率化し、できるだけ職員にはご利用者さまとのコミュニケーションに時間を割いてもらうのです。

口腔連携強化加算を取得するのは、ご利用者さまへのサービス向上だけではなく介護事業所として競合他社との差別化にもつながります。

職員の負荷軽減をしながら口腔連携強化加算の取得を目指したい方は、次のページもごらんください。

FUNCTIONS&PRODUCT | 喀痰吸引等研修の講習・資格・介護・福祉の研修実績|株式会社プレゼンス・メディカル

 

まとめ

2024年の介護報酬改定により新設された口腔連携強化加算は、介護職員や看護職員が利用者の口腔内の状態を観察し、歯科医療機関やケアマネジャーへ情報提供することで算定できる加算です。対象サービスは訪問系や短期入所などで、1回50単位を月1回まで取得可能です。加算取得には、決められた評価項目による観察と、歯科医療機関との連携体制づくり、文書による取り決め、届出の提出が必要です。加算導入により、利用者の健康管理向上だけでなく、職員の専門性向上、事業所の評価アップにもつながります。株式会社プレゼンス・メディカルでは、連携構築や業務効率化のサポートも行っており、導入が不安な事業所にも安心です。


本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

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