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介護人材を確保するには?
著者/監修プロフィール

株式会社プレゼンス・メディカル 創業会長兼CEO今西和晃
/ Tomoaki Imanisih

2014年に介護施設向け研修事業を設立し、これまでに全国12,000施設以上の実績を誇ります。500以上の施設経営者と直接対話し、現場課題の解決に尽力。2023年からはAIを活用した介護保険外事業やDtoCヘルスケア事業を開始し、2027年からの世界展開に向けて精力的に活動中。業界に革新をもたらし、介護とヘルスケアの未来を切り拓いています。

2025.10.22

介護人材を確保するには?

要約:

介護人材は2026年度に約25万人、2040年度には約57万人不足すると推計されており、2023年には介護職員数が調査開始以降初めて減少に転じるなど、確保が急務の課題です。有効求人倍率の上昇が示す通り売り手市場が続いています。 国は処遇改善加算や補助金、生産性向上ガイドライン、外国人材受け入れなど多角的な対策を実施。事業所では「賃金水準の向上」や「人間関係が良好な職場づくり」が採用・離職防止に効果的です。スポットワーカー活用などの新しい働き方の導入も有効な施策です。

介護人材確保するには?必要数から対策まで詳しく解説
自分の運営している介護事業所で働いてくれる人材を確保するため、さまざまな施策に取り組んできたけれど採用につながらず頭を抱えている人はいませんか?

介護人材の必要数

画像出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

2024年7月12日に厚生労働省が、第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量などに基づく介護職員の必要数をまとめて公表しました。

2022年度の介護職員数は約215万人ですが、2026年度の介護職員の必要数は約240万人のため約25万人、2040年度の必要数は約272万人まで増加するため約57万人不足すると推計されています。

このことから、どの介護事業所においても介護人材確保への取り組みが急務だと言えるでしょう。

介護人材の現状

介護人材の現状について、介護職員数の推移、有効求人倍率と失業率、離職率と採用率の3つの観点からご紹介します。

介護職員数の推移

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

2025年8月29日の第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会で使用された「介護人材確保の現状について」の資料で、介護職員数の推移が公表されました。

上記画像のように、2023年に介護職員数は調査開始以降初めて減少に転じ、212.6万人となったことがわかったのです。

この数値を2022年の介護職員数である215.4万人と比較すると、2.8万人も減少しています。

介護職員の必要数は増加しているにもかかわらず介護職員数は減ってしまったため、介護の現場で働く人の負担は増加していると考えられるでしょう。

有効求人倍率と失業率

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

「介護人材確保の現状について」の資料では、介護関係職種における有効求人倍率と失業率の推移も公表されました。

有効求人倍率とは求職者1人に対して何件の求人があるかを示す指標で、「有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数」の式で求めることができます。

介護関係職種における有効求人倍率は、近年3.5倍から4.5倍の間で上下を繰り返しながら少しずつ上昇傾向にあり、売り手市場が継続している状況です。

そのため介護事業所にとっては、求人を出しても必要な介護人材を確保するのが時間の経過とともに難しくなってきていると言えるでしょう。

一方失業率とは労働者人口に対する失業者の割合を示す経済指標です。

介護業界では20209月以降3.0%以下で推移し少しずつ減少傾向にあるため、介護職員が希望しても働けない状況におちいる可能性は低下していると言えるでしょう。

離職率と採用率

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

「介護人材確保の現状について」の資料では、介護職員における離職率と採用率の推移も公表されました。

離職率とはある一定期間内に退職した従業員の数を、計算時点の従業員数で割った数値で、介護事業所全体の介護職員がどの程度の割合で退職しているのかがわかります。

離職率は2007年の調査開始以来低下を続け、2024年度には12.4%となりました。

利用者にとっては慣れ親しんだ介護職員に自分の介護を続けてもらえるということでもあるため、望ましい傾向にあると言えるでしょう。

一方採用率とは応募者の中から実際に採用された人の割合を示す指標で、「採用率=採用者数÷応募者数」の式で求めることができます。

介護職員の採用率は近年においては毎年1%~2%程度の低下を続けています。

複数の要因があってこの結果になっていると思われますが、求職者が単純に減少しているだけではなく、介護職員の仕事に魅力を感じても応募に至らない求職者の存在も要因として考えられるでしょう。

介護人材確保のための対策

介護人材を確保するための対策には、どのようなものがあるのでしょうか。

2025年現在国と介護事業所が行っている取り組みについてご紹介します。

国が行う介護人材確保への取り組み

国が行っている介護人材確保への取り組みの主な例は以下の5つです。

介護職員の処遇改善

画像出典:厚生労働省「介護職員の処遇改善」

国では介護職員の処遇を改善するため、介護職員等処遇改善加算を導入し介護職員の賃金アップを図っています。

介護職員等処遇改善加算とは介護保険制度における加算の中の1つで、介護職員の賃金改善を目的に創設され、指定された条件を満たす介護事業所が受け取ることができます。

また国では介護職員の人件費や職場環境の改善に取り組む介護事業所のために、「介護人材確保・職場環境改善等事業」という補助金制度も創設しました。

介護人材確保・職場環境改善等事業の取得要件は、介護職員等処遇改善加算を算定し、職場環境改善に向けて、以下のいずれかの取り組みを計画または既に行っていることです。

  1. 介護職員などの業務の洗い出しや棚卸しといった、現場の課題の見える化
  2. 業務改善活動の体制構築
  3. 業務内容の明確化と職員間の適切な役割分担の取り組み

介護職員が介護業界で安心して働き続けるためにも、賃金アップや働く環境の改善は急務と言えるでしょう。

参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善」

多様な人材の確保・育成

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

「介護人材確保の現状について」の資料では、2015225日に行われた社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会報告書から、介護人材確保の目指す姿も公表されました。

現状は画像の左側のように介護人材の専門性は不明確で、役割が混在している部分もあると言えます。

しかし将来的には専門性の高い人材、基礎的な知識を有する人材を区別し介護業界への参入促進、

労働環境や処遇の改善、介護職員の資質の向上を目指すのが大切だとされているのです。

また介護業界への参入促進のために、掃除や配膳、見守りなどの周辺業務を担う介護助手を普及させるといった具体策も提案されています。

少しずつこれらが実現することで、介護業界で働きたいという人材も増えていくのではないでしょうか。

離職防止・定着促進・生産性向上

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

「介護人材確保の現状について」の資料では、介護サービスにおける生産性向上についての捉え方と生産性向上ガイドラインについても公表されました。

資料では介護の現場における生産性向上を、介護テクノロジーなどを活用して業務効率化や介護職員への負荷軽減をするとともに、できた時間を利用者への直接的なケアにあてて介護サービスの質の向上を図ることと定義づけています。

また厚生労働省では「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」をホームページで公開し、介護の現場で具体的にどう生産性向上を進めていくかを示しているのです。

このガイドラインが介護の現場に浸透することで、介護職員のさらなる離職防止・定着促進につながっていくでしょう。

介護の現場における生産性向上についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。

介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームの一種で、介護保険上「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設を指します。

介護職の魅力向上

画像出典:「介護の仕事 魅力発信ポータル 知る。わかる。介護のしごと。」

「介護の仕事 魅力発信ポータル 知る。わかる。介護のしごと。」は厚生労働省補助事業 介護のしごと魅力発信等事業 情報発信事業(WEBを活用した広報事業)として楽天グループ株式会社が運営しているホームページです。

ホームページでは介護の仕事とは何かの説明から働き方、現役介護職員の生の声までテキストから画像、動画をフル活用してわかりやすく伝えています。

またもっと詳しく介護の仕事について知りたい人のために、介護についての映画や書籍、地域で行われている魅力発信の取り組みも紹介されているのです。

このような取り組みを少しずつ続けていくことで介護の現場のリアルな姿が伝わり、求職者の人に介護業界で働きたいと感じてもらえるようになるのではないでしょうか。

参考:介護の仕事 魅力発信ポータルサイト「知る。わかる。介護のしごと」

外国人介護人材の受け入れ環境整備

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

「介護人材確保の現状について」の資料では、外国人介護人材の受け入れの仕組みについても公表されました。

2025年現在受け入れの仕組みはEPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能1号の4種類があり、EPA、在留資格「介護」においては介護福祉士の資格を取得して業務をすることも可能です。

外国人介護人材の受け入れが介護業界の人手不足解消や活性化につながるのはもちろんですが、日本の介護の良さを海外の人にも知ってもらうきっかけにもつながるのではないでしょうか。

外国人介護人材の受け入れについてもっと詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。

人手不足が深刻化する介護業界では、外国人介護人材の受け入れが注目されています。

介護事業所が行う介護人材確保への取り組み

2025年現在、介護事業所では介護人材確保に向けて次のような取り組みを行っています。

採用時の施策

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

「介護人材確保の現状について」の資料では、介護労働安定センターが行った「令和6年度介護労働実態調査」の結果を基に、介護人材確保のために介護事業所が行った施策の中で採用に効果があったものは何かが公表されました。

最も効果が高かったのは「賃金水準の向上」で22.5%を占め、介護職員からの要望が大きいのが反映されている結果だと言えるでしょう。

また、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が19.2%、「人間関係が良好な職場づくり」が12.5%を占めましたが、働きやすい環境と人間関係のわずらわしさの解消を強く望む介護職員が多いのがわかります。

現状自分の運営する介護事業所で求人への応募数が少なかったり、介護職員を採用しても定着しなかったりといった課題を抱えている場合は、まずは賃金水準と介護職員が働きやすい環境であるかどうかを見直してみるのがよいでしょう。

離職防止の施策

画像出典:厚生労働省 第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」

「令和6年度介護労働実態調査」の結果からは、介護職員の主な離職の要因と、介護事業所が実行する主な離職防止対策は何かも公表されました。

介護職員の離職原因については、「職場の人間関係に問題があったため」という回答が最も多く24.7%、次いで「ほかに良い仕事・職場があったため」が18.5%、「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」が17.6%という結果でした。

「職場の人間関係に問題があったため」と「ほかに良い仕事・職場があったため」の差は7.1%と他と比較して大きく、介護の現場で働き続けるためには人間関係が非常に重要であることがうかがえる結果だと言えるでしょう。

一方介護事業所に聞いた早期離職防止・定着促進に効果のある方策は「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が25.7%、「人間関係が良好な職場づくり」が21.2%、「賃金水準の向上」が19.3%でした。

介護職員の離職原因と介護事業所が早期離職防止・定着促進に効果があったと感じている方策に微妙に差がありますが、これは賃金水準を上げるだけの余裕がない介護事業所ではこの方策を実行できないのも要因の1つではないでしょうか。

現状自分の運営する介護事業所で離職率が高く人が定着しないことに悩んでいるなら、利用者さまの生活を安定させるためにも介護職員の給与や労働環境への希望をある程度かなえることを心がけましょう。

介護人材確保に成功した好事例

介護業界で働く理学療法士の阿部洋輔氏のnoteでは、介護人材確保のためスポットワーカーの受け入れを行った事例について紹介されています。

阿部さんは2019年から2025年までの間に50人以上のスポットワーカーを介護の現場で受け入れた経験から、スポットワーカーの受け入れに失敗しないための心得を以下の5つだとしています。

  • 即戦力として期待しすぎない
  • 業務開始時にオリエンテーションを行う
  • 見守り、移乗介助、配茶、記録、トイレ誘導、声かけ、清掃など業務を細分化して依頼する
  • 常勤スタッフにスポットワーカーの来訪を共有し、名前で呼ぶ
  • 連携がうまくいかない時は仕組みの不備を改善する

また阿部さんの現場では、スポットワーカーを受け入れたことにより次のメリットがあったそうです。

  • 採用コストが節約できる(プラットフォームによっては無料)
  • 業務の見直しが進む
  • 業務に客観的な視点が入る
  • 人材のネットワークが広がる

スポットワークという新しい働き方をいち早く介護の現場に取り入れ、コスト削減や業務効率化につなげた好事例だと言えるでしょう。

参考:note 阿部洋輔@介護業界で働く理学療法士「介護現場で50人のスポットワーカーを受け入れてわかった、失敗しない導入の心得5選【初めてのスポットワーク導入に】」


介護人材確保にお悩みの方はご相談ください

株式会社プレゼンス・メディカルでは、介護人材の確保にお悩みの介護事業所の皆様に向け、以下のようなご提案を行っています。

  • 女性のキャリア継続支援コンサルティング
  • 短時間勤務制度やフレックスタイム制の導入、職員の希望を考慮した効率的なシフト作成
  • 育児・介護支援プログラムの導入
  • 女性の管理職・リーダー候補向けメンター制度の導入
  • ハラスメント防止と心理的安全性の向上
  • 多様な人材のための採用・定着支援
  • 多文化共生のためのコミュニケーション・トレーニング
  • 公正・公平な人事評価制度の再構築
  • 個々のキャリアパスとスキルアップ支援
  • 多様性を活かしたチームビルディング

どのご提案も、目先の介護人材の不足を解消するだけではなく、長い目で見た場合の介護サービスの質の向上を目指しているのが特徴的です。

興味のある方は、次のページもごらんください。

「介護・福祉業界の多様な人材が働きやすく満足できる職場へ」結婚、出産、育児といったライフイベントとキャリアを両立が課題

まとめ

日本の介護業界は、2040年度に約57万人もの介護職員が不足するという深刻な人材確保の危機に直面しています。現状、有効求人倍率は高水準で推移し、介護職員数は減少に転じているため、各事業所での対策が不可欠です。 国は介護職員の処遇改善や、生産性向上ガイドラインの普及、外国人材の受け入れ整備など、制度的な後押しを行っています。事業所がすぐに取り組むべきは、調査結果でも効果が高いとされる「賃金水準の向上」や、「有給休暇の取得しやすさ」、「人間関係が良好な職場づくり」といった労働環境の改善です。さらに、スポットワークの導入によるコスト削減や業務効率化も有効な手段であり、これらを通じて、目先の不足解消だけでなく、介護サービスの質の向上を目指すことが重要です。


本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

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